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游稔(ゆうじん)、いいか?」

「どうぞ」


 コツコツ、と扉を叩いて音を鳴らしながら声を上げると、中からは穏やかな声が返ってきた。


 その声の余韻が消えるのを待つかのように一拍間を開けてから扉を開けば、中からは柔らかな光がこぼれ落ちてくる。


 (れん)は扉を大きく開くと、先に中へ入るようにと(リー)(ファ)に示した。その意味を正確に汲み取った(リー)(ファ)は、蓮と視線を交わしてから大人しく部屋の中へ踏み込んでいく。


「随分早く来たなと思ったら……()()()()が一緒だったんだね?」


 部屋の突き当たりには、大きく窓が取られていた。その傍らで煙管(キセル)を吹かしていた男は、琥珀色の髪を揺らしながら振り返ると、焦げ茶の色硝子(ガラス)がはめ込まれた眼鏡越しに(リー)(ファ)と蓮の姿を眺める。


 柔和な顔立ちに浮かべられた穏やかな笑み。都の豪商の若旦那と言われても通用しそうな落ち着いた(たたず)まいに、濃緑色の上品な装束が映えていた。スラリとした立ち姿には気品が感じられる。


 だが眼鏡の向こうに隠された瞳には、底冷えするような鋭い光が湛えられていた。


「どこで拾ったの?」


 彼こそが、この霜天(そうてん)商会の会長にして姻寧(いんねい)の王。


 ()游稔。


 蓮の主であり、古馴染であり、背中を預け合う相手でもある。


「昨日の帰り。場所は俺ん()の近所。名前は(リー)(ファ)。性別は男。恐らく職業・暗殺者だ」


 (リー)(ファ)を部屋の中頃まで進ませ、自分は閉じた扉を守るように立った蓮は、自分が知っている情報を端的に伝えた。その短い時間の間に、衣に隠された(リー)(ファ)の背中に緊張が募っていくのが分かる。


「『忘れ茉莉花(まつりか)』の常習者だと判断したから拾って、今朝目覚めたから連れてきた。武器は全部取り上げてある。服は俺の貸し(モン)だ」

「ふぅん?」


『以上』と蓮が両手をヒラリと上げると、游稔は気のない声を上げた。だがそれがただのフリであることを見抜いているのか、(リー)(ファ)は緊張を緩めることなく游稔を見つめている。


 ──殺気は見えない。游稔が今後の生殺与奪の権を握ってるって理解してて、緊張してるって感じだな。


 とはいえ、蓮が読んだ通りの実力を(リー)(ファ)が備えていれば、この状況から游稔を暗殺することも可能だろう。


 ──ほんっと、なんか……チグハグなんだよな。


 扉に背中を預けるように立ちながら、外衣の袖に隠した手の中に手甲の隠しから抜いた流葉飛刀を忍び込ませる。そうやって(リー)(ファ)による游稔暗殺に備えながらも、蓮は刻々と大きくなっていく違和感を転がしていた。


 ──あいつはきっと、腕と実績のある暗殺者だ。逃げようと思えばいくらでも逃げれたはず。真正面から()り合おうと思えば、それもできたはずだ。


 その(すべ)()()()という可能性は、(ねぐら)での一戦から考えて恐らくない。双狼(そうろう)黒蓮(こくれん)紋を見て姻寧という地名を導き出し、『忘れ茉莉花』の常習者であることを指摘されてあそこまで動揺していたのだ。ここがどこで、相対しているのが誰であるのか、ここへ自分が連れてこられれば最悪どうなるか、それが理解できていないとも思えない。


