第七話 【初デートやて!?】
次の日からの護衛はほんまに最悪やった。
うちはキュリオスのプロポーズから情けないけど逃げた。
せやけど依頼までほっぽりだすわけいかんから、ちゃんと朝にはキュリオスの前に顔出したんや。
まぁキュリオスは昨日の事は気にせんといつも通り護衛してくれたらええ言うてくれた。
せやけどうちはいつも通りとはいかんやろ!
プロポーズされとるし!人生初プロポーズやし!
せやのに気にせずなんか無理に決まってるやん!
しかも手空いたエストアがことあるごとに現れてうちに絡んできよる!
しかも絡み方が今までと全然違うて、
『華大丈夫か?』
『護衛辛いだろ?変わろうか?』
『あいつに何かされたら絶対俺が助けてやる』
とかなんとか色々優しくしてきよんねん!
なんやねん!今までと違いすぎるやろ!
そんな急に優しくされたらどないしたらええかわからんわ!
こないな感じで働いてるときはキュリオスに気疲れして、
休んでるときはエストアに気疲れする護衛の日々にうちはあっという間に消耗した。
「もう〜無理!この生活無理!」
うちは1日の終わりにまた冒険者酒場で飲んだくれとった。
酒でストレス流さなどうにもやってられへんからや。
「あらあら?最強の冒険者さんが弱音なんて吐いちゃって」
うちの愚痴を聞いてたシャーリーがいつも通り隣に座ってくれた。
うちはここぞとばかりに不満をぶちまけた。
「いやいやシャーリー!ほんましんどいからこの状況!
エストアは変に優しいし、
キュリオスはまだ全然うちを諦めとらんし!
板挟みやし、好意向けられんのも慣れとらんし、
ほんまどないしたらわからん状況がしんどいからな?!
うちどないしたらええんやろか??」
「そんなの簡単よ、
キュリオス様が好きなら結婚すれば良いし、
エストアが好きなら付き合ってしまえば良いし、
どちらも好きじゃないなら両方振れば良いだけじゃない?」
シャーリーはあっさりそない言うけど、事はそう簡単な事ちゃう!
「ん?ちょっと待ち!エストアがうちのことす、好きとかなんとかちゅうんは・・・」
シャーリーにはあの晩起きてたんはバレてないはず?せやのになんでうちにエストアと付き合えとか言うんや?と思って聞いてみたら、
「何言ってるの?華も聞いてたじゃない?あの晩、華が起きてるのわかってるわよ?」
「わかっとったんかい!!」
「ふふふ♪エルフの感知能力を舐めないでね?」
シャーリーには全部お見通しやった。
この女!全部わかったままあれこれ言うとったんかい!
「やらしいな!わかってたんやったらはよ言ういやぁ!」
「ふふふ♪ごめんね華?けど華も盗み聞きしたんだからお互い様よ♪
それよりどうするのよ??華はエストアやキュリオス様の事をどう思ってるのかしら?」
「えぇ、そない言われてもなぁ」
シャーリーに聞かれてもうちは全然わからんかった。
キュリオスはまだ出会ったばっかりやし、
エストアかて気持ち知ったんはついこの間やし。
「まだ全然わからんわ!
自分でもようわからんから聞いてんのに!」
「あ、そう。
ま、わからないならまだ答えを出さない事ね。
軽弾みで答えちゃったら後々困るわよ??」
「わ、わかっとるわい!」
結局この日シャーリーはええアドバイスしてくれんかった。
ちなみに後から来たノルムに聞いたら、
『強い方を旦那様にしたらどうかな!?』
ってバトル脳全開の答えが返ってきたから皆あてにならん感じやった。
うちはほんまにどないしたらええかわからんかった。
今まで散々婚活してきたけど、
相手から好かれた事なんてなかったし、
今まで生きてきて異性から好かれた事もない。
異世界に来てからは良いって言ってくれた見合い相手もおったけど、
うちにはそれがほんまなんかどうかわからんかった。
せやけどエストアやキュリオスはほんまやってわかる。
ただの直感やけどほんまにうちの事好いてくれてるって感じた。
せやけどうちは誰かと付き合うた事もない、
キスかてこの間エストアにしたんが初めてのキスや。
自分で言うのも何やけど30年以上生きてきたのに全然恋愛経験が足らん!まったく足らん!
だから好かれても、どないしたらええかわからんのや!
結婚結婚言うてたけど異性と付き合うってどないしたらええんや?
