526.【番外編】再びあなたの息子として 3
「もういい。諦めた。ヴィアラン、この映像を見るがいい。」
父上がそう言った途端、目の前に映像が再生し始めた。
映りだされたのは、黒焦げ血だらけで倒れている男だ。右半身が焼け焦げ、右腕もない。顔も真っ黒に焼かれている。
「ソウル様、ソウル様、ソウル様〜〜。ソウル様、ソウル様〜〜〜。」
お腹の大きな若い女性が、男の側で泣き崩れながらも必死で名前を呼んでいる。
ああ、この焼け死んでいる男が「ソウル」で、女性は男の妻なのだろう。女性は、黒焦げの、おそらくこの男の腕を大事そうに抱いている。
「うああ〜ん。父上、父上。うわああ〜ん。うわああ〜ん。」
女性の側で幼い男の子が大泣きしていた。
「ソウル、ソウル、ソウル〜〜。」
あっ、黒焦げの男にいきなり駆け寄ってきた女性は、ぼくとフェリオ父上、フィオナ父母上と一緒にいるこの女性だ。
「ザカラン、ソウルを、ソウルを早く助けて。ソウル〜〜。」
映像の視点が、この女性のアップになった。
「ああ、これは酷いな。ぼくよりもエリザベートに任せた方がよさそうだ。『エリザベート』。」
『【いいわよ、ザカラン。私に任せなさい。】』
エリザベスお祖母様だ。エリザベスお祖母様が出て来たということは…、父上か、父母上がそこにいるということだ。つまり、この映像記録魔法を撮っているのが父上か父母上だ。
ならば…。
この映像に名前と声しか出てこない「ザカラン」という名前の男が父上か父母上ということになってしまう。
何故だ?
映像はどんどん進む。
「ザカラン、ソウルの黒焦げの服が邪魔だわ。」
「ああ、分かった。」
男の服がパッと消えた。パンツだけは履いたままだったが…。
「メリッサ、ソウルの腕をザカランに。」
「はい、エリザベス王太后陛下。」
お腹の大きな女性が大事そうに持っていた黒焦げの腕が『ザカラン』に渡されたようだ。映っているのは黒焦げの腕だけ。つまり、やはりこの映像を撮っているのは『ザカラン』という名前の男で、これは彼が見ている像で間違いない。
と、映像が真っ黒になった。しばらく真っ黒で何も映ってない。
「治したよ、エリザベート。」
黒焦げの腕が綺麗な腕になっている。凄い。こんなことが出来るのは父母上で間違いないはずなのに、『ザカラン』だなんてどういうことだろう?
『【ならばくっつけるわね。早い方がいいから。】』
エリザベスお祖母様が黒焦げの男の腕を受け取った。って、あれ?男の身体の黒焦げがほとんど治っているではないか。凄い。流石、エリザベスお祖母様。
エリザベスお祖母様は、腕を男の身体にくっつけた。そして、黒焦げ男はさらに治りだし、綺麗な身体になっていく。青黒い男の顔がだんだん赤みを差していく。
…知ってる?
ぼくは、この男の顔を知っている???
この男は?
この男は、
この男は、
…ぼく、だ。
ああ…。
ああ、思い出した。
今のぼくは、『ヴィアラン』ではなかった。
ぼくの名前は、『ソウル・レリ・アール・マ・ウェスターナル』。あのお腹の大きな女性は、ぼくの妻メリッサだ。メリッサと息子のソメドックだ。
ぼくは…、
ぼくは、息子のソメドックの攻撃魔法で腕を吹っ飛ばされたのだった。幼いとはいえ息子は五星。五星の攻撃魔法は、四星のぼくでは防げなかった。
ああ…。
全部思い出した。
ぼくは、嫌がる幼い息子ソメドックを無理矢理自領視察回りに連れて行こうとした。息子は、母親と一緒にいたいとワガママを言った。
ぼくは、母親のお腹には赤ちゃんがいるから視察回りには行けない。『お兄ちゃん』になるクセにワガママを言ってはいけないと息子を叱ったのだ。
息子は、『赤ちゃんなんて要らない。赤ちゃんなんていなくなればいい。お兄ちゃんになんかなりたくない。』と、そう言ったのだ。
怒ったぼくは、思わず息子を殴ってしまった。なんてことを言うのだ、母上とお腹の赤ちゃんに謝罪しろと。息子は、イヤだ、イヤだと泣き叫んだ。そして、自領視察なんて父上一人で行けと言ったのだ。
ぼくは再び息子を殴った。ウェスターナルの嫡男ともあろう者がそんなことを言ってはいけないと叱りつけた。そして、大泣きの息子の手を掴み、出発の時間だと自領視察に無理矢理連れて行こうとしたところで、息子の攻撃魔法にあい、腕を吹っ飛ばされ、黒焦げになったのだ。