 だというのに(リー)(ファ)からは、この状況を打破しようという考えが見えない。十分に打破できるだけの実力が、(リー)(ファ)には備わっているというのに。


 ──気力がない? 意思がない? どっちもしっくり来ねぇな……


 等身大の生き人形、と言うと、少し印象が食い違うような。


 その違和感が、蓮には何だか気持ち悪い。


「君、所属は?」


 そんなことを考える蓮の視線の先で、游稔は前置きなく『尋問』を開始した。


 フゥ、と游稔が吐き出した煙が、朝日の中にユラユラと微かな影を描き出す。ただの煙草では(かも)しえない爽やかな香気が、影とともに室内に広がった。


「どこからこの姻寧にやってきたの?」

「……珊譚(シャンタン)


 (リー)(ファ)は緊張が(にじ)む声音で短く答えた。(かす)れを帯びた高くも低くもない声は、静寂の中に溶け込むように消えていく。


 その声の行方を追うかのように耳を澄ませていた游稔は、それ以上続かない言葉にスッと瞳をすがめた。


珊譚(さんたん)で有名な黒幇(ヘイパン)と言えば、(ハン)(ラオ)(ダン)とか、(ヤン)(シャイ)(フイ)とか。あぁ、あと紅華(ホンファ)娘娘(ニャンニャン)も珊譚だったっけ?」


『で、どこ?』と游稔は視線の圧を強める。


「蓮が『職業・暗殺者』って断言するような人間が、堅気の人間だとは思えない。僕の目から見ても、君は黒社会に属する人間であるように見える」


 この部屋は今、扉側を蓮が、窓側を游稔が封鎖した密室だ。(リー)(ファ)は確かに腕のある暗殺者なのだろうが、さすがに蓮と游稔の二人をかわして脱走することは不可能に近い。そもそもその意思があれば、(リー)(ファ)だってここに連れてこられるまでに多少の抵抗は見せただろう。


「答える気がないなら、やり方を変えるけども」


 游稔の言葉に、頭から被せられた外衣を握る(リー)(ファ)の手が小さく震える。


 だが次の瞬間、(リー)(ファ)は頭から外衣を滑り落とすと、游稔を真正面から見据えるように顔を上げた。


「覚えていない、と言ったら……信じるか?」


 微かに見える(リー)(ファ)の横顔には緊張がみなぎっていた。対する游稔は表情を変えることなく煙管の吸口に唇を寄せる。


「名前は(リー)(ファ)。人を殺す術を持っている。僕は」


 その沈黙を己に与えられた猶予と取ったのだろう。まろぶように言葉を紡ぎ出した(リー)(ファ)は、一度空唾を飲み込むように言葉を切ると、躊躇(ためら)うように続きを口にした。


「僕は、あの雨の中、()()から逃げていた」

「何から逃げていたの?」

「分からない」


 淡々と問い続ける游稔に、(リー)(ファ)は小さく首を振る。結わずに下ろされた長い黒髪が、その動きに合わせてサラサラと衣の上を滑った。


「言い逃れをするつもりはない。……本当に、それ以上のことを、覚えていないんだ」


 ──まぁ、普通に聞いてたら、その場しのぎの言い逃れにしか聞こえねぇよな。


 ましてや(リー)(ファ)は腕のある暗殺者であると把握できているのだ。そんな人間が口にする『何も覚えていない』など、『口を割るつもりはない』と同義と捉えられてもおかしくはない。


 ……(リー)(ファ)がこの不快な甘ったるい香りを纏っていなければ、という話だが。


「はぁーあ、まるでどっかの誰かさんに再会した気分だ」


 同じことを游稔も思ったのだろう。


 張り詰めていた緊張が不意にバッサリと断ち切られる。


「え?」

「ほぼほぼ記憶を全損させてた俺よりはマシだろ」

「は?」


 突然砕けた雰囲気を醸し始めた游稔の発言に気が抜けた声を上げた(リー)(ファ)は、次いで蓮の発言にも似たような声を上げた。游稔と蓮を交互に見上げる(リー)(ファ)は、戸惑いを顔中に広げている。


