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533.【番外編】楽したいのに 2

四人目の孫が授かった連絡のことだけでなく、漸く、爵位を娘に譲れることも、とても嬉しく思います。長かった。本当に長かった。第二子として生まれ、父の爵位なんて継ぐことはない、分家ウェスターナルとして自領をのんびり守ればいいと安易に過ごしていた少女時代を思い出します。あの頃はよかった、と。


はぁああ〜〜、と大きなため息が出ました。


異母兄と甥っ子の失脚により、急遽本家ウェスターナルを継ぐことになった我が人生。少女時代に怠けていたことを激しく後悔し、四大公爵家西のウェスターナルの面子にかけ、父、異母兄以上の公爵にならなくてはと、必死に仕事を覚え、毎日がとても忙しく、少しも気が抜けない日々を過ごすこととなりました。


はぁああ〜〜、とまた大きなため息が出ました。


今更思えば、何故、あの甥っ子の低落ぶりに気付かなかったのかと反省するばかりです。甥っ子は、幼少期から異母兄に甘やかされて育った愚者でした。公爵家の嫡男でありながら、自領視察に行くことを嫌がり、毎日ダラダラと遊んでばかりいたことを異母兄だけでなく、私もお父様も黙認していました。そのうち公爵家の嫡男であることを自覚し、真面目になるだろう、自領にはメリッサがいるのだから、まぁ、いいだろう、と。


甥っ子の愚かな行動を誰一人として注意しなかった結果、甥っ子はとんでもない愚者に成長してしまったのです。異母兄も甥っ子も謹慎し、生きる屍のように10年間静かに暮らしていました。父が亡くなったのをきっかけにザカラン国王陛下に恩赦を願い出、漸く、異母兄と甥っ子の謹慎を解くことが出来ました。今は、二人とも真面目に国境ナルカラカン砦を守っています。


我がウェスターナル公爵家系の男性は、昔からやんちゃ者が多いことは知っていました。分家筋にも問題を起こす者が時々いますが、それでも大抵、成人年齢前には我がウェスターナル公爵領を守る者として自覚し、真面目に任された仕事に就くのです。もしそれが分からない愚者ならば分家を継げなくなるのですから当然です。分家を継ぐ嫡子となれるのはたった一人で、もし嫡子となれない時には、姓を失うのですから、皆、嫡子競争に勝つために必死になるのです。


以前、フィオナ王女殿下と雑談した時、フィオナ王女殿下の時代の我がウェスターナルのことをお聞きしました。我がウェスターナルは、100年以上前からやんちゃ者のいる家系だったのです。やっぱりそうだった…、と思いました。


はぁ~、と何度もため息が出ます。


実際、私も子ども時代に必死に努力したか、と聞かれれば、答えは、『NO』です。生まれた時から二番手の私は、持って生まれた才能だけで適当に生きてきました。必死に努力なんてしなくても勉強も運動も魔法もよく出来ました。こんな簡単なことを努力するなんて馬鹿らしい、パーティー等、友人達と遊ぶことの方がが楽しいと思っていたのです。所詮私は二番手なのだから、と。


まぁ、とはいえ、友人達の羨望を得るための一定の努力はしました。そこは、公爵家の五星令嬢としてのプライドです。いい成績を取れば、友人達は、『流石、私達のメアリー様ですわ』と褒めてくれるのです。運動も、魔法も、お洒落もこれまた然り。私のした努力は友人達の上に立つためと公爵令嬢としてのプライドのため言われてしまえばそうでした。


私は女性なのでこの程度ですが、もし私が男性でしたら、やんちゃ者だったかも知れない、危ないところでした。今も忙しい公爵の仕事なんてさっさと娘メリッサに譲りたいと思っています。どうやら楽して過ごしたいと思うのはウェスターナルの遺伝かも知れません。


しかしながら、我が娘メリッサは、夫に似て超真面目な努力家です。ああ、あの子が私に似なくてよかった。あの子は、我がウェスターナル公爵家が誇る立派な当主となることは間違いありません。私なんかよりもずっと適任なのです。早く、早く、あと少し、あと少しとあの子に爵位を譲る日を私は心待ちにしているのです。あの子に爵位を譲るカウントダウンが漸く始まった、と。

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