第四話 【結婚する前に死ねるか!】
「はぁ、はぁ、もう、なんやねん!あ〜しんど!」
うちは山奥の道なき道をひたすら歩いとる。
獣かて避けるような酷い道やから歩くだけでも一苦労や。
「文句言うなよ、もうすぐだから」
「ほんまにもうすぐかぁ?もうずっともうすぐもうすぐ言われてる気するで??」
ただでさえしんどい道をよりによってエストアと歩かされてるんがまたしんどい。
エストアはうちの後ろから楽々と付いてきよる、それがまたムカつくねん。
「はぁ、お前さぁ、文句ばかりだな?勇者ならもっとしっかりしろよ?さぁペース上げて行くぞ」
エストアはそない言うてうちの背中を押してくる。
うちは文句言う力も無くてされるがままやった。
なんでうちがこんな目に遭ってるか、それはあの依頼が全部悪いんや。
3日前
冒険者酒場
うちがまたいつも通り酒場で飲んでたら、シャーリーが浮かへん顔でやってきた。
いつも落ち着いた様子を崩さへんシャーリーにしたら珍しい事やった。
「シャーリーどないしたんや?珍しく浮かへん顔して?」
うちが尋ねたらシャーリーは意外そうな顔して驚いた。
「あら?華に心配されるなんて、私ったらそんなに酷い顔してるかしら??」
「ふん♪うちは鋭いんやで♪シャーリーの心くらいいつでもお見通しや♪」
「華が鋭いならスライムの軟体ボディーも鋭いって事になるわねぇ?」
「なんでやねん!それはスライム言うよりカー◯ィのニードルやろ!
・・・ほんで?ほんまにどないしたんや??うちでよかったら話聞くで??」
うちは軽く突っ込んだあとシャーリーに落ち込んでる原因を尋ねた。
シャーリーはちょっと悩んでから話してくれた。
「うーんちょっと厄介な依頼がギルドに入ってね?
誰かに頼もうとしたんだけど、皆忙しいみたいでね?
仕方ないから私が行こうかと思ったんだけど、領主様から呼び出されちゃったの。
誰か手の空いてる強い冒険者がいればよかったんだけど、なかなか都合良くは行かないわよね」
「なんやねん!そんなことかいな!ほならうちが行くやんか!水臭いでシャーリー!そんな依頼はうちに一番に持ってこなあかんやん!!」
シャーリーはうちの大事な友達や、異世界に来た当初、心細かったうちに親身に寄り添ってくれたシャーリーをうちが助けんでどないすんねん!ってうちは意気込んで依頼内容もきかんと引き受けた。
「華、良いの?忙しかったんじゃない??」
「かまへんかまへん!どうせ見合いはあかんかったからな!明日からは暇で暇でしゃなかってん!
シャーリーの依頼、さっそく明日からやらせてもらうで!」
ほんまは明日は見合い探しに隣町まで足伸ばそか考えてたけど、シャーリーの為やし、うちは暇やと嘘付いた。
シャーリーはその嘘に気づいてる感じあったけど話合わせてくれた。
「・・・ありがとう華、大好きよ。
じゃあさっそく依頼内容だけど・・・」
シャーリーは依頼内容を話してくれた。
依頼は山奥にある魔王の拠点の壊滅。
魔王が最近魔獣達を率いてちょこちょこ来るんは拠点を築いたからやとギルドの調査でわかったらしい。
ほんでこの地域を治める領主様はギルドに拠点壊滅を命じたって話や。
「けどその拠点がかなり山奥にあってね?普通の冒険者じゃ到達するのも無理なのよ。
けど今なら魔王は華の技でダメージを受けているはず。攻めるなら絶好の機会なのよ。
まぁ多分拠点じゃなくて本拠に戻っているだろうけどね」
「なるほどなぁ。
ほならうちがちゃー!と行って、
ちゃー!と片付けて、
ちゃっ!と帰って来るわ!」
「・・・まぁよく分からないけど、華なら任せて安心ね♪
あ、けどさすがに一人じゃ行かせれないから護衛は確保してるの。
その人と一緒に行ってね?」
うちはなんか嫌な予感がしてシャーリーの顔をマジマジと覗き込んだ。
「なぁシャーリー?もしかしてその護衛って・・・」
現在
ほんで案の定護衛はエストアのアホで、二人っきりで依頼をこなさなアカンくなったんや。
魔王の拠点までは街から片道一週間くらいはかかる。
つまり往復二週間も二人っきりで旅せなアカンちゅう最悪の依頼になってもうた。
「はぁ、ほんま何でお前が護衛やねん、てかずっと言うてるけど護衛なんかいらんからな?」
うちが文句を言うとエストアは肩を竦めた。
「ギルドの決まりなんだよ、高難度の依頼には必ず護衛を含めた複数人で行く事ってなってんだ。
だからお前がいくら文句言っても同じだ」
「はぁ、てかお前なんで護衛ばっかりやっとんねん?