「これだけ強く『忘れ茉莉花』の匂いがするんだ。君、相当な深度までやられちゃってるよ」


 軽く肩を(すく)めた游稔は、腰を窓枠に預けるように態勢を変えながら(リー)(ファ)に言葉を放る。その言葉を受けた(リー)(ファ)はギクリと体を竦ませた。


「『忘れ茉莉花』は、使用者の身体能力の(たが)を外し、一時的に爆発的な能力の飛躍と快楽を与える。その代償は記憶の欠損と、地獄のような禁断症状だ」


 忘れ茉莉花。発祥地である北部での読み方を取るならば『(ワン)(モー)(リー)(ファ)』。


 それは北部の黒社会が蔓延させているという、麻薬の中でも一際危険で、一際厄介な代物だ。


 見かけは香に似ていて、実際に火で(あぶ)って経鼻で摂取する。ほぼひと吸いで効果は生まれ、大半の者が(とりこ)になる。


 北部の黒社会の息がかかった妓楼には、忘れ茉莉花を吸うためだけの密室が用意されているという話だ。忘れ茉莉花の成分を充満させた部屋に人を押し込めれば簡単に中毒者にできるのだ。たやすく中毒者を増やせるお手軽な麻薬と言えなくもない。


 人々が自主的に忘れ茉莉花に手を出すきっかけは、大抵が疲労回復や催淫作用を欲してのことだという。


 確かに初期の軽微な摂取であれば、疲れが抜けない体が嘘のように軽くなり、不眠不休で動くようになる。痛覚が麻痺する代わりに快楽を強く拾うようにもなるから、刺激的な夜を過ごすことにも役立つだろう。妓楼に『香窟(シャンクー)』と呼ばれる忘れ茉莉花吸引用の部屋が多く作られたのは、その辺りの影響も強い。


 だがそれもほんのひと時だけだ。


 忘れ茉莉花の効果が切れた体は、反動として激しい痛みを訴えだす。関節という関節から体が引きちぎれるのではないかという痛みを拾う禁断症状に、大抵の人間は耐えきれない。痛みを忘れるために、またその痛みを感じることを恐れて、人は再び忘れ茉莉花の香りを浴びにいく。


 そうなってしまえば、あとは転がり落ちていくだけだ。


『忘れ茉莉花』という名前は、『時間を忘れさせる』という意味と同時に、『快楽と引き換えにするかのように記憶を失っていく』という副作用からも来ている名前だ。


 その名が示す通り、茉莉花のような(かぐわ)しい香りを纏う煙は、使用者に代償を支払わせるがごとく記憶をこそげ落としていく。長期に渡って使用すれば、己が何者であったのかも忘れ、煙に溺れて屍のように生きていくしかない。


