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86.サザリーナンダ父娘 4

父:「今日から父の魔法指導はリマリーエお前だけになる。カナリーエは、明日から高等学校の学生となるため父の指導は終わりになった。」


娘:「はい。お父様。よろしくお願いいたします。」


父:「うむ。さっそくではあるが、今回の学年末休みに我がサザリーナンダ公爵領で出来るようになった魔法を父に見せて欲しい。」


娘:「はい。お父様。私が出来るようになったのは『魔力隠蔽結界』です。」


父:「マジか?父には張れない結界ではあるが、『魔力隠蔽結界』は無意味であると思うが…。」


娘:「四星以下を自分の結界の中に入れる時に必要な結界です。五星の魔力は隠蔽しなければいけません。」


父:「そもそも父は自分の結界に他人を入れることが出来ない。」


娘:「そうですわね。魔力量を調整する技術がないと他人を自分の結界の中に入れることはほぼ不可能ですから。」


父:「魔力量を調整する技術だと?そんな技術があるのか?」


娘:「魔法を習う上で一番最初に身に付けるべき技術ですわ、お父様。その技術がないと連続攻撃も結界魔法もたくさん張れません。」


父:「お前のいう連続攻撃は、以前カナリーエの結界に連続で放った魔法攻撃のことか?」


娘:「はい。お父様。あの時は、出来る限り弱い魔力弾を連続五発、続けて少し強い魔力弾を連続五発、そしてさらに強い魔力弾を連続五発の合計15発を放ちました。私の魔力量の違いがお父様に分かりましたでしょうか?」


父:「いや。威力は強くないとは思っていたが魔力量の違いは分からなかった。」


娘:「今はもう少し連続で出来ますし、コントロールも上手く出来るようになりましたわ。」


父:「ならば、それを父に見せなさい。父が結界を張るから、父の結界にぶつけてみなさい。」


娘:「はい。お父様。まずは、弱い魔力弾を中心に一発と、そこから30cm離して計回りに12時から11時の方向まで12発の合計13発連続でいきます。」


父:「おおっ。本当にきた。威力は強くないが凄い。」


娘:「さっきよりも強くいきます。」


父:「うおっ。本当に強い。さっきよりも衝撃が強くなった。」


娘:「攻撃魔法は、こんな感じですわ。お父様。結界魔法は出来る限り少ない魔力量の薄い結界を重ねて張ります。全力の結界魔法ならば、私は二重で精一杯ですが、魔力量を調整すると七重まで張れるようになりました。」


父:「七重だと?マジか?うおっ。マジで七重だ。凄い。」


娘:「お父様、魔力量を調整するという意味がお分かりになられましたか?」


父:「分かった。お前の魔法の技術は父には真似することも教えることも出来ない。さすが、クノハ王義母殿下だ。」


娘:「お父様、お父様は、クノハ王義母殿下が何故他人の私にこのような魔法の技術を教えてくださったと思われますか?私に魔法を教えるクノハ王義母殿下のメリットを何だと考えていますか?普通、五星は他人に魔法の技術を教えることはありません。」


父:「それは…、フィアレアラ皇女殿下の保護者として旅行に行くため?なのではないのか?」


娘:「本気でそう思っていますか?お父様。五星にとっての魔法の技術は『命』に関わる『力』ですわ。それを旅行のために他人に教えると?自分だけではなく未来の子どもにも影響する『力』だとお父様は以前私にそうおっしゃったのに、本気で旅行のためだとそう思うのですか?」


父:「…。何がいいたいのだ?リマリーエ。」


娘:「お父様は、第二王子ハウル殿下をどう思っていますか?三年前、私は二回、ハウル第二王子殿下は王家王族五星ではないと思うと言ったことを覚えていますか?お父様は、今でも、ハウル第二王子殿下を王家王族家系五星だと思いますか?」


父:「…。私とてどうすればいいのか分からないのだ。厳しい現実を見ないようにしていることは否定出来ない。もしかしたら、とは思ってはいるが、言うことが出来ないのだ。この先の未来、王家王族家系五星がクララ王女殿下たったお一人では我が王国の未来は危うい。ならば、いっそうのことハウル第二王子殿下は王家王族五星だとすべきなのではとも思う。」


娘:「家系を偽り続けることなんて出来ないに決まっているではありませんか。王家の冠婚葬祭には他国の外交代表五星の方々が我が王国にいらしゃるのですよ。ハウル第二王子殿下が王太子になったとしたらその方々に魔力勝負である握手を求められないと思われるのですか?

