558.【番外編】六大公爵家パニック 1
【ロクデカン公爵家】
「ガード様、お母上様のロクデカン公爵様が留守になられている連絡ならば皇城にも入っているそうなのですが、皇帝陛下からの緊急呼び出しです。嫡男は直ちに登城せよ、と。」
真っ青な顔の執事。何事かは分からないが、留守を守る嫡男として直ちに対応しなくてはならない。
ぼくは、ロクデカン公爵家五星嫡男ガード・ヤ・ロクデカン。15歳。高等学校三年生。今日は、当主である母上が自領に戻っている間、帝都の留守を任されている。
急ぎ清浄魔法で身を清める。服装は…、軍服だろうか?緊急呼び出しの場合は、基本的には軍服なのだが、有事の場合以外は平時の服装となる。
「ガード様、皇帝陛下の緊急呼び出しは、我がロクデカン公爵家のみですから、有事ではないと思われます。こちらをお召し下さい。」
「ああ、そうだな。そうしよう。」
執事のアドバイス通り平時の服装に着替えを済ませると、早馬車で登城する。謁見の間に通され、皇帝陛下に叔父の子供達のことを聞かれたのでお答えした。
なんと、同盟国の国王ザカラン陛下の子供達の留学の話があるらしいのだ。留学中の王子様王女様の保護者は、皇帝陛下のご予定らしい。さらに、壱の宮家の皇従姉皇女フィアレアラ・マティス殿下と同盟国の国王C・ザカラン・F・マ・アール陛下とのご関係を問われ、正直にお答えする。皇帝陛下に嘘偽りを申し上げることは出来ない。
下がれと言われて、謁見の間を退出する。
怖かった…。
本当に怖かった…。
皇帝陛下は、女性なのだが、とても大柄なお方だ。そして、その威圧感のある鋭い眼差しで見つめられると怖くてたまらない。
念のため、皇城のロクデカン公爵家専用控室で待機する。当主である母上がお帰りになられたら、おそらく登城なさるだろう。母上からの連絡があるまでは、帰宅せず、ここにいるのが正しいと思われる。
しばらく待っていたら、自領にいる母上から連絡が入った。壱の宮家の皇従姉皇女フィアレアラ・マティス殿下に皇城に送っていただく予定だと。ぼくは、このままここで待機するように言われた。
よし、皇城で待機するべきだというぼくの判断は正しかった。ぼくは、今年、高等学校を卒業すれば、来年度から次期ロクデカン公爵として母上をお支えし、当主となる準備をしなくてはならない立場にいる。母上をがっかりさせるような行動をとることは出来ない。
母上が自領からお戻りになられたので、今日のことを報告する。母上は、ロクデカン公爵家五星嫡男として、知るべきことがあると、他言無用で今回皇帝陛下に呼ばれた本当の意味をお話し下さった。
とても信じられない事実だったが、やはりといえば、やはりだった。
『甥』のぼくが保証する。叔母上様スーラ側妃殿下は、ザカラン国王陛下の五星の御子様を間違いなくご懐妊なされていた。ぼくはご懐妊中の叔母上様に何度かお会いし、叔母上様のお腹の五星の御子様の魔力を感じたことがある。叔母上様のお腹の御子様はとても強い魔力を持っていた。流石、世界一の魔力量を誇る家系五星の御子様だと、まだ胎児なのにとても強いと、その時にぼくはそう思ったのだ。
そして、叔母上様が五星の御子様を産んだことも間違いない。ぼくのお祖父様とお祖母様方は、ご出産時に同盟国に行かれていたのだ。お祖父様とお祖母様方は、叔母上様が、ザカラン国王陛下によく似た五星王女様を無事にご出産なされたとお喜びになられていた。母親の叔母上様に全く似ていないあのお方にうり二つの五星の御子様を『父親にそっくりの王女様』だと、そうおっしゃっていた。
ぼくの従妹殿、ザカラン国王陛下の第二王女ラリーレアラ様は、叔母上様スーラ側妃殿下に全く似ていない。従妹殿は、我が帝国の壱の宮家の皇従姉皇女フィアレアラ・マティス殿下にうり二つなのだ。
だが、従妹殿ラリーレアラ第二王女様は、間違いなく叔母上様スーラ側妃殿下がお産みになられたザカラン国王陛下の五星御子様だ。
両親が女性なんてどういうことなのだろうかと思ってはいたが、まさか、ご自身の御身体に呪詛をかけ、男性のお姿になられていたとは…。流石、伝説の末子皇女殿下を前々世に、100年少し前に世界を従えていたという同盟国の王女殿下を前世に持つお方だ。常識では考えられないお力をお持ちだ。まぁ、殿下は叔母上様といとこ殿ラリーレアラ第二王女様を同盟国から転移魔法で一瞬でお連れになられるのだから、一般的に当てはめることの方が間違いなのだ。
…つまり、ザカラン国王陛下の王子様王女様は、我が帝国の皇子様皇女様と思わなくてはならないということだ。皇帝陛下を始めとする皇家の方々は、ザカラン国王陛下のご正体をご存知なのだ。そして、弍の宮家は、第一皇子様の御命をフィアレアラ皇女殿下にお救いいただいた御恩があるらしい。故に、今、12歳の第二皇子殿下には、必ず同盟国の王女殿下をお守りするように言われるだろう。弍の宮家の第二皇子殿下は、参の宮家の四星皇女殿下と婚姻し、参の宮家をお継ぎになられることが決まっている。つまり、ザカラン国王陛下の御子様を傷つける者は、我が帝国の皇家皇族を敵に回すことになる。
恐ろしい。
とても恐ろしいことではないか。
知らなかったでは済まされない。
我がロクデカン公爵家も御子様を家名にかけてお守りしなくてはならない。皇帝陛下がご心配なされていたが、自国愛の強い我が帝国で留学中の同盟国の王子様王女様が万一にも淋しい学校生活を送るようなことは、学校教育を担当する我がロクデカン公爵家として全力で避けなければならない。
ならば、ぼくのしなくてはならないことはただ一つ。明日、いや、今すぐにでもリリーレアラ第一王女様の学年の上位貴族子息令嬢全員に王女様をお守りするように圧力をかけることだ。




