516.【番外編】私の異母妹 1
高等学校を卒業した異母妹が我が家から出て行ってしまった。いや、正確には我が帝国からも出て行ってしまったのだ。
異母妹は、同盟国に留学した。医師となるために同盟国の高等学校の医療コースに進学したのだ。
我が帝国で高等学校の学習は終えているにも関わらず、異母妹は高等学校一年生から学習をし直すのだ。理由は、同盟国では医療コースは中等学校から始まるからだ。
対する我が帝国の医療コースは高等学校からだ。同盟国では医療コースは一般教養と専門教養の両方を六年かけて学ぶのだが、我が帝国の医療コースは高等学校の三年間専門教養のみを集中して学ぶのだ。
どうせ一年生からやり直すのならば、我が帝国の帝都第二高等学校の医療コースでも同じではないか。わざわざ同盟国に留学する必要はないと思うのだが、異母妹は同盟国に留学することで同盟国の国民に受け入れてもらいたいのだ。
同盟国の次期国王になられるC・ザカラン・F・レリ・アール王太従弟殿下の側妃予定の婚約者として。
我が帝国のロクデカン公爵家の令嬢なのに『側妃』だ。しかも、四人目の妃。私の大切な異母妹がそんな扱いをされることに私は反対した。
だが、それは、まさかの異母妹の望みだったのだ。
異母妹の希望は前国王クノハ陛下によって叶えられる。前国王クノハ陛下と国王クロード陛下から正式に我が帝国に申し入れがあったのだ。当然、私とお父様は皇帝陛下から呼び出された。
「ロクデカン公爵、同盟国の前国王クノハ陛下と国王クロード陛下の両陛下からそなたの末の令嬢を同国の次期国王C・ザカラン・F・レリ・アール王太従弟殿下の側妃予定の婚約者にと申し入れがあった。末の令嬢から何か聞いているか?」
「えっ?どういうことでしょうか?何故私の末の娘が同盟国の次期国王になられるC・ザカラン・F・レリ・アール王太従弟殿下の側妃予定の婚約者にと望まれているのですか?全く分かりません。」
「そうか。ならば、嫡子テーラ・ヤ・ロクデカン。そなた、末の異母妹から何か聞いているか?」
私も父同様異母妹からは何も聞いてなかった。どういうこと?何故私の異母妹を同盟国の王太従弟殿下が妃にお望みなのだろうか?しかも『正妃』ではなく『側妃』だなんて、お父様も私も寝耳に水のお話しだった。理由が分からないとそうお答えした。
「ザカラン王太従弟殿下には既にご婚約者が三人いる。同盟国の国王の正妃は二人まで。故に四番目の妃では側妃となってしまうが、よいな。」
「恐れながら、末の娘は四星ではありますが、我が本家ロクデカン公爵家の令嬢です。たとえ同盟国の国王陛下と前国王陛下の申し出であったとしても四番目の『側妃』だなんて受け入れることは出来ません。」
お父様がそうおっしゃったが、私も全く同じ意見だ。我がロクデカン公爵家としては受け入れ難い申し入れだ。
「だが、同盟国の前国王クノハ陛下が令嬢本人が希望していると言っておるのだ。本当に心当たりはないのか?高等学校三年生にもなる公爵家の四星令嬢に婚約者がいない理由は何だ?以前は、婚約者がいたと聞いているが?」
「それは…。
末の娘が婚約を解消したいと言ったからです。娘には好きな人がいるらしく、自分に婚約者がいれば配偶者に選らんでもらえなくなるからと。」
「つまり、ロクデカン公爵家の末の令嬢に今婚約者がいないのはその好きな人の配偶者となるためで、そのことを父親のロクデカン公爵も異母姉のロクデカン公爵家嫡子テーラも認めたから令嬢の婚約を解消したのだな?」
「「はい。皇帝陛下。その通りです。故に、同盟国の次期国王になられるC・ザカラン・F・レリ・アール王太従弟殿下の側妃予定の婚約者はお断り致します。」」
私とお父様は揃ってそう答えた。ところが…。
「残念だが、それでは断われぬ。令嬢は、その好きな人の婚約者になるのを希望していて、そのことをそなた達が認めておるのだから。」
私達は、同盟国の次期国王になられるC・ザカラン・F・レリ・アール王太従弟殿下の正体を知らされた。
やはり、といえば、やはりだった。
私の予想通りザカラン王太従弟殿下の正体は、我が帝国壱の宮家皇姪皇女フィアレアラ・マティス殿下だったのだ。しかも男性の影武者を立てている予想は外れて、殿下御本人が一人二役をしていたのだ。
なんてヤバい五星なのだろうか。そんなことが出来るなんて。常識外れの桁違いだ。
詳しい説明は我が帝国と同盟国の国家機密に関わると教えてはもらえなかったが、フィアレアラ・マティス皇女殿下は男性を配偶者にお迎えになられることも第二配偶者をお迎えになられることもない。殿下は同盟国の国王となられるからだ。
だったら、異母妹は同盟国の国王になられるザカラン王太従弟殿下ことフィアレアラ・マティス皇女殿下の妃になりたいと異母妹は同盟国の前国王クノハ陛下にそう言ったらしいのだ。
「家に戻り、令嬢に確かめるがいい。確認が取れ次第、同盟国に国家として返事をせねばならぬ。」
「「はい。国王陛下。」」
「はい」と返事をしたものの、私もお父様もその日は仕事にならなかった。勤務時間が終わるまで何も考えられずにいた。