誰かに好かれるってどうしたらええ??
自分の気持ちやのにそれが全然わからん!
エストアもキュリオスも悪いやつやないちゅうんはわかる、
せやけどやからってどっちかと付き合うってなるんがほんまにわからん!
そんな事を毎日毎日ぐるぐる考えて煮詰まってたら、
「華、俺とちょっと買い物に行かないか??良かったら飯奢るしどうだ??」
エストアがデートに誘ってきよった。
エストアは新しい防具が欲しいけど自分じゃようわからんからうちの意見聞きたいちゅう話やった。
せやけど実戦経験豊富なエストアが防具についてわからんわけないからこれは口実やとうちはすぐにわかった。
(こ、こいつ!うちとデートしたいからってそんな見え透いた嘘つくんかぁ!?)
うちは誠実なエストアがそこまでしてうちとデートしたがる事実に心打たれた。
エストアは普段ちゃらける事もあるけど、嘘は付かんタイプや、
せやのにこんなあからさまな嘘付いてまでうちと出かけたいんか!?なんや!?急にめっちゃグイグイ来るやん!!
「あ、いや、もし華が嫌ならいいんだが・・・」
エストアはそない言いながらめっちゃしょげていきよる。
うちは思わず、
「嫌なわけないやん!しゃあないから買い物付き合ったるわ!」
なんて言うてしもた!ほならエストアはみるみる元気なっていった。
「良かった!じゃあ空いてる日をまた教えてくれ!俺予定開けとくからさ!」
「おお、ま、また連絡するわぁ」
うちは今更めっちゃビビってきてキュリオスの護衛終わるまでは先延ばしにしよう思った。
せやけど、
「華?エストアとデートするのね?じゃあさっそく明日行きなさい」
夜になって酒場で呑んでたらシャーリーが現れるなりぶっこんできた。
うちは飲みかけのビール半分カウンターにぶちまけてマスターからめっちゃ睨まれた。
「なな、な、なんで知っとんねん!!」
「エストアが今日ご機嫌に教えてくれたわ、一応私はあいつに協力してるからね♪」
「・・・あんのボケェ!」
うちはエストアに腹立ってきたけどシャーリーは逃がしてくれんかった。
「で、ちゃんと明日行くのよ?」
「な、なんでやねん!まだまだ先でええやん!なんでシャーリーが決めんねん!」
うちは当然の抗議をしたんやけどシャーリーは涼しい顔や。
「ギルドの副団長権限だからよ。
なぜならエストアのやつ、
『華の予定に合わせたいからデートまで一切依頼は受けない!』
なんて言うんだもん。
エストア程の冒険者を遊ばせとくのはギルドにとって損失なの。
だからさっさとデートして欲しいから明日なのよ」
うちはエストアのアホさ加減にクラクラした。
けど同時にそこまでデートを楽しみにしてる事実にキュンとしたのを感じて変な汗も出てきた。
「せ、せやけど明日もキュリオスの護衛あるんやで?!
明日はギルドの収支報告書の様式チェックと、町長とギルドの運営とサポートについての会議、ほんで夕方からは魔獣退治の見学・・・」
「予定なら全部わかってるわ♪明日1日くらいなら違う冒険者に任せるわよ、
華程の実力はないけど、代わりに複数人護衛につけたらまぁ大丈夫でしょう」
うちの言葉を遮ってシャーリーは話進めてきた。
もうこうなったらうちには止められへん流れやとひしひしと感じた。
「・・・わかったわ、デートしたらええんやろデート!
せいぜい思いっきり楽しんだるわ!!!」
うちはやけになって追加のビールを樽ごとグビグビ飲んだった。
ほんでマスターにまた睨まれたけどもう知らんわ!!
翌日
「・・・ほな、すまんけど今日うちは用事あるから代わりの冒険者が護衛してくれるわ。
まぁ腕は立つから安心してな??」
うちは今日は護衛休む事を伝えた。
キュリオスは黙って聞いとるけど明らかに機嫌悪い。
「まぁ、あれや、あ〜すまんな!いきなり護衛交代とか不安やんな?すまんすまん!もっとはように言えば良かったな!
