528.【番外編】再びあなたの息子として 5
「ソウル。」
今世の母上がぼくを呼んだ。今世のぼくの名前を。
「母上…。ぼくは、生まれ変わってもまた母上にご心配をおかけしました。申し訳ありません。」
「ふふっ。前世のヴィアランの方がよっぽど心配させられましたわ。ソウルのことはよくできた優秀な息子だと思ってます。」
「ヴィアランは、自由奔放な末子王子でした。申し訳ありません。」
「あらまぁ。ふふっ。ならば、レリーリアラも四星王子として生まれたヴィアランの気持ちを理解してあげれなかったダメな母親でしたわ。ソウルの母親になって漸く気付くなんて。」
「母上…。」
ダメな息子だったのは、ぼくの方だ。ぼくは、王子として生まれたくせに、国になんの貢献もしないままの一生を終えた。
もし生まれ変わったならば、今度は国に役立つ男になろう。四星王子なんて何の役にも立たないと逃げ出すのではなく、カレン異母姉上やマレン異母姉上、娘のレアラが医師として国民の健康を守ったように、ぼくも医師になって国を守ることに貢献出来たらいいなぁ…、なんて思ったことを思い出した。
はははっ。医師となることを決めた時、前世の記憶は全くなかったけれど、ぼくは、前世の希望通り医師になったんだと、心救われる気持ちになった。
「メリッサが心配してあなたを待っているわ。早く行って安心させてあげなさい。朝食後は、ウェスターナル公爵家専用の控室にいるはずよ。メリッサの母親のウェスターナル公爵と一緒に。」
「はい、母上。」
お礼を言って会議室を出る。
あははっ。あははっ。
嬉しい笑いが込み上げてくる。
ぼくは…。
帝国からフィアレアラ・マティス皇女殿下が留学した時からずっと彼女に母上を取られたような気持ちを持っていた。
第一王子のくせに役に立たない四星だと父上に疎まれていたぼくには母上しかいなかった。なのに、その大切な母上を彼女はぼくから奪ったと思っていた。
長い間、孤独、淋しさ、疎外感を抱えたままだった。
なんだ、なんだ、な〜んだ。
あのお二人は、フィオナ父母上とレリーリアラ母上じゃないか。
ははははっ。あはははっ。
ならば、今世でも母上がフィオナ父母上にぞっこんなのは当たり前だ。そして、フィオナ父母上も母上にべた惚れなのは避けれないことだ。
ぼくの父上と母上なのだから。
疎外感なんて感じる必要なんてなかった。むしろ父母上が母上のところに帰って来てくれたなんてこんなに嬉しくて心強いことはない。
帝国の皇女殿下でありながら、父母上は、母上とクレア異母姉上の守る我が王国に戻ると決断してくれたのだから。
前世の記憶を取り戻し、スッキリとした気持ちになった反面、ぼくは、もっと息子ソメドックの気持ちを分かってやるべきだったと反省した。ぼくがフィアレアラ皇女様に大切な母上を取られたと思ってしまったように、ソメドックも赤ちゃんに大切な母上を取られてしまうと思ったのだろう。ぼくは、父親としてソメドックの寂しい気持ちを理解してやるべきだった。腹を立て息子を殴るなんてしてはいけないことなのにぼくはまだまだ未熟な父親だ。
早く帰ろう、我がウェスターナル公爵領に。妻と二人、まだ幼い息子の側にいて、ちゃんと息子に伝えたい。お前の両親は、お前を愛している。『ソメドック』とは、『ソウル』と『メリッサ』の息子だと意味で名付けた。お前は、可愛くて、愛しい大切なぼくたちの息子だと。もう二度と息子が淋しい思いをすることがないように。
ぼくを待つ妻の元に急ぐ。
早く会いたい、ぼくの愛する妻と息子に。




