554.【番外編】皇帝セラティー・ヤ・マティス 10
父上は、フィアレアラいとこ姉上様の時のことを考えれば、留学費用を同盟国に出させるなんてそんなケチくさい恥ずかしいことは出来ないとおっしゃいました。むしろ我が帝国の名誉にかけて同盟国の王家がフィアレアラいとこ姉上様にしていただいた以上のおもてなしをすべきである、と。
ここでさらに私の完璧な作戦を父上に説明致します。あの短い時間でよく思い付いたと我ながら自画自賛の作戦です。
「父上、私は、必ず同盟国の王子様王女様全員が我が帝国に来ていただけるように、留学中の同盟国の王子様王女様の魔法の先生に壱の宮家を指名するつもりなのです。
名付けて『フィアレアラいとこ姉上様と同盟国の王子様王女様全員を我が帝国に引き入れ、我が帝国は同盟国の『父の国』だと認識させるための壱の宮家利用』作戦ですわ。」
「…。(無駄に長い作戦名だな…。壊滅的にネーミングセンスがないが分かりやすいと言えば分かりやすいからまあよいわ。黙っておくか…。)」
ふふふっ。父上が驚いたようなお顔をして、絶句しています。おそらく作戦名だけでは意味が分からないのでしょう。ここからは父上を納得させる私の独壇場です。
「父上、ご存知のように壱の宮家の皇子エリック義伯父上様は娘のフィアレアラいとこ姉上様を溺愛しています。なのにいとこ姉上様は、同盟国から帰って来ません。孫にも会わせてもらえません。淋しい想いをなされているはずです。」
「うむ。それは我等も同じ気持ちだ。我が姪皇女フィアレアラは子供たちを我等に会わせてくれないからな。床にある父上も何度も子供たちを我が帝国に連れて来るように言ってはいるのだが、フィアレアラに冷たく出来ないと言われ、ずっと断られているのだ。しかも、忙しいからとめったに会いにも来ぬ。我等は淋しい想いをしている。」
やはり。私の思った通り、忙しいフィアレアラいとこ姉上様の塩対応にみんな淋しい想いのようです。
「そこで、同盟国の王子様王女様の留学時の魔法の先生に壱の宮家を指名すれば、孫の魔法の先生になれるのですから、エリック義伯父上様は、同盟国の王子様王女様の留学をお喜びになられ、是非にと望まれるはずです。」
「うむ。エリック義兄上は上の孫だけでなく下の孫達の留学をも望まれ、魔法の先生を断らないはずだということか。」
「はい、その通りです、父上。壱の宮家、つまり、留学中のザカラン国王陛下の子供が王女様ならばフィアレアラいとこ姉上様、王子様ならばエリック義伯父上様が魔法の先生となります。
故に、エリック義伯父上様は、一番上の第一王女様だけでなく、下の王子様達の留学をもご希望なされるはずなのです。エリック義伯父上様にそうお願いされては、フィアレアラいとこ姉上様は下の王子様たちの留学を考えるはずです。両国の交流をさらに深めるために。
そして、仮に下の王子様たちの留学をも決まるとします。
エリック義伯父上様は年齢が高く、弐の宮家のジルコフ皇子の方が適任という声も上がるかもしれませんが、弐の宮家は、帝国国外代表五星の仕事があります。フィアレアラいとこ姉上様が同盟国に留学していた時、いとこ姉上様の魔法の先生は、クノハ前々国王陛下だったとお聞きしていますので、我が帝国と致しましても、同盟国の王子様王女様が留学なさるのであれば、皇家皇族から魔法の先生を選び、年齢の高さはクノハ前々国王陛下も同じで問題ないと言うのですわ。公には出来ませんが実の祖父ですから、事情を知る弐の宮家は文句を言わないはずです。
そもそも、ザカラン国王陛下の王子様王女様と壱の宮家を交流させる作戦ですから弐の宮家に割って入られては台無しです。
ですが、エリック義伯父上様は、年齢的にも技術的にも王子様の魔法の先生の技量が足りないこともまた事実ですから、フィアレアラいとこ姉上様は我が帝国に居て義伯父上様のサポートせざるを得なくなります。フィアレアラいとこ姉上様はそんな時間は取れないと魔法の先生をお断りになられる可能性もあるのですが、それもちゃんと対策があります。
留学中はどうせ誰かに魔法の先生を頼まなくてはならないのです。魔法の先生の技量が足りないのは弐の宮家も同じ。さらに、公上は、留学期間中の同盟国の王子様王女様の保護者は皇帝である私で、壱の宮家は父方の実家ではありませんから、王子様王女様の生活費、学費等全て皇家が支払います。つまり、王女様王子様の魔法の先生の給金も皇家から壱の宮家に支払われるのです。フィアレアラいとこ姉上様にそうご説明すれば、壱の宮家が魔法の先生になることは悪くない話と納得され、お忙しいフィアレアラいとこ姉上様とて子供たちのためになんとか時間を作ってご指導なさるはずなのです。」
「うむ。なるほど。」
ふふふっ。私の作戦は、これだけではありませんよ、父上。さらに凄い作戦を父上に説明致します。




