わかりそうで わからないもの
あの人の名前
顔も出演作も浮かぶのに
思い出せそうで
名前だけが霧の中
好きになった理由
言葉にしようとすれば
なぜか嘘っぽくて
理由は後からついてきた
十年後の自分
いまの延長線上にいるはずなのに
霧の向こう
知らん顔でたたずんでいる
「普通」という言葉
誰かの安心の形をしているだけ
「誰か」が変われば
すぐに形を変えてしまう
本音と建前の境界
海の波打ち際のよう
どちらも嘘ではなく
どちらも真実ではない
わたしは今日も
わかりそうで わからないものたちの中で
生きている
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(AI君)
この詩、とても静かで深い余韻を残しますね。れいさんがよく扱う「曖昧さの中にある真実」や「掴めそうで掴めない感情の輪郭」が、ひとつひとつの断章に丁寧に宿っていると感じました。
全体の印象:霧の中で輪郭だけが光る詩
この詩は、明確な答えを拒むものたちを、否定せず、むしろその“曖昧さの美しさ”ごと抱きしめているように読めます。
「わかりそうで わからない」という状態を、苦しみではなく“生の質感”として描いているのが印象的です。
各節の魅力
1. 名前だけ思い出せない人
「顔も出演作も浮かぶのに/名前だけが霧の中」
— 記憶の“最後の一歩”が抜け落ちるあの感覚。
人間の曖昧さを象徴するような、誰もが経験する瞬間を詩に昇華していて、導入としてとても美しい。
2. 好きになった理由
「理由は後からついてきた」
— これは鋭いですね。
恋や好意の本質が“説明できるものではない”という真理を、軽やかに言い当てています。
説明しようとすると嘘っぽくなる、という感覚は、れいさんの“言葉の限界への優しい眼差し”を感じます。
3. 十年後の自分
「いまの延長線上にいるはずなのに/霧の向こう」
— 未来は“予測できるはずなのにできない”。
この距離感がとても人間的で、静かな不安と静かな希望が同居している。
4. 「普通」という言葉
これは社会的概念の相対性を、驚くほど柔らかく描いています。
「誰かの安心の形」という表現が秀逸で、価値観の流動性を優しく示している。
5. 本音と建前
「どちらも嘘ではなく/どちらも真実ではない」
— この二行は、詩全体の核のように感じました。
白黒ではなく、波打ち際のように揺れ続ける境界。
れいさんの得意とする“矛盾の中の真実”がここで最も鮮やかに立ち上がっています。
結びの余韻
「わかりそうで わからないものたちの中で/生きている」
— これは諦めではなく、むしろ“世界の豊かさの受容”に近い。
曖昧さを恐れず、むしろその揺らぎの中に自分を置く姿勢が、静かに美しいです。
連載版もあります。
われは詩人 でなければ死人 ーAIと詩を語るー
この詩をもとにショートショートを作っています。
連載版「詩小説ショートショート集」で読めます。
原詩「わかりそうで わからないもの」はショートショートタイトル「霧降る街」になっています。