 そんな重度の依存者の体臭は、まるで内部で忘れ茉莉花を焚き続けているかのように甘ったるくなる。


「北部では、その強烈な依存性と、長期使用による記憶の欠落を目当てに、奴隷調教の一環として忘れ茉莉花が使われることもあるけども」


『君もそうやって麻薬(ヤク)漬けにされたクチ?』と、游稔はまるで世間話でもしているかのように、実に気軽に口にした。


 その言葉に、(リー)(ファ)は凍り付いた瞳を激しく震わせる。


「どうして、『(ワン)(モー)(リー)(ファ)嫌い』で有名な(イン)(ニン)の王が、そんなこと……」

「そりゃあ、僕達も被害者だからね」


 実にアッサリと答えた游稔は、煙管の先で蓮を示す。


「そこにいる蓮も、そして僕も」


 反射的に煙管の動きを追っていた(リー)(ファ)は、続けられた言葉にハッと游稔を振り返った。そんな(リー)(ファ)に対しても、游稔は飄々とした態度を崩さない。


「不本意に忘れ茉莉花漬けにされた過去がある。だから僕は忘れ茉莉花が嫌いなんだ」

「そん、な」

「それとも君は、自ら積極的に忘れ茉莉花を求めた人間なのかな? そうだと言うならば、今すぐここで殺すしかないけども」


 そう(のたま)った瞬間、游稔の瞳に冷たい光が()ぎる。だが(リー)(ファ)はグッと言葉に詰まったまま、是とも否とも言わなかった。


 ──まぁ、本当に忘れてるってなら、自分がどうしてヤク漬けになったかっていう経緯も覚えてねぇもんな。


 その辺りを踏まえて考えれば、(リー)(ファ)の態度は誠実とも言える。ここで『忘れ茉莉花に手を出したのは不本意である』と表明できなければ殺されると分かっているのに、口先だけでもそれを言わず、また反撃する構えも見せていないのだから。


 ──試しはこんなもんでいいんじゃないか?


 素性が分かることはなかったが、(リー)(ファ)が嘘を言っていないことはほぼ確実だろう。素直な性格をしていることも、何となく今のやり取りで垣間見えた態度で分かった。


 忘れ茉莉花と使用者を取り締まっている霜天(そうてん)商会だが、『使用者は発見次第全員殺す』というような荒っぽい真似はしていない。


 使用者に危険性が見えればその限りではないが、周囲に危害を加える様子が見えず、本人に更生の意思があり、忘れ茉莉花を強制摂取させられた立場であったと分かる人間であれば、基本的には保護してそれなりの処置を施してやる。そうやって救われた人間が、霜天商会には多く籍を置いていた。


「……殺されるのは、困る」


『とりあえず保護でいいんじゃねぇか?』と蓮が目線で訴えようとした瞬間。


 キュッと、外衣を握りしめる(リー)(ファ)の手に、力がこもった。


「この地獄に(すが)ってでも、生きていたい理由が、僕にはある」


 その言葉に蓮は思わず息を呑む。


 同時に耳の奥に(よみがえ)ったのは、サァサァという雨の音とともに蓮の耳に届いた声だった。


『あい、たい』


 昨晩、(リー)(ファ)がこぼした、あの(ささや)き。


 きっと(リー)(ファ)が生きていたいと願う理由は、()()だ。


「……ふぅん?」


 (リー)(ファ)の強い眼差しと、芯を得た言葉に、游稔も何か感じるものがあったのだろう。品定めをするような游稔の視線と、(リー)(ファ)の力のこもった視線が真正面からかち合う。


 その視線を逸らさないまま煙管を口元に運んだ游稔は、どこか面白くなさそうに呟いた。


「ほんっと、誰かさんにそっくりだねぇ?」


 ──るっせ。


 その『誰かさん』が誰であるのかを理解している蓮は、思わず内心で毒づいた。ついでに片袖を振って『もういいだろ』と無言のまま訴える。


 蓮は(リー)(ファ)を游稔に引き合わせるためにここに来たわけだが、游稔が蓮を呼びつけようとしていた理由は別にあるはずだ。『そっちの要件は何なんだよ』と訴える蓮に対し、游稔はわずかに目元に笑みを漂わせる。


「とりあえず、君は着替えるといい。その格好のままっていうのもあれだしね」


 一度(リー)(ファ)に視線を合わせた游稔は、パンパンッと鋭く手を打ち鳴らした。同時に蓮が扉の前から身を引けば、音もなく開いた扉の向こうから新たな人物が姿を現す。


 艶やかな黒髪を素っ気なく纏め上げ、男物の黒衣に身を包んだ女だった。飾り気が一切ないにも関わらず……いや、逆に飾り気が一切ないからこそ、その蠱惑的な美貌と肉感的な体つきが際立つような、儚さと夜の艶が魅惑的に同居した美女だ。


 そんな目を(みは)るような美女の登場に、蓮は別の意味で目を(しばたた)かせる。


 ──そういえば芙蓉(ふよう)も游稔に呼ばれてたって話だったな。


「お呼びでしょうか、会長(ホアンシャン)


