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第7話 残酷なる支配者

 中学2年生の沖トオヤは目隠しをされ屈強な大男に連れていかれていた。

 このまま殺されるのか、恐怖に息もできない。


 なぜこんなことになったのか。


『指定された場所で指定された服装の相手に「(たえ)なる椿(つばき)」と言うと復讐に力を貸してくれる』


 トオヤはある闇サイトに書かれているとおりに行動した。

 すると屈強な大男に目隠しをされてどこかに連れていかれた。

 目隠しされているのに下り階段を何の配慮もなく引っ張られ、当然転がり落ちる。

 泣きそうになるトオヤを後から下りてきた大男が引きずっていく。

 しばらく歩いて床に転がされる。


「目隠しは外すな。姫の顔を見ることは許されていない。帰りは別のもんが連れていく」


 大男はそれだけ言って去っていった。

 しばらくすると小さな足音が近づいてきた。

 トオヤは息を殺して待つ。


 天から響くような美しい声が届いた。


「小僧。名は何と言う」


「沖トオヤ……です」


「ほう……」


「あの、あなたは?」


「わらわはツバキ。妙なる椿。それで? 誰に復讐をしたい? わらわが力を貸してやろう……」


「はい。宮本くんと、佐々木くんと、柳生くん……」


「名前を言われても分からぬな。どこのだれじゃ」


 同級生の3人であることを説明する。


「ふむふむ。あい分かった。それではそなたに復讐する力をやろう。そうじゃな、右手を出せ」


 言われたとおりにすると右腕にいくつも刺すような痛みが走る。何かに噛みつかれた。

 痛みはすぐに消え、代わりに目まいと吐き気が襲ってくる。いったい何をされたのか。

 息も荒くひたすら耐える。

 どれほどの時間が経ったか、だんだん楽になってきた。


 ツバキが言った。

「成功じゃな。お前は力を得た。人を超える妖の力じゃ。その力で憎い相手を殺すがよかろう」


 本当にそんな力を得たのだろうか。


「ただしひとつ忠告しておく。この力は誰にも知られてはならぬ。誰にも見られぬよう、また仕留め損なうことのないよう、よおく考えるのじゃぞ」


 それを最後にツバキはいなくなった。


 トオヤは何事も無かったかのように家に帰った。

 すぐに自分が生まれ変わったかのように強くなったことに気づく。


「すごい力だ。もうあいつらにイジメられたりしない!」


☆☆☆


「人間業じゃない。つまり残妖の犯罪」


 『式』(残妖専門の警察みたいなもの)に所属する深山ドーシャはため息をついた。


 携帯に新しい事件の概要が送られてきた。

 それによると男子中学生がバラバラに引きちぎられて殺されたらしい。

 最近どうにも凶悪な犯罪が多い。


「目撃証言から殺したのも男子中学生。世も末だ」


 いったい何があったらこんなむごたらしい殺し方をするのだろうか。


 殺された被害者の名は……沖トオヤ。


☆☆


 下校途中の不良3人組が歩いていると石をぶつけられた。


「あ?」


 路地裏に少女。白い髪に夜空のような黒い瞳。「海老で鯛を釣る」の柄の服。


 ドーシャは挑発した。

「かかってこい」


 筋肉質の宮本、背の高い佐々木、陰気な柳生。

 この不良3人組は容疑濃厚。この中に残妖がいるはず。いなかったらそのときはそのとき。


 まず佐々木が殴りかかって……手が伸びた。

 佐々木が残妖だ。

 ドーシャは冷静にかわして懐に入り顎を殴り飛ばす。


 これでほぼ終わり。あとの2人は敵じゃない……。


「ざけんなよてめえ。燃えろ!」


 宮本が左腕をぶんぶん回すと左腕が発火した。


「残妖がもう1人!?」


 残妖というのはそんなに多くない。学年に2人いるのはかなり珍しい。

 燃える左腕を前に突き出すと炎が迸った。


「鮫々山の水流!」


 ドーシャは両の手のひらを組んで水しぶきを放つ。水が炎を打ち消した。

 蒸気が視界を塞ぐ一瞬のうちにドーシャは宮本に二段蹴りを打ち込んで倒した。

 最後の1人、柳生が息を吸い込む。吸引は終わることなく暴風となる。

 こいつも残妖だ。

 学年に3人いるのはありえないと言っていい確率だが、2人の時点で不自然だった。3人のほうが納得いく。


礫石(れきせき)山のつぶて」


 ドーシャは一度手のひらを合わせて閉じ、そして開くと山盛りの小石。それは風に乗って柳生の口に吸い込まれていく。


「ぐ、げ」


 石を喉に詰まらせて吐いた。

 怯んだところを絞め落とす。

 立ち上がろうとする宮本の肩を踏むようにして座らせ、無表情で自撮り。


「お、お前。何もんだよ」

 宮本が声を絞り出す。


「まさかお前、ツバキに言われて来たのか。俺たちもトオヤと同じように殺す気なのか」


「ツバキ?」


「お前もツバキに力をもらったんじゃないのか?」


 ドーシャは宮本を踏む足に力を込めた。


「何の話? 全部言え」


 宮本は話した。


 ある日突然、不良3人組はヤクザにさらわれ目隠しをされてツバキと名乗る女のところへ連れていかれた。

 そして力を与えられ、言われた。


「沖トオヤという小僧がお前らに復讐したいと申しておってのう。わらわが力を授けてやった。だがそれでは不公平じゃろう? お主らその力で存分にトオヤをもてなしてやるとよい」


 そのときは溢れる力に惑わされ気づかなかったが、ツバキは残酷に笑っていた。


「ククク。楽しみじゃのう。力を得たと思い込み、あらぬ希望を抱く愚かな弱者が真実を知り絶望しながら死んでいくそのときが」


「残妖を作り出す技術なんか存在しない」


 ドーシャは宮本に凄んだ。


「ほんとだって。なあ?」


 気絶している残りの二人に聞くが返事は返ってこない。

 ドーシャは宮本を蹴倒した。


 あとは管理局の仕事だ。

 この3人は『治療所』という名の監獄に送られる。

 任務はこれで終わりだ。

 だが何も解決はしていない。


「ツバキ……」


 ドーシャはその名をよく知っていた。


 12年前、大規模テロを起こした残妖集団『逢魔』の最高幹部。『逢魔』が一度壊滅したとき構成員のほとんどは捕まった中、今もまだ逃走中。


 呪い殺しのツバキ。


 だがツバキなんてありふれた名前だ。ただの偶然かもしれない。

 どちらにせよ、人の命を弄ぶ邪悪な生き物。野放しにはできない。

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