534.【番外編】楽したいのに 3
「ウェスターナル公爵。」
仕事が終わり、王宮のウェスターナル公爵家専用控室を退出した時でした。廊下を歩くクノン称第一王妃陛下に呼び止められました。
「はい、クノン称第一王妃陛下。いかがなさいましたか?」
慌てて、膝をつき、頭を下げ返事をします。王家のお方が四大公爵家の専用控室に来ることはめったにないことです。こちらが呼び出されてそこに行くのが当たり前だからです。しかもまた先触れさえもないなんて一体どういうことなのでしょうか?
「膝なんて付かなくていいですわ。つい先程、とっても嬉しい知らせが届いたので、慌ててすぐここに来たのです。喜びあいたいと思ったのだけど、あなたのところにはまたまだ連絡が入ってないみたいね。ふふっ。ならば私の口から言うのは駄目ね。ふふっ。今回も秘密にしておくわね。ふふっ。」
何故かとても嬉しそうにそうおっしゃって、クノン称第一王妃陛下はさって行きました。
どこかで見たことある光景なのねん、デジャブ〜〜〜〜。
いえ、デジャブではありませんでした。現実です。二週間前に全く同じことがありました。しかしながら、あの時は、何のことか、何となく、何となく、もしかして…、と思ったことがありましたが、今回は全く意味不明なのです。
『あの嬉しそうなお顔は、一体なんなのかしら?いい知らせなことは間違いないとは思うけれど、今回は、全く分からないわね…。まぁ、でも、おそらくメリッサ夫婦のことだと思われるわね。今年末に王都に戻って来るメリッサ夫婦になんらかの名誉な称号でもいただけるのかしら?もしそうならばいいことね。』
前回のような満面の笑顔ではありませんが、クノン称第一王妃陛下のあの笑顔から良い知らせなことは間違いはないはず、とそう思い、私も笑顔で帰路につきました。
「おかえりなさい、メアリー様。いい知らせが自領から届きましたよ。びっくりビッグニュースです。」
玄関で私の帰りを待っていた夫が、満面の笑みでそう言って出迎えてくれました。
どこかで見たことある光景なのねん、デジャブ〜〜〜〜。
いえ、デジャブではありません。現実です。夫までが、二週間前と全く同じことを言ったのです。
「うふふふっ。仕事の帰り際にクノン称第一王妃陛下が私のところにいらして、嬉しそうに良い知らせだとおっしゃっていたわ。前回は孫だと分かったけどね、今回は、私、そのいい知らせが何のか分からないのよ。あなたまでが笑顔でそう言うなんて、いったい何なのかしら?早く知りたいわ。」
「あははっ、陛下がですか?実は、今回も孫なのですよ。何と、私達にまた一人孫が増えるのです。少し前に自領の義母上様からそのように連絡が入りました。王宮のメアリー様にすぐに連絡しようとしたのですが、今回も義母上様が初子ではないので、わざわざ王宮に連絡を入れなくても帰宅してからでいいとそうおっしゃいました。なので、ここでメアリー様のお帰りをお待ちしていたのです。なんと、メリッサのところと二週間違いでサダドックのところにも二人目が授かったらしいのです。」
「へっ???」
「まさか、こんなに良い知らせが二人続けて入るなんて驚きですね。クノン称第一王妃陛下も超驚かれたのでメアリー様のところにお知らせに行かれたのかと思われますね。カルア王女様は、陛下の王子様であられるソウル王子様の異母妹王女様ですから。」
「えぇ〜〜えぇ〜〜。えぇ〜〜えぇ〜〜〜。」
「あははっ。メアリー様がそんなに驚かれるとは、こちらが驚きました。確かに二週間違いで孫二人なんて驚きですが、サダドックのところならばそろそろ二人目が授かってもおかしくはない頃です。それよりも私は前回のメリッサのところの三人目の孫が出来たことの方が驚きでした。まさか、五星女性に三人目が授かるなんて聞いた事がありませんでしたから。」
「それは、本当なの?間違いない事なの?」
「あははっ。どっちも間違いない事で間違いありませんよ。ですが、万が一の事態に備えて発表するのは安定期に入ってから、二人同時がいいと義母上様がおっしゃってます。その事でメアリー様にご相談したいとメリッサも言ってました。今年末のメリッサの当主就任披露パーティー中止のことです。臨月に当主になるのは流石に厳しいですからね。クノン称第一王妃陛下も中止はやむを得ないがいつ頃発表すべきか迷っておられます。五星女性が三人目を授かるなんてめったにないことなので妊娠の発表は慎重にすべきだとおっしゃって。とはいえ、メリッサが今年末に当主となることは既に国民発表となってますので、当主就任を延期するならば、早くそう発表しなくてはいけません。延期期間のこともありますし。一応、陛下は、三年後のソメドックの中等学校入学に就任披露パーティーを合わせたらどうかとおっしゃっているそうです。」
「ええ、分かったわ。我がウェスターナルのことだけど、陛下のご意見に従うのが妥当よ。陛下のおっしゃることに間違いなんてないのだから。」
「やはりそうですよね。では、我がウェスターナル公爵家は陛下のご意見に従うとメリッサに言っておきます。
ああ、それと、メアリー様、陛下は三人目の妊娠を心配なされてよく領に連絡を入れてくれるそうですよ。ザカラン国王陛下とお二人揃ってわざわざ領に会いにも来て頂いたと言ってました。なのにメアリー様からは何の連絡もない、とメリッサが…。
メアリー様、話し合いは次のお休みでよいとは思いますが、その前にメリッサに連絡していただけませんか?お忙しいとは分かってますし、メアリー様も孫が増えることをお喜びになられているとはメリッサに伝えてはいるのですが、全く連絡がないなんてと気にしてますから。」
「ええ。分かったわ。」
「はい。メアリー様。では、よろしくお願いいたします。」
「ええ。」
あまりの驚きに思考が追いつかず、頭がクラクラしてきました。