普通に冒険者しとけやぁ」
「・・・高難度の護衛は報酬もかなり良いからな」
「なんやねん?急に歯切れ悪いやん?」
うちはエストアが歯切れの悪い返事するから気になって聞いてみた。
せやけどエストアは無視して黙って歩き続けよる。
「なぁ!なんで無視やねん!なんやお前、金ないんか??
うちでよかったら貸したんで?けど利子はトイチやで!カカカ!」
「・・・」
「だから無視すんな!」
エストアはそれからしばらく何言うても無視してくるからうちも黙って歩き続けた。
街を出て三日、山入って三日、ようやくうちらは目的の拠点にたどり着いた。
魔王ベルゼバーンの拠点は山のめっちゃ奥深くに作られとった。
山の木を切り倒して作られた木造の拠点はさながら城みたいにそびえとる。
ベルゼバーンの旗がはためいて存在感抜群の拠点やった。
「ようやく着いたなぁ!ほんま遠かったわ!」
うちは感慨深げに一息着いたんやけど、エストアはさっそく拠点を遠くから偵察しとる。
「拠点には見張りがいるな。ゴブリンと下位の魔族だ。
よく見えないが魔獣も多数いるみたいだ。
慎重に攻略を考えるぞ?」
「なぁ?もうちょっとゆっくりやろうや?
今着いたとこやん?それに今からやったって夜なってまうしさぁ。
明日からにして今日は休もうや??」
うちはダルいから攻略は明日にしようと提案した。
せやけどエストアは聞く耳持たんかった。
「いや、長引けば魔王が傷を癒して帰ってくるかもしれない。
こんな山奥で増援もなく魔王とやり合うのは不味い。
お前も疲れてるだろうが一気に攻略してしまおう」
「いや、ちょっと今日はしんどいねんなぁ〜
ちょっと休んだら大丈夫やからな?だから明日にしようや?」
うちはほんまに身体がだるかった。
理由はわかっとるけどこいつには言いにくい、けど今から拠点攻略はしんどいから遠回しに言うてんねんけど、
「おい、ふざけんなよ?お前がこれくらいで疲れるはずないだろう?
サボりたいならそう言えよ、仮病まで使って仲間騙すな」
うちはエストアの言葉にカチンときた。
こっちの事情もわからんとよう言いよるわこのガキ!!
「はぁ!?お前ってほんまに女扱い下手やな!そんなんやと女にモテへんからな!
ももええ!さっさと終わらせて帰るで!!」
うちは早く依頼終わらせてこのアホから離れたくて無理やり身体動かして拠点に向かった。
ベルゼバーンの拠点は思いのほか頑丈で難攻不落やった。
ただの木の壁に見えたけど魔術でしっかりガードされとるし、
拠点内の作りも守りやすく攻め難い形状やった。
守護する魔獣達も手練れで手強い。
対するうちらは二人やのに連携もクソもなくただ闇雲に突っ込む戦い方しとる。
はっきり言ってめちゃくちゃ苦戦した。
「ああぁ!もう!なんや!あの壁はぁ!
ごっつイライラするわ!」
うちは何度目かの攻撃を防がれてその場で地団駄を踏んだ。
現状は拠点の外壁を壊して中に入れたんやけど、
内壁がかなり堅固に作られとって、壊そうにも魔獣達が上手い事邪魔してきよる。
全然拠点内部に入れんのがめちゃくちゃイライラした。
「お前!ちゃんとやれや!はよあの壁壊さなあかんのとちゃうんか?!」
うちはエストアに八つ当たりした。
エストアは十二分に働いてくれとる。
うちを護りつつ魔獣を減らして的確に拠点攻略を進めてくれる。
正直エストアがおらな外壁も壊せんかったかもやけど、今のうちにはそんな事を、考慮する余裕もなかった。
「すまん、だがお前ももっとちゃんとしてくれないか?
お前ならあれくらいの壁簡単に壊せるはずだろう?
