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祈りの子
朝の鐘が鳴る。
少女は白い花を抱えて、教会の裏庭へ向かった。
露を含んだ空気が指先を濡らし、光が髪を透かす。
「神さま、今日もお見守りください」
祈り終えると、胸の奥がふわりと軽くなる。
村の人たちは皆、少女を見ると笑顔を向けた。
「お嬢さんが祈ると、病が治るって噂だよ」
「ありがたいねえ。神さまが本当にいるみたいだ」
少女は照れくさそうに笑って、
花束を教会の祭壇に置く。
動くたびに白いワンピースがふわりと揺れ、
それを見守っていた神父はいつ見ても天使がここに舞い降りてきてくれた。と思うのだった。
花を摘むたびに、どこかで誰かの声が聞こえる気がする。
――ありがとう。
――もう痛くないよ。
耳を澄ませると、風の中に小さな祈りが混じっている。
少女はその声が嬉しくて、花を束ねる指先がふるえた。
「だって、わたしが祈ると、みんな笑ってくれるんだもの」
花を束ねて、祈る。
それだけで、心が透き通るように温かくなる。
誰かの苦しみを、ほんの少し軽くできるような気がする。
「今日も、幸せでありますように」
そうつぶやいて、彼女は教壇の上に束ねた花をまた胸に抱いた。
彼女の世界は、祈りの音で満ちていた。




