537.【番外編】末子であることは厳しいけれど
ぼくは、前ウェスターナル公爵メアリー・マ・ウェスターナルの長男サダドック・レリ・ウェスターナル。
長男だが、第二子で四星の、嫡男にはなれない末子長男だ。ぼくには姉がいるから。姉上は、ウェスターナル公爵家新当主メリッサ・マ・ウェスターナル。MR五星。
ぼくは、高等学校を卒業後、分家として独立し、自領を守っている。
ぼくは元々分家で、ずっと自領にいた。それが本家を継いだ伯父と従兄の失脚でぼくの母上と姉上が本家を継ぐことになった。
ぼくの一家は王都に上った。本家ウェスターナル公爵家の令息となったおかげで、ぼくは、王族王女様のカルア王女様と婚約し、分家当主として独立出来た。
ぼくは、『嫡男』にはなれない分家の長男で、独立すれば姓を失う平民となるのだと思っていたのに、とても幸運だったと思っている。
だが…。
末子として生まれたばかり息子を抱き上げる。
上のきょうだいのいるこの子は、『嫡男』にはなれない。分家を継げる子はたった一人だから。末子のこの子は独立すれば『分家ウェスターナルの姓』を失う。かつてぼくがそうだったように、この子も自分は準貴族から平民に降格となるのだとそう思って生きなくてはいけないのだ。
「また男の子でしたわね。女の子ならば結婚相手に困らないのに…。」
ぼくらの第一子は女の子だ。生まれて一年も経たないうちから既に婚約話が出始めた。そして、長女が生まれて三年後、第二子となる男の子が生まれた時には、長男の誕生祝いついでに長女との婚約を申し出る話が殺到した。どっちがついでなのかと思うほどに。
「ああ…。分家を継げない四星男の辛いところだ。仕方ないよ。そんな四星男はたくさんいるからね。ならば…、そうだね…。」
妻と二人、早くも生まれたばかり息子の将来を考える。なんとかならないものかと。そして、すぐ結論に行き着く。
「誰もが一目を置く超優秀な男に育てあげるしかないな。」
「ええ。それしかないですわね。ふふっ。残念ながら、この子は、きょうだいで一番努力しないといけない未来が待ってますわね。ふふっ。でも、大丈夫ですわ。上のお姉ちゃん、お兄ちゃん達がこの子を助けてくれますから。きっと。」
「ああ。ぼく達の子ども達は、みんないい子だから。
そうだ、この子の名前を決めたよ。『アカドック』だ。己の力で明【アカ】るい未来を切り開く事の出来る強い男になれるようにとの願いを込めた名前だ。ぼくの愛するカルア王女様の息子だという意味もあるけれどね。」
「まぁ。ふふっ。父上に良い名を付けて頂いたわね、『アカドック』。」
ぼくは、第二子の長男だが、この子は、第四子の三男だ。この子の未来はぼくよりもずっと厳しい。
「君の身体の具合はどうだい?四人目の子を産んだ後なのだから、ゆっくり休んで欲しい。」
「ええ、ありがとう。子ども達が私を手伝ってくれるから大丈夫よ。まさか、四人も子宝が授かるなんて思わなかったけれど、いい子達に恵まれて幸せよ、私。ふふっ。アカドックは、父親のあなたにそっくりのイケメンね。とても可愛いわ。」
ぼくの妻、カルア王女様が優しい笑顔でぼくの抱く生まれたばかりのぼくらの息子アカドックを見ている。ぼくもまさか四人も子宝に恵まれるなんて思わなかったが、とても幸せだ。
ぼくとカルア王女様は、昔、帝国から留学生していた皇族フィアレアラ・マティス皇女殿下に結んでいただいた『縁』がある。
もし、彼女が我が王国に留学していなければ、カルア王女様は、父親に殺められていたらしい。ぼくが幼い頃聞いたあの事件の被害者だったのだ。我が王国の未来も閉ざされていた。カルア王女様は、何も知らずに育った。そして、クノハ陛下とクノン陛下、フィアレアラ皇女殿下によって父親を陥れられたと思い込み、愚行を犯したと言っていた。いくら知らなかったとはいえ、恥じ入るばかりだと。
ぼくが初めてそのことを聞いた時、カルア王女様に同情した。ぼくの一家と同じだと。ぼくの一家もフィアレアラ・マティス皇女殿下を誤解し、国家に対する間違いを犯した。そしてそれを許していただいた。だからこそ、ぼくらは、これからの未来を、我が王国を守るために一生懸命生きることを誓ったのだ。
母上の後を継ぎ、新ウェスターナル公爵となった実姉メリッサを支え、我がウェスターナル公爵領の領民をぼくは守る。ぼくの愛する妻と子ども達と一緒に。