スキルの火力も低いし、狙いも荒い、一体どうしたんだ??」
「うっさいわ!なんや、うちのせいか?!うちが悪いから拠点攻略出来ひんのか?」
「いや、そうは言ってないだろう・・・」
うちがイライラして当たり散らしてたら拠点から魔獣がまた出てきた。
あいつら分散して現れてこっちを疲弊させてきよる。
ほんまイライラするで!!
「ほら!また出てきたで!やるで!」
うちはエストアと迎撃態勢に入る、
その時、
「痛っ!」
うちは背後から矢で射られた。
魔獣達が拠点の外壁から回り込んで来とったんに二人共気付かんかったみたいや。
「この・・・アホ共!」
「華!大丈夫か!?」
エストアがうちを庇うようにフォローしてくれる。
せやけどうちはだんだん意識が朦朧としてきた。
「あかん、あの矢、なんや薬塗ってあるみたいやで・・・
あんたも・・気・付けや?」
うちはそれだけ言うてその場で気を失った。
目ぇ覚ましたら洞窟の中に寝かされとった。
辺りを見回すとそばに座っとったエストアと目がおうた。
「華?大丈夫か?痛みはあるか?」
エストアはうちの状態を確認してくる。
正直射られた肩がめちゃくちゃ痛むけどここは強がる事にした。
「こんなん全然平気や。薬とか塗られてなかったら気絶もせんケガやでな」
「・・・そうか。
しかし一応一晩は様子を見て安静にしているんだ。
ここは拠点近くの洞穴だ。魔獣達は拠点からは離れないから、ここなら安全だしゆっくり身体を休めよう?」
「はぁ?!一晩とかいらんわ!今すぐ拠点戻ってケリ付け・・・
イタタタ!」
うちは無理やり立ち上がろうとしたけど、肩が痛すぎて堪えきれんかった。
「華!今はおとなしくしてくれ!ケガしてるんだぞ!?」
「だ、大丈夫大丈夫、大したことないわ!」
強がるうちにエストアもだんだんヒートアップしてきよった。
「いい加減にしろよ!そんな身体で何が出来るんだよ?!
そもそも今日は元から体調が悪そうじゃないか!そんな状態では勝てるものも勝てないからな!」
「うっさいわボケ!こっちの事情も知らんとごちゃごちゃ言いよってからに・・・」
「はぁ?なんだよ事情って?!」
アホのエストアに言い返したろうおもたら、下腹部に違和感があってそっと見てみたら・・・
「ちっ!あかん!今かいな!」
うちは慌てて洞窟から出ようとしたけどエストアに腕掴まれて引き止められた。
「待てよ!そんな身体でどこ行くんだよ!?」
「どこでもええやろ!?離せや!!」
「お前いい加減に・・・!え?」
エストアはうちの股から血が出てズボンにまで染み作っとるのに気が付いたみたいやった。
「・・・こっち見んなボケェ」
その後うちは近くの川でざっとズボンや下着を洗って身体も綺麗にした。
念の為替えの服も持ってきてたからそれに着替える。
それにしても、生理が近いとは感じてたけどこないに早いとは思わんかった。
あと数日は大丈夫やと思ってたんやけど、多分戦闘で早まってもうたんやろな。
うちの身体の不調は生理が近かったからやった。
だからスキルも威力出んし、戦闘も荒くなる。
身体はダルいし疲れやすくなるしほんまにしんどいわ。
せやけど生理さえ来たらあとはゆっくりしとけばだんだん回復するはず。
数日休んであんな拠点一発でコナゴナにしたる!!
うちはそう意気込んで洞窟に戻った。
ほならエストアがこの世の終わりみたいな顔で洞窟に正座しとった。
「な、なにしてんねん?」
「華!すまない!月経とは知らなかったんだ!本当にすまなかった!!」
「大きい声で言うなアホ!
ったく!だからしんどい言うてたやろ!」
「す、すまん、けど本当に知らなかったんだ。
けど俺のせいでしんどかったよな。
すまない、本当にすまなかった」
エストアは何回も謝って頭を下げる。
そんなに真っ向から謝られたらうちかて弱い。
「・・・もうえぇて。うちかてちゃんと生理やて言わんかったからな。
悪かったわ、すまん」
うちが頭下げるとエストアは驚いたみたいやった。
「お前に謝られたら困る。悪いのは俺だ。
・・・けどまぁ体調が悪くて本調子じゃないのに依頼を受けるのはもう止めてくれ。
今日だって死ぬ所だったし、いくら華が勇者でも危ないだろ?
・・・華の事が心配なんだ」
エストアはほんまにうちを心配してる感じを出してくれてる。
そんな気持ちが伝わってきてうちは嬉しかった。
「・・・ありがとう。まぁ次からは気を付けるわ!