けどほんまどないしようもない用事があってな・・・」
「この間の男とのデートだろう?」
キュリオスはぶっきらぼうにそない言いよった。
うちは事情知られてる事にめちゃくちゃびっくりした。
「な、なんで知ってんねん!!」
「ギルドの中には噂好きの者もいる。
この数週間で彼らと仲良く出来たのは収穫だった。
君は僕の求婚は断るが、彼とはデートするんだな。
・・・彼が好きなのか?」
キュリオスは真っ直ぐうちを見つめて聞いてきよる。
その目には、ただの嫉妬でこんな事言ってるんとちゃうくて、
もしうちがエストアを好きなら素直に身引くちゅう覚悟が見えた気がした。
「・・・好きかどうかはわからんわ。
せやけどちゃんと気持ちには応えたいくらいの気持ちはある」
うちは正直な気持ちを話した。
「そうか、わかった」
キュリオスはそない言うて黙ってしもうた。
うちはなんて声かけたらええかわからんくて黙ってたけどそろそろ行かなあかん時間なった。
「・・・ほな、うち行くな?
ほんま堪忍な??」
行こうとするうちにキュリオスが声かけてくる。
「待ってくれ。一つ聞かせて欲しい。
君が彼に対して多少なりとも気持ちがあるのは、彼が冒険者だからか?
彼と共に冒険した絆がそうさせるのか?」
うちはそない言われて困った。
「ん〜?なんでか言われたらそうかもなぁ?
けどはっきりした理由はうちにもようわからん。
てか!まだ好きなわけちゃうからな!ただの仲間よりは親しく思っとるちゅうか・・・
ん~~!ほんまようわからんねん!
ほな、もう時間やから行くな?!また明日!」
うちは無理やり話終わらせてその場から逃げた。
少し離れてから振り返ったらキュリオスが寂しそうに俯いてんのがちょっと可哀想やった。
うちが待ち合わせ場所に着いたらエストアはもう待ってた。
しかも、いつもの騎士姿とちゃうくて、おしゃれな格好しとった。
めっちゃ爽やかな印象持てるメンズノ◯ノみたいな感じの服装しとるエストアに対してうちは普段の冒険者衣装や。
「めっちゃおしゃれしとるやん!なんやねん!うちだけ普段の格好やとめっちゃ浮くやん!!」
「おう華!今日はよろしくな!
てか、おしゃれなら良かったぜ!
それに華はいつも通りで良いんだよ。いつもの華も充分・・・か、可愛いからな!」
ちょっと照れたみたいに褒めるエストアは顔真っ赤にしとったけど、
言われたうちはもっと赤なった思う。
(か、可愛い!?うちが可愛い?!そんなん初めて言われたわ!!)
うちは内心の動揺をなんとか隠した。
「ほ、ほうか。ほな、よ、良かったわ。い、行こか??」
「おう!」
こないしてうちらのデートは始まった。
エストアはまずは約束通り武具屋に来た。
街で一番大きい武具屋に来たうちらは中に入って色々見て回る。
お互い冒険者やしこの感じはめっちゃ楽しかったし普段通り過ごせた。
「エストア見てみ!このナイフミスリル製やて!ごっつ切れ味ええけど刃こぼれすぐしそうやな??」
「ミスリル製の武具は切れ味重視で耐久性はあまりだからな。
それよりこっちの胸当てが良いぞ。ストーンリザードの殻で出来た頑丈かつ軽量な装備だ、しかも値段も手頃だしな」
「ほんまや!めっちゃ安いやん!うわぁうち買おかなぁ!せやけど今の胸当てもまだまだ使えるしなぁ!」
こんなふうにあれこれ言いながら買い物するんはめっちゃ楽しかった。
普段はテキトーに済ます買い物もワイワイ言いながらするだけで全然ちゃうかった。
ほんで結局エストアはさっきの胸当てを買いよった。
なんや新しい防具が欲しいけどどれが良いかわからんかったから良かったとか、なんやかんや言うてたけど、うちはそれが口実やってわかるから恥ずかしいやらおもろいような複雑な気持ちになった。
「華、ありがとう。おかげで良い防具が買えた」
「いや、自分が見つけた防具やけどな!うちより全然詳しかったしうちいらんかったやろ??」
「いや!そんなことはない!今日はホントに助かった!」
ほんまに嬉しそうに笑うエストアはかなり良い男に見えた。
うちは思わず目そらして内心で叫んだ。
惚れてまうやろー!!
「華?どうした??」
「いや?なんでもないで??」
うちはなんとか平静を装おってみせた。
「そうか?なら良いんだが。
・・・なぁ今から良かったら飯に行かないか?