さらに、どの国の王太子も慣例で王位を継ぐ前に国外代表五星として国際会議に出ていくのですよ。ハウル第二王子殿下も王太子となるならば、出ていかないと他国に魔力に問題があると言っているようなものですわ。」


父:「それは…、その通りなのだが…。」


娘:「私は、ハウル第二王子殿下は王太子になってはいけないと思っています。ナンダン王族家系は、旧マ・アールよりもワントゥンよりも下ですわ。そんな弱い魔力では国王として我が王国は守れません。」


父:「だが、それはクララ王女殿下が王位を継いだとしても同じだ。我が王国の若い王家王族五星はクララ王女殿下たったお一人だと言っていることになるのだ。我が王国の未来は危ういと言っているのと同じではないか。

父も分からないのだ。どうすれば一番いいのかが。」


娘:「私は、クララ王女殿下と共に未来の我が王国を守るために、クノハ王義母殿下の魔法指導を受けることに致しました。少しでも国家のお役に立てるように魔法の技術を一生懸命磨くつもりです。それが四大公爵家で一番強い魔力を持つ旧マ・アール五星の務めだと思っています。

お父様。お父様は早いうちにご決断ください。いつまでも家系を偽ることも王位継承順位を未発表のままにすることも出来ません。お父様は、第二王子ハウル殿下の後見人であり、現在の四大公爵家第一位の権限を持つ我がサザリーナンダ公爵家の当主であるのですから。

私は、お父様が正しい決断をすると信じてます。」


父:「ああ、わかった。ただ、他の公爵家と相談しご協力いただかなければならない。それなりの準備も時間もかかる。」


娘:「はい。お父様。」


父:「しかし、お前は一年前とは別人のようだな。フィアレアラ皇女殿下の歓迎パーティーでいきなり魔力勝負を申し出たあの頃が懐かしい。」


娘:「…己の魔力も分からなかった頃の黒歴史をおっしゃらないでください。」


父:「フィアレアラ皇女殿下の影響だとは思うし、実際に殿下の学校での評価は高い。だが、うちの領にいる時は、本当にいつもずっと遊んでいたと報告を受けている。」


娘:「そうですわね。フィアレアラ様でしたらいつも遊んでいましたわ。」


父:「優秀とは言え、まだ初等学校の子どもだ。ずっと遊んでいては学習に問題があってもいけないと思い、家庭教師の学習を提案したのだが、断られてしまった。夜は早く寝るから要らないと。クララ王女殿下には家庭教師をお付けしたのだが…。」


娘:「フィアレアラ様は、夕食後、本当にすぐ寝ていたみたいですわ。『睡眠学習』だとおっしゃってました。寝ている間に学習はばっちりだし、魔力も超鍛えていると。」


父:「マジか?父は寝ているだけで学習出来るなんてそんなはずないと思うが?」


娘:「私もそう思いますわ、お父様。遊び疲れて寝ているだけと思っていますわ。」


父:「父は、フィアレアラ皇女殿下はルアーフィッシングがたいそうお気に召され、早朝より毎日お一人で釣りに行っていたと聞いている。もちろん、殿下をお一人にするわけにはいかないので複数の使用人達が毎日交代で殿下を見守っていたのだが…。」


娘:「早寝早起きは遊ぶためですわね。剣術の朝練とおっしゃってましたが、振っていたのは木刀ではなく釣竿ですわね。」


父:「…。

剣術の朝練が釣りで、勉強と魔法は睡眠学習だったとは…。


もっ、もし、新学期からフィアレアラ皇女殿下の成績が悪くなってしまっても、それは父の責任ではないからな。父は学年末休みも遊びだけにならないようにちゃんと家庭教師をお付けしようとしたのだ。要らないとおっしゃったのは殿下の方だからな。重要だからもう一度言うが、殿下が要らないとおっしゃったのだ。」


娘:「…分かってますわ。お父様。二回言わなくても大丈夫ですわ。」

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