522.【番外編】娘の秘密 2
ぼくは、泣くフィーちゃんの腕を掴もうとしたその時だった。
「父上、私の部屋に何のご用なのですか?」
振り返って見ると、フィーちゃんがぼくの後ろに立っていた。
「へっ?あれ?フィーちゃん???
ならば、その女の子は、フィーちゃんの幻影なのかい?
はぁ~。
フィーちゃん、幼女の幻影なんて悪趣味だよ。ふざけてないで、幼女の幻影はさっさと消しなさい。」
「その子は幻影ではありません。本物の子供です。」
は?何を言ってるんだ、フィーちゃんは?
どこからどう見てもこの子は、幼い頃のフィーちゃんそのものだ。我が帝国の皇家皇族家系五星の魔力まで感じるのに、フィーちゃんでないはずがない。
「うわああ〜ん。うわああ〜ん。」
フィーちゃんにそっくりのこの子供は、ずっと泣いたままだ。
「ごめんね、スーラ。ラリーレアラ。
エメロラ、申し訳ないけれど、二人を別の部屋に連れて行ってくれないかしら?」
フィーちゃんは、困った顔をしてそう言った。
へっ?
ラリーレアラ???
ラリーレアラといえば、同盟国に嫁いだフィーちゃんとエメロラの同級生だったあのロクデカン公爵家の令嬢が産んだ五星王女様の名前ではないか。どういうことだ?
同盟国の国王ザカラン陛下には四人の妃達と五人の子供達がいる。
第一特別称第一王妃陛下に四星第一王女様。
第二王妃陛下に五星第一王子様と末子五星第三王子様。
第二特別妃殿下に五星第二王子様。
そしてご側妃殿下になられたフィーちゃん達の同級生ロクデカン公爵家の令嬢に五星第二王女ラリーレアラ様だ。
ぼくは、どうもこのザカラン国王陛下が気になっていた。彼は、ぼくのフィーちゃんと同い年で、しかも『アラン』なのだ。
さらに、子ども達の名前も王子様は『アラン』で、王女様は『レアラ』。
『アラン』、『レアラ』は、ぼくの妻『サミィレアラ』皇女様の祖であられる我が帝国の大皇帝第50代エリザベート・F・ヤ・マティス陛下の養女皇女『レアラ・レリ・アール・ヤ・マティス』殿下の御守り刀を受け継ぐ子孫である証のお名前だ。
父親が『ザカラン』というお名前だから、たまたま『アラン』、『レアラ』なのだとは思うが、なんだかモヤモヤしていた。
「承知致しました、フィアレアラ様。
スーラ様、ラリーレアラ第二王女様、こちらにどうぞ。」
エメロラもフィーちゃんにそっくりのその女の子を『ラリーレアラ第二王女様』と呼んだ。ならば、同盟国に嫁いだロクデカン公爵家の令嬢が抱いていた幼女は本当に彼女の産んだ五星王女様である『ラリーレアラ第二王女様』なのだ。
ぼくはフィーちゃんに詰め寄った。
「フィーちゃん、何故同盟国の王女様がフィーちゃんにそっくりなんだ?あの王女様は、どう見てもフィーちゃんの小さい頃そのものじゃないか。」
「私の子供なのです。子が親にそっくりなのは仕方ないではありませんか。避けれません。」
ぼくは初めてフィーちゃんの秘密を知った。フィーちゃんが同盟国のザカラン国王陛下だったからなのだ。
ぼくには、なんと、孫が五人もいたのだ。フィーちゃんにそっくりのあの王女様は、ぼくの孫娘だったのだ。
疑問に思っていた謎は全て解けた。モヤモヤしていたことが全部分かってスッキリした。色々言いたいことはあるのだが、今更言っても無駄だ。何も変わらない。ならばぼくの希望は、たった一つ。孫達に会いたい。
「ダメに決まってるではありませんか。私は、子供達にザカランの正体は帝国壱の宮家の皇女フィアレアラ・マティスだと打ち明けるつもりはないのです。」
「そんな〜。ぼくの孫たちなのに、会わせてくれないなんて酷いよ。」
「ザカランの子供達です。フィアレアラの子供達ではありません。なので父上の孫はいません。」
「だったら、だったら、エメロラに、フィーちゃんの子供を産んでもらったらいい。ならば、ぼくの孫だ。我が壱の宮家の孫となるじゃないか。」
「それも出来ません。エメロラには、最初からエメロラとの間に子を成すつもりはないと言ってます。エメロラはそれを承知の上で私の配偶者になってくれました。
父上、よく考えてください。ザカランには妃が四人もいて、子供が五人。そのうち四人が五星です。親の年齢が若いほど、そして上の子供ほど高いMRで強い魔力を持つ子が生まれ易いことは周知の事実です。
私はもう三十路前です。さらに六番目の子供ならばほぼ四星となるでしょう。皇族宮家は五星でないと継げません。皇女ならば四星でもいいのですが、四星皇子が産まれたら悲しいだけです。」
「うっ…。うぅ~。そっ、それは…。」
確かに一理ある。第一子ならば誰かと被らない限り、ほぼ五星の子供が生まれてくる。逆に被ってもないのに四星だったら不自然なくらいだ。
だが、たとえ四星だったとしてもフィーちゃんそっくりの子供だったらまだいいが、もしエメロラにそっくりの四星の子供が生まれてきたら困るとは思う。被ってもない第一子が四星で、しかもフィーちゃん似でなく配偶者似なんて誰の子供なのか、と。
「ラリーレアラは、母親が帝国ロクデカン公爵家の令嬢だから帝国に連れて帰っているのです。従妹殿皇帝陛下の許可ならば得てます。今日は、ロクデカン公爵領にいるスーラの両親のところに遊びに行く予定です。ラリーレアラにとっては祖父母のところですから。」
「だったら、ぼくも一緒に連れて行ってよ。ぼくだってラリーレアラ第二王女様のおじいちゃんじゃないか。」
フィーちゃんは条件付きでぼくを一緒にロクデカン公爵領に連れて行ってくれた。