普段は生理の時は依頼なんか受けへんのやけど、ほら今回は急ぎやったしな!
だから今回エストアが来てくれてよかったわ、ありがとう」
うちは笑顔でそない言うてこの話を締めた。
あんまり謝られても申し訳ないしな。
結局その日の晩はゆっくり洞窟で休む事にした。
晩飯はエストアが近くで獣を狩ってくれたんを二人で調理する。
生理の事をちゃんと話したらエストアとギクシャクせんようになった。
エストアも無理させた事をまだ気にしてる感はあるけど、普通に話してくれてる。
「ん~~この肉絶対美味いやん!はよ焼いて食べようや!」
「待て待て、こういう肉はしっかり下味を付けた方が上手いからな、ゆっくり味付けするぞ」
「え〜はよ食べたいなぁ!あとビールがあれば最高やねんけどなぁ」
「ははは、こんな山奥で無茶言うなよ」
和気あいあいと調理するんはめっちゃ楽しかった。
なんか学生時代の感じみたいなめっちゃワクワクするノリを久しぶりに思い出した。
なんかテンション上がるなぁ♪
調理が終わって二人で食べる時にはうちのテンションはMAXやった。
「なんか楽しいわぁ♪シャーリー達とゆっくり話しながら食べる飯とは違うて、なんかワクワクする感じ良いなぁ」
「華が楽しいならよかったよ、
俺も街で食べる飯よりテンション上がるしな。
さぁ!食べようぜ!」
「おう!それじゃあせぇの!」
「「いただきます」」
二人で揃って挨拶してから食べだした。
やっぱり肉はほんまに美味しくてマジでやばかった。
「んまぁぁ!この肉上手いなぁ!なぁ、これ何の肉やったっけ?」
「鹿だな、野性味があって上手いよなぁ。
あ、けど火は通したが野性の生肉だからな、ちゃんと解毒魔術使っておいてくれよ?
腹下したら申し訳ない」
「はいはい、てかそうか!この世界なら生肉も解毒魔術使えば食えるんか!
ほなら今度やってみよかな♪」
「別に構わないが、完全な生肉だと消化して排出するまでずっと解毒し続けないといけないぞ・・・」
こんなアホな会話しながら食べる飯はめっちゃ美味かった。
結婚して家庭持ったらこんな感じなんかなぁ?って想像しかけたけど、止めた。
それはエストアに失礼やもんな。
「ん?どうしたんだ?」
エストアがうちの様子見て心配してくれる。
「あぁ、なんでもないわ。ただこんな楽しい食事を結婚したら毎日出来るんかなぁ、って想像してもただけや。
すまんな、あんたはシャーリーが好きやのに変な想像してもて」
「あ、いや、別に大丈夫、だぞ?」
気まずい感じになったエストアを見てうちは変な想像してもうたんを後悔した。
「すまんすまん!あんたがシャーリーに惚れとるもわかってるし、うちの事も好かんのもわかってるからな!
ただちょっと想像してもただけやから!深い意味なんて無いし全然気にせんといてな!」
うちはあえて元気良く言い訳してみた、
ほならエストアはちょっと言いにくそうにしながら話しだした。
「別に、お前の事は嫌いじゃねぇよ・・・
俺だって今楽しかったし、
け、結婚したらとか想像されんのも別に嫌じゃねぇ」
「あ、そう。ふーん、まぁ、それなら?まぁよかったわ」
なんかめっちゃ微妙な空気になってしもうた。
なんやろこの感じ!なんか居心地が悪いような変な感じや!
「なぁ?華はなんでそんなに結婚にこだわるんだ?」
うちが微妙な空気に悶えてたらエストアが尋ねてきた。
うちはこれ幸いと微妙な空気から切り替える為にそれに乗っかった。
「結婚な!うん、うちが結婚にこだわるんわな・・・」
うちはオトンの浮気の事やオカンの話をしてなんで結婚したいんか話した。
エストアは黙って聞いてくれた。
「まぁそんな感じで、うちは死んだオカンの為にも幸せにならなあかんねん。
だから結婚して昔のオトンオカンみたいに幸せに暮らしたいわけや。
どや?しょうもないやろ?」
うちがおどけて話締めたらエストアは真剣な表情でこっちを見た。
「全然しょうもなくなんかねぇよ。
華がなんでそんなに結婚したがってるのかわかってよかった。
お母さんの為だなんて華はやっぱり良い奴だな」
「そんな事あらへん。うちはただ幸せになってオカンに見せたりたいだけ。
うちはちゃんと幸せやで〜!ってな!
