519.【番外編】スーラ・ヤ・ロクデカン様というお方は… 1
私は、皇族壱の宮家の皇姪皇女フィアレアラ・マティス殿下の婚約者エメロラ・ヤ・エフゲニ。MR四星。
私がフィアレアラ様の婚約者になれたのは、私が元エフゲニ伯爵家の嫡子でまだ婚約者が決まっていなかったからだ。もし私に婚約者が決まっていれば、フィアレアラ様は、御自身の御婚約者にスーラ様を選ばれていた。スーラ様ならば、たとえ自分に婚約者がいてもフィアレアラ様との婚約話を断わらないから。理由は、そう、彼女もフィアレアラ様が好きだから。
我が帝国六大公爵家の一つロクデカン公爵家のご令嬢スーラ・ヤ・ロクデカン様は、私達の学年でフィアレアラ様に次ぐ高いご身分のお方だ。お父上様はロクデカン公爵様で、お母上様は本家ヨバルテ公爵家のご出身。つまり、現ヨバルテ公爵様は、スーラ様の伯母上様だ。
同じ四星でも私のような伯爵家四星なんかとは違って魔力も格上だ。超真面目な努力家で、勉強だけでなく運動も頑張っている。ご身分が高いのに気遣いも出来、完璧なご令嬢だ。
全ての面で私の遥か上をいくスーラ様。とはいえ、私だってフィアレアラ様への恋心は譲れない。スーラ様のお気持ちを知っていながら私はフィアレアラ様の婚約者になれるチャンスを逃さなかった。スーラ様がご自身の婚約話を解消する前に、私はフィアレアラ様の婚約者になった。
フィアレアラ様が男性を婚約者に選ばない選べない理由を知らないスーラ様は、私がフィアレアラ様の婚約者になったことに驚いただろう。彼女は、悲しそうなお顔でずっとフィアレアラ様を見ていた。
スーラ様のお気持ちに心が痛んだが、譲れない。好きな人は譲れない。私は、フィアレアラ様が好きなのだから。
……………………………
高等学校を卒業する半年前になって、なんとスーラ様は、同盟国ゴ・リキ・マ・アール王国の王太従弟C・ザカラン・F・レリ・アール殿下の側妃予定の御婚約者に内定したと我が帝国と同盟国とで同時に発表された。
どういうこと?同盟国の王太従弟C・ザカラン・F・レリ・アール殿下の正体は、フィアレアラ様だ。フィアレアラ様は、スーラ様に王太従弟C・ザカラン・F・レリ・アール殿下の御婚約者になって欲しいと頼んだということなのだろうか?
なんだかモヤモヤしてしまう。
フィアレアラ様は、あの時、たまたま私にまだ婚約者がいなかったから私を婚約者に選らんでくれたが、本当は私よりもスーラ様を選びたかったとは知っている。
理由は、本来ならば、皇家皇族の御婚約者は、侯爵家以上の四星以上だからだ。同じ四星でも強い方が五星の子孫が授かりやすい。ヨバルテ公爵様を伯母に持つロクデカン公爵家のご令嬢スーラ様は、まさに理想的なお相手なのだ。
そう思っていた。
が、それは間違いで、フィアレアラ様は、私よりもスーラ様の方が好きだからだったからなのだろうか?
フィアレアラ様にも、スーラ様にも、何故スーラ様がザカラン王太従弟殿下のご婚約者になったのか理由をお聞きしたい。
が、聞けない。
理由を聞くのが怖い。
フィアレアラ様に面倒くさい女だと思われたくない。嫌われたくない。もしスーラ様の方が好きだからと言われてしまったら、立ち直れない。
理由を聞くのが怖い。
スーラ様にスーラ様のフィアレアラ様に対する恋心を知っていながら自分が婚約者になったことを指摘されたくない。他人を責めるようなお方ではないとは思ってはいるが、私はスーラ様に責められても仕方ない立場だ。たかが伯爵家の令嬢の私が、公爵家のご令嬢であるスーラ様のお気持ちを無視して、譲ることなく自分がフィアレアラ様の婚約者になったのだから。
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スーラ・ヤ・ロクデカン様が同盟国ゴ・リキ・マ・アール王国の王太従弟C・ザカラン・F・レリ・アール殿下の側妃予定の御婚約者に内定したと我が帝国と同盟国とで同時に発表されると、学校ではそのことが超話題になった。
何故、スーラ様が異国に嫁ぐのか理由を知りたいクラスメート達は、それを話題にし、スーラ様に話し掛けた。
「同盟国の前国王クノハ陛下からザカラン王太従弟殿下の御側妃予定のご婚約者にとのお話しをいただいたからなのよ。
私、ザカラン王太従弟殿下とも実際にお会いしたわ。
超イケメンでしたわ。
ねぇ、フィアレアラ様。」
「イケメンかどうかは、その人の好みによるとは思うけれど…。
私が、同盟国の前国王クノハ陛下にスーラを紹介したのよ。私は、留学を終えた後もあの王国とは連絡を取り合っているから。
ザカランは、私たちと同い年で、私の留学時代には、よく一緒に同盟国を旅行視察して回った仲よ。
スーラがザカランとの婚約をOKしてくれて、クノハ前国王陛下は大喜びしていたわ。」
学校で話題になったからには、みんなザカラン王太従弟殿下のことをある程度知っていると思われる。少し前の同盟国が他国連合国軍に侵略されそうになった時、彗星のように現れたとても強い魔力を持つ同国の王族王子様だということを。彼は、現在、世界ランク1位の国外外交代表五星で、我が帝国の皇族五星の方々よりも強い魔力を持っているということも。
スーラ様の御婚約は、フィアレアラ様のご紹介によるものだとクラスメート達は納得した。フィアレアラ様は、三年間も同盟国に留学していて、それがきっかけで現在の我が帝国と同盟国はとてもいい関係になっているから。
歴史の教科書に出てくる我が帝国のイッチバーン公爵家とニッチェル公爵家のご令嬢達のようにご自身も我が帝国と同盟国の友好関係の架け橋となりたいとおっしゃったスーラ様。他国に単身嫁ぐなんて不安もあるだろうがにこやかに。
本当に凄いお方だ。
完敗だわ。
そう思った。
彼女は、フィアレアラ様の妃になるためならば、他国に嫁ぐことも四番目の妃となることも厭わない。彼女のフィアレアラ様への一途な想いは尊い。
私は、スーラ様に心の中でエールを送った。