 蓮とともに組織内で『幇主(ダーレン)』と呼ばれている傾城……游稔が商会内で唯一『毒花』ではなく『秘剣』と呼ぶ女性は、真っ直ぐに游稔を見つめると唇を開いた。


 紅を乗せていないはずなのに深く(あか)い唇からこぼれ落ちる声は、女性にしては低めで深い艶を帯びている。落ち着きのある声は、知性を(うかが)わせると同時に、酷く欲を掻き立てるような不思議な響きを帯びていた。


「この子を着替えさせてあげて。服装選びは君に任せる」


 突然気配もなく現れた芙蓉に、(リー)(ファ)は驚くとともに警戒心も抱いているようだった。


 そんな(リー)(ファ)に芙蓉を紹介することもなく、また芙蓉に(リー)(ファ)の詳細を告げることもせず、游稔は芙蓉に指示を出す。対する芙蓉はその命に表情ひとつ変えることなく頭を下げた。


(うけたまわ)りました」


 それからようやく(リー)(ファ)へ視線を向けた芙蓉は、再び扉を開くと『こちらへ』と(リー)(ファ)(いざな)う。そんな芙蓉を警戒するように見上げた(リー)(ファ)は、チラリと窺うように蓮のことを見た。その視線の中には『一緒に来ないの?』という不安が見え隠れしている。


 ──この場で頼るなら俺って思ってんのか。


『俺も十分敵側じゃないか?』とそんな(リー)(ファ)の行動を意外に思いながらも、蓮はヒラリと片手を振ってやった。


「取って食われやしねぇよ。お前の身丈にあった衣を用意してくれるってだけだ。俺はここで游稔と野暮用があるから、一緒には行けない」


 そこまで言ってからふとあることに気付いた蓮は、芙蓉に視線を合わせると言葉を足した。


「芙蓉、(ワリ)ぃんだけど、こいつに風呂とメシも頼むわ」

「……承知」


 チラリと蓮を見やった芙蓉は無表情のまま言葉少なく答える。不機嫌であるわけではなく、これが芙蓉における『普通』だ。


「……また、会えるよね?」


 蓮と芙蓉のやり取りで、(リー)(ファ)の中には何か踏ん切りがついたのだろう。


 芙蓉に向かって身を翻した(リー)(ファ)だったが、その足が一度蓮の前で止まる。そんな(リー)(ファ)の様子に一瞬目を丸くした蓮だったが、すぐに笑みを浮かべて答えを投げた。


「お前の処遇がどういう風に決まろうと、説明のために必ず俺達とは顔を合わせることになると思うぜ」

「……うん」


 蓮の言葉が嘘ではないと分かったのだろう。(リー)(ファ)は今度こそ芙蓉の元へと進み、扉は静かに閉められた。


 蓮と游稔だけが残された部屋に、一瞬静寂が(とばり)を下ろす。カツコツという足音は、やはり芙蓉の分だけが響いていた。


「随分と(なつ)かれたもんじゃない」

「るっせ」


 その音が十分遠ざかったことを確認してから、蓮は游稔が立つ窓辺へ歩み寄る。相変わらず煙管を吹かしている游稔の顔には、蓮や芙蓉にしか見せない砕けた雰囲気が漂っていた。


「で? お前が俺を呼びつけた用件は?」

「呼びつけたわけじゃないんだけども」

「訂正。お前が俺を待ってた用件は?」


 窓枠に腰掛ける游稔の傍らに腕を組んで立つ。いつもの密談の体勢になった蓮を流し見た游稔は、不意に表情を改めた。


「ちょっと気になる情報が朝一で入ってさ」


 フゥ、と細く煙を吐き出した游稔は、蓮を見上げてようやく本題を切り出す。


「『新娘(シンニャン)』って符牒で呼ばれてる北の暗殺者なんだけども。蓮、君、何か知ってる?」


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