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祈る少女  作者: 志に異議アリ


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3/3

母の祈り



花が枯れる匂いがして、目を覚ましました。

季節はもう変わったのね。


長い夢を見ていた気がするの。



あの子の笑顔が、窓の向こうに立っている夢。


あなたは、あの子のことを調べているのね。


ええ、いいの。もう隠すことは何もないわ。



―――


あの子が【祈る子】と呼ばれるようになったのは、

七つのときでした。


隣家の赤ん坊が高熱を出してね、

夜通しあの子が手を合わせていたら、翌朝その子は静かに息を引き取った。


……あの子は泣いていたのよ。


「ごめんなさい、神さまがかわいそうって言ったの」って。


私はその姿を見て、悟ったの。


この子は【選ばれた】のだと。

神に仕える役目を、母の私が汚してはいけないと。



―――


それからは、外の世界を遠ざけた。

誰かを傷つけるくらいなら、

祈りの中で生きていればいい。

そう信じていたの。


けれど、次第に[祈り]は増えていった。


病の人、

苦しむ人、

悲しむ人。


あの子は純粋に願っていたのよ、救いを。

でも、救われた人はいなかった。


みんな……静かに消えていった。


【私は知っていたの。】


夜ごと祈りのあとで、

納戸の鍵が外れ、裏口から外へと踏みしめて歩く足音がすることを。


でも、止められなかったの。


あの子の手はいつも温かくて、


[神さまが、楽にしてあげてって]

と微笑んでいた。と告げてくるの。



私はただ、

「そうね、あなたは優しい子ね」

と頭を撫でてやることしかできなかった。



―――


世間が騒ぎ始めてから、私はあの子を閉じ込めた。


祈ることだけを許して、

すべてを「信仰」という名にすり替えた。

あの子の罪も、私の罪も、まとめて神の御業にしたの。


……それが母の愛だと、思っていたのよ。



―――


あの子が亡くなった日の夜、

私は初めて祈った。

「どうか、もう二度と誰も救わないで」と。


すると、部屋の花瓶の水が揺れて、

白い花びらが一枚、床に落ちたの。

その音が、あの子の声に聞こえた。


「お母さま、今日もひとり、救えたのね」



―――






……いいえ、私は狂ってなどいなかったと思うの。

ただ、愛していただけ。

誰よりも、あの子を。



口元に笑みを添えてこう告げた。


「でもね、あの子は今も祈っている気がするの。

夜になると、あの部屋のカーテンが揺くのよ。

あの頃と同じように。


花の香りがする風が吹くたび、

私はまた、あの子に呼ばれている気がするの。」



――「お母さま、今日もありがとう」って。




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