防具の礼に奢るからさ、近くに良い店があんだよ」
エストアが食事に誘ってきよった!
予想はしてたけどやっぱいざとなると恥ずい!!
「ん?まぁ、あ〜ええよ?」
うちはまた平静を装おって返事でけた。
エストアはめっちゃ喜んで飯屋に案内してくれる。
「良かったぜ!じゃあさっそく行こうか!
あ〜華が気に入ると良いんだけどなぁ。
あ、また肉だけど良いか??」
「かまへんかまへん!うちはなんでもええで」
うちは余裕な風を装い続けたんやけど、
いい加減心臓がやばかった!
(なんやねん!デートで飯って何食うねん!
女らしいもん注文せなあかんのか??
マナーとかはどないなんや??
てか最初のデートで飯って普通行くんか??
飯のあとはなんや?!何するもんなんや?!)
うちは色んな事モヤモヤ考えながら飯屋に向かって行った。
普段の婚活と違うて、なんか知り合いとデートってなんかめっちゃ意識してほんまにギクシャクする!
そないなりながら着いた店はおしゃれなレストラン、現代でいう肉バルの店やった。
「この店、上手い獣料理を出すんだ。
ほら、華この間洞窟で美味そうに肉食べてくれたよな?だからこの店気に入るかなぁ?って思ってな」
「ええやん!ええやん!うち肉好きやし嬉しいわ」
うちはめっちゃおしゃれなフレンチの店とかじゃなくてホッとした。
こういう店なら気軽に食べれる!
「良かった!じゃあ入ろうぜ」
うちらは店に入ってすぐ席に案内された。
エストアがあらかじめ予約しといてくれたみたいやった。
なんかそんなさりげない紳士感出されたら嬉しいやら恥ずいやらでやばい!
「あ、ありがとうな?予約しといてくれたんやな?」
「あ〜まぁな!この店人気だし一応な!
華を待たせたら可哀想だしな!」
こいつ!いちいちイケメン感出してくるやん!
「あ、ありがとうな。なんや悪いなぁ〜ははは」
そんな感じでちょっとギクシャクしながらうちらは席についた。
注文は店のおすすめ料理に2人ともしてゆっくりお話しタイムになった。
「なぁ?あんた傭兵稼業ずっと引き受けてくれてたんやろ?
ほんま悪かったなぁ?」
「良いって!それは全然大丈夫だ。
俺が好きでしてるんだから華は気にすんなよ!」
エストアは手振って大した事ないちゅう感じ出しとるけど、傭兵稼業がそんなわけないんはわかる。
「嘘つけ!絶対きつい依頼とかあったやろ?
・・・人同士の戦争とかうちはよう行かんもん。
エストアは凄いわ」
うちは本心からそない言うたけど、エストアは気まずそうにしとった。
「いや、本当に大した事ないもんだぜ?
戦争って言っても魔獣と戦うのと変わんねぇよ。
相手は人間だけどこっちを殺そうとしてくるのは魔獣も人間も同じだからな。
躊躇したら殺られる、だから先にぶった斬る、それだけだよ」
エストアはやっぱり軽く言うんやけど、
言われたら言われるだけやっぱり大変やとうちは感じた。
せやけどエストアは大変なんを隠して話しよる。
多分うちに心配かけへんように隠してるんやろうけど。
うちはだんだん申し訳なくなってきて俯いてしもた。
「いやいや!華が落ち込む事ないんだって!
何度も言うけど俺は大丈夫だから!
あ!飯来たみたいだぜ!さぁ!そんな話は止めにして食おう食おう!」
運ばれてきた料理はめっちゃゴツいステーキのセットやった。
うちはそのデカさに思わず笑ってもうた。
「うわぁなんやこれ!ははは!これめちゃくちゃでかいなぁ!
ほんでめっちゃ美味そうやん!」
「だろ?華なら気に入ると思ったぜ!」
「お前のうちに対するイメージどないなっとんねん!
・・・まぁ今日はええわ!いただきます!」
うちはエストアに笑顔にしてもろたんが嬉しくて、ニヤニヤしながらステーキにかぶりついていった。
食後、デザートにこれまたでかいプリン貰いながらうちらはポツポツ喋っとった。
「いやほんまでかかったなぁ!めっちゃ腹いっぱいなったわ!
