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第四話 牙の誓い、血の契約


夜の静寂を裂いて現れた敵の吸血鬼たち。

ふうりを囲むようにして、赤い瞳がぎらりと光る。


「稀血の少女……その力、渡してもらうぞ」


「絶対に……君には触れさせない」


そうたはふうりの前に立ち、鋭く睨みつける。

その瞳には、人間だった頃の柔らかさとは違う、吸血鬼としての覚悟が宿っていた。

攻撃は容赦なく始まった。

爪が闇を裂き、牙が閃く。

そうたはそのすべてを受け止め、ふうりを守る盾となって動いた。


「そうた……!」


ふうりの叫びが届くと同時に、敵の一撃がそうたの肩を裂く。


「っ、く……!」


鮮血が夜に舞った。


「やめて……!これ以上やめて……!」


ふうりは震える声で叫ぶが、敵は構わず迫る。


だが――


「手出しは……させないって言ったろ」


負傷した体で、そうたは最後の力を振り絞り、敵を跳ね除けた。

残った数体が、ようやく撤退していく。


ふうりが駆け寄ると、そうたはその場に膝をついた。

顔は青白く、傷口から血が止まらない。


「ねえ、どうしたら……!どうしたら治るの!?」


「血が……必要なんだ」


「僕の体を回復させるには、人間の血が――」


そうたの瞳がふうりを見た。

切なげな、でもどこか理性を抑え込むような視線。


「君の血を、少しだけ……もらってもいい?」


ふうりは一瞬、躊躇した。

だけど、胸の奥から湧き上がる想いが、言葉より早く行動へと変わる。


「いいよ……私の血、使って」


「……本当に、いいの?」

「僕は吸血鬼だ。吸ったら、君に“つながり”が残る」


「それでも、そうたを助けたい」


そうたはふうりの手首をそっと持ち、牙を立てる。

痛みよりも、温かな何かが体を巡るのを、ふうりは感じていた。


(……この感覚、なんだろう。痛くないのに、涙が出そう……)


やがてそうたが顔を上げる。

頬にはうっすらと赤みが差し、目は真っ直ぐふうりを見ていた。


「ありがとう……でも、もうひとつ。君にお願いがある」


ふうりが首をかしげると、そうたは静かに言った。


「 “血の契約”を結ぼう」


「君と僕が契約を結べば、他の吸血鬼は君に触れられなくなる。

 僕の“眷属”として認識されるから」


「けんぞく……」


「無理にとは言わない。でも――僕は、君を守りたい。

 誰にも渡したくないって、心から思ってる」


ふうりの心が、ドクン、と脈を打った。


(そうた……私のことを……)


「……契約、してほしい」


「君がいいなら、僕のすべてを賭けて守る。――命を懸けてでも」


その声に、迷いはなかった。

ふうりはそっと、頷いた。


「……わかった。私、そうたと契約する」


「ありがとう、ふうり」


月明かりの下。

ふたりの手がそっと重なり合う。

血の契約――

それは運命を変える、恋の契りでもあった。

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