566.【番外編】六大公爵家パニック 9
【ヨバルテ公爵家 長女スイレン 5】
何故か嬉しそうなお顔でお話しになるお母様。とてもたいへんな事態ではなかったのだろうか?
「んっふふふっ。よく考えてみれば、我がヨバルテ公爵家に最大のチャンス到来だわ。今度こそ、今度こそは、負けないわ。皇帝陛下の皇女様のお相手に、弟の妻のお腹の子供が男の子ならば、婚約者候補に挙がる可能性もあるけれど、分家五星では身分が弱くて、第一配偶者になり辛いわ。おそらく、今、一歳のニッチェル公爵家の五星嫡男が配偶者の第一候補にあがり、うちは第二候補ね。そして、負けて、また候補のまま保留となり、嫡子にもなれず、婚約制限を受ける可能性が一番高い。頭が痛くなる現実だったのが大逆転よ。
スイレン、同盟国の王女殿下が留学なされたら、常に殿下のお側にいて必ずお守りするのよ。そして、ゼイデンをアピールしなさい。ふふふっ。ゼイデンの婚約は、今日にも解消するわ。ゼイデンも四歳も年下のチビっ子なんて…、って不満に思っていたし、分家の四星令嬢だってまだ初等学校二年生だからゼイデンとの婚約を解消したところでどうってことないわ。」
「えっと…、私は、お兄様の何をアピールするのですか?」
「決まってるじゃない。カッコいい素敵な兄がいるから遊びに来ないかと、王女殿下をうちにお招きするのよ。」
…。
…。
カッコよくて素敵な兄なんて私にはいませんが?
いるのは、普通のどうってことのない兄だけです。
「ゼイデンは、暫定我がヨバルテ公爵家の嫡男だけど、微妙な立ち位置なのはあなたも知っているわよね?」
「はい。」
お母様とお兄様は、ヨバルテ公爵家の自家系とは違う家系五星だ。六大公爵家には序列があるため、他家系五星が爵位を継ぐことが出来るのは最大でも二世代までと法で決まっている。お兄様はお母様の爵位を継ぐことが出来るのだが、他の公爵家との嚙み合い上、あまりいいことではない。しかも、将来的にはお兄様に授かった子供が我がヨバルテ公爵家の自家系五星でなく、お兄様やお母様と同じ他家系五星ならば、その子はヨバルテ公爵家の爵位を継げないのだ。その時には、分家筋から自家系五星の養子をお兄様の嫡子として立てなければならなくなる。
お母様の弟は、我がヨバルテ公爵家の自家系五星なのだが、今上皇帝陛下の配偶者候補に挙がってしまっていたために、法により皇帝陛下が五星の子供を得るまで、もしくは配偶者候補である叔父様が28歳の誕生日を過ぎるまで、今上陛下の配偶者候補のまま婚約と結婚が制限されてしまった。故に、叔父様が結婚したのは最近。そして、すぐに五星の子供が授かったが、生まれるのは来年だ。
「もし、もしもよ、歴史に出て来る同盟国の王女殿下のように、ザカラン国王陛下の王女様が我がヨバルテ公爵家に嫁いで下さったら、あなたの兄ゼイデンは文句なく我がヨバルテ公爵家の嫡男に就任出来るわ。
もちろん、亡きサミィレアラ第一皇女殿下のご先祖様レアラ・レリ・アール・ヤ・マティス皇女殿下ように五星男性を配偶者にお迎えになられ、壱の宮家をお継ぎになられる可能性だってあるのよ。
どっちでもいいから、是非、我が息子ゼイデンを王女様の配偶者に選らんでもらいたいわ。
ふふふっ。壱の宮家と共に王女様の後見人なんて願ってもないチャンスよ。最高だわ。」
お兄様の婚約者は、分家筋の私よりも一つ年下のまだ初等学校二年生の令嬢だ。五星は父方の家系が優性遺伝するため、弱い自家系五星の先祖返りを期待してお兄様よりも四歳も年下の自分家筋の令嬢をお母様はお兄様の婚約者に選ばざるを得なかったのだが、もし、お母様のおっしゃる通り、仮に同盟国の王女様がお兄様に降嫁して下さるならば、皇家皇族(王家王族)の皇子皇女(王子王女)の子供は他家系五星の制限から二世代まで外れるという法が適応される。つまり、お兄様、お兄様と王女様の子供(仮)、孫(仮)まで文句なく我がヨバルテ公爵家の爵位を継ぐことが出来るように変わるのだ。
「うちは、六大公爵家の中で一番皇家皇族のお方とご縁がないわ。ゴードンなんて二世代もご縁があったのに、うちは足踏みなのよ。私とゼイデンが自家系でないことでも、肩身の狭い思いをしているのに…。
だから、母は、王女様のお相手に我が息子ゼイデンを推すことに決めたわ。
スイレン、あなたは、王女様がゼイデンに心惹かれるようにしっかり兄をアピールするのよ。
王女様の留学は、来年度、中等学校一年生。三歳年上のゼイデンは高等学校一年生。学校が違ってしまうからね、あなたがしっかり兄をフォローしないといけないわ。中等学校一年生くらいの女子生徒は、カッコいい年上の男子生徒に憧れるはずだから、そこを狙うのよ。分かったわね。」
「…はい。」
はい、と返事をしたものの私が大混乱なことは言うまでもない。
「タラッタ〜、タラッタ〜、タリラリラリラリラ〜〜。我がヨバルテ公爵家にビッグチャンス到来よ。自領のお母様にさっそくご報告申し上げなければ〜〜。ララララ〜〜〜。」
…。
…。
お母様は、とても嬉しそうに踊り歌いながら出て行った…。
あの…、お母様…。
同盟国の王女殿下は、留学が終われば、自国にお戻りになられる可能性が一番高いのではないでしょうか?
もしかして、私は、お母様からとても難しいミッションを言い渡されてしまったのでしょうか?兄をアピールしようにも、王女様が心惹かれてくれるような要素が全く思い浮かびません…。
ミッション…インポッシブル。タッタラ〜タッタラ〜タッタラ〜ラ〜〜〜。