胸より腹出てまうわぁ!!ははは!」
「いや、俺はそれにどう答えりゃいいんだよ。
まぁ満足してくれたなら良かったよ。
味も良かっただろ??」
「ん~~まぁ美味しかったけど、でもあんたが洞窟で作ってくれた肉の方が美味かったで?
なんや愛情を感じたちゅうか、あんたの気持ちが込もってたからかもやな!ははは!
あ・・・」
うちはエストアに聞かれて、食後で気が緩んでたせいかポロッと言うてもうた。
エストアは目丸くしてこっち見てきよる。
「ああ!すまんすまん!せっかくご馳走してくれたのに悪かったな!
ここの肉もめっちゃ美味かったで!最高や!うん!」
うちは慌てて言い訳並べるけど、多分顔は真っ赤やし、慌てすぎてしどろもどろなってもた。
「いや、まぁ、華にそう言われたら嬉しいぜ」
エストアも顔真っ赤にして俯いとる。
それからお互い黙ってもて沈黙の時間になった。
「・・・なぁ、店出たら来て欲しい所があんだけどよ。いいか?」
「あ、え?うん。ええよ」
沈黙も破ったエストアが行きたい場所ある言うてきたから、うちは行くことにした。
店から出て向かうは街の外。
初心者の冒険者がよく行く草原やった。
「あんたええんか?うちはともかくあんた今装備無しやで?大丈夫か??」
うちは鎧も剣もないエストアを心配したけど、エストアは大丈夫言うてきかんかった。
「大丈夫だ!この草原の魔獣は弱いからな、素手で充分だ。
それよりここがどこかわかるか?」
エストアは草原のど真ん中で立ち止まってうちに聞いてくる。
辺りには何にもないし、強いて言うならちょっと大きな岩があるくらいや。
「なんやの?全然わからんわ」
うちが降参したらエストアが自慢気に胸張って教えてくれた。
「ここは華と初めて出会った場所だ。
華が異世界からやってきて、右も左もわかんねぇままあたふたしてたんだよな?
ははは、あの時はマジでなんだこいつ?ってなったぜ」
エストアに言われてうちは思い出した。
言われてみたら確かにここに見覚えがある。
異世界転生したうちはこの草原から始まったんや。
初めての空、初めての草原、初めて見る魔獣や魔術。
未知の体験過ぎてどないしたらええかわからんようなってたら、エストアやニューワールドの仲間達がうちを見つけてくれたんや。
「・・・懐かしいなぁ、数年前の事やのに全然忘れてたわぁ。
けどほんまあの時は慌てたで。見つけてくれてありがとうな?
せやけどなんで今こないな場所に来たんや??」
うちは不思議なって聞いてみた。
ほならエストアは顔真っ赤にして何か言おうとしとる。
「あ〜なんだ。俺は、つまり、だから、俺はあの時から、初めて出会ったこの場所からその〜。
お前の事が・・・」
うちはエストアが何言おうとしてるかわかってめっちゃ焦った!
ど、どないしよ!!告白される!!
エストアのことは嫌いとちゃうけど今付き合えるか言われたらまだわからんのに!
うちがあたふたしてる間にエストアは今にも言おうとしてたんやけど、
『華!聞こえる!?緊急事態よ!今どこにいるの!?』
シャーリーが魔術通信で話しかけてきた。
エストアにも聞こえたみたいでびっくりしとる。
『な、なんやねん!聞こえてるで!?』
うちは思わず返事してエストアの告白をうやむやにしようとした。
意地悪いかもやけど堪忍してほしい。
『キュリオス様が行方不明になったの!
森の視察途中ではぐれたらしいわ!
私も魔術で探してるけど華達も協力してちょうだい!』
『はぁ?行方不明ってなんでやねん!』
うちは今度は違う意味でめっちゃびっくりした。
今日護衛してくれとる面々はよう知ってるけど、実力は確かやし、適当な仕事するわけない奴らや。
せやのにキュリオスを行方不明にさすって何があってん??
『キュリオス様が自分から居なくなったみたいなのよ!
理由はわからないけど、もしかしたら魔獣退治の依頼を一人でやろうとしてるかもなの!』
『はぁ?なんで一人で魔獣退治やねん!?』
そう言いながらうちは思い出した。
今朝キュリオスはエストアとうちが冒険者の絆があるからやらなんやら言うてた。
もしかしたらそれで魔獣退治なんてして自分も、とかアホな事思いつきよったんか!
「あんのアホが!!」
うちはすぐキュリオスがおる森に駆け出した。