まぁ生きてる間に見せたられへんかったんがちょっと心残りやけどなぁ」
「大丈夫だ、華のお母さんならちゃんと見ていてくれてるはずだ」
エストアはいつになく優しく接してくれる。
うちはなんか嬉しいようなむず痒いような変な感じなってきた。
「な、なんねんお前!今日はえらい優しいやんか??調子狂うやん!いつもみたいに絡んで来たらええやん!」
うちがテンパってそない言うたらエストアは何も言わんと黙って笑っとった。
うちはなんか負けた気がしたけど不思議と嫌な感じはせんかった。
その後は飯食ってお互い洞窟の端と端に寝床作って寝た。
エストアとは寝るまでずっと他愛ない話して盛り上がれた。
今まで何で喧嘩ばっかりしてたんやろか?ってなるくらい仲良く話せた。
せやけど翌朝目が覚めたらエストアは寝床におらんかった。
「あれ??」
うちは辺りを探そうとしたら、拠点の方からデカい音が聞こえてきた。
うちは全て察してダッシュした。
「あんのアホ!!」
うちが拠点に着いたら昨日壊した外壁から更に中の内壁も壊されとった。
内壁から更に内部に侵入したら、辺り一帯に魔獣の死体がゴロゴロ転がってるんに気が付いた。
「うわぁ、派手にやっとんなぁ〜」
うちはエストアを探して拠点内を探し回った。
ほんでようやくエストアを見つけた、魔族の幹部らしい骸骨騎士達と派手に切りあっとる。
エストアは全身傷だらけで身体中に矢ささっとるし、満身創痍もええとこやった。
せやけど動きはめちゃくちゃ鋭く早い、うちが駆けつけるまでにあれよあれよと骸骨騎士を次々と切り捨てていっていよいよ残り数体になった瞬間、
「ぐはっ!」
膝ついて力尽きかけとった。
エストアが動かれへん隙に骸骨騎士達が一斉に斬りかかる。
うちは素早くエストアの前に出てスキルでガードした。
「このアホンダラ!!なにやっとんねん!!」
「華?!なんでここに!」
うちはエストアを無視して骸骨騎士らにありったけの力込めて技を使う。
「こんのボケ共がぁ!ひっかけ橋ホームラァァァン!!!」
スキルで作ったひっかけ橋を力いっぱい振り抜く!!
うちは骸骨騎士も拠点の壁も前方にあったもんは全部吹き出した。
「はぁ、はぁ、どんなもんや!」
うちはまだ生理でダルい身体を無理やり立たせて余裕っぷりを見せた。
「ハハハ、さすがは華だな。その調子を昨日も出してたら楽勝だったな・・・」
エストアは笑いながら倒れていった。
うちは慌てて治癒スキルを使いながらエストアを怒鳴りつける。
「このボケ!何勝手に死にかけとんねん!
一人で行くなやアホボケカス!!」
「ハハハ、キツいなぁ。
まぁ、気にすんなよ・・・
俺なりの罪滅ぼしさ。
華、昨日は本当に悪かったな・・・」
治癒スキル使こうてもエストアの傷は全然治らんかった。
全身に深いダメージがありすぎて治癒が追いつかんせいやった。
「エストア!お前!ふざけんなや!お前もはよ傷治せや!
うちはあんまりダメージ受けへんから治癒苦手やねん!
あぁもう!シャーリーなら簡単に治せんのに!」
うちはエストアの傷が治せんくて焦りまくった、それで余計治療が進まんかった。
「華、もう大丈夫だ、もういい、すまん」
エストアはもう諦めたみたいにして、目に光無くなっていきよる、
うちは涙が出てきた。
「お前!ふざけんなや!こんなとこで死ぬ気か!?あぁん!?
シャーリーの事好きなんやろ!?せやったら生きて帰って告白せんかい!
あぁぁ!こんなんで勝手に死ぬなやぁぁぁ!」
「もういい・・・も・う・いいんだ。
そ、それに、シャーリーじゃ・・・」
「はぁ?なんて!?」
エストアはどんどん弱っていきよる。
声も小さなってよう聞き取られへんくなる。
「俺・・・シャーリー・・好き・じゃ・・・ない、
俺・・・は」
いよいよ最後が近かった。
うちはエストアに対して怒りが爆発した。
「死ぬな言うとるやろがぁぁぁ!
生きんかいボケェ!!!」
うちは自分でも理由もわからんままエストアにキスした。