511.【番外編】腹立たしいことばかり 5
ああ…。
戻された記憶と五星のお方の魔法に対する知識のなさに己が如何に愚か者なのか思い知らされる。
「さてと、これ以上余計なことは言わないでおくわ。今までのあなたの言動は全て記録されているのだけど、同時に私の言葉までもが全て記録され次の上層定例会議で協議されてしまうのよ。もちろん協議されるのは今後のあなたのことよ。どう処分されても文句言えないわよ。それほどのことをあなたはしてしまったのだから。未成年と雖も許されないわ。王族準成人年齢にあった処分となることを覚悟することね。」
知らなかったとはいえ、私は今までとんでもないことをしてきてしまっていた。母上の言葉を思い出す。私の態度の悪さは、私自身の評価と父上の評価を下げる、と。
ああ…。
それは、こういうことだったのだ…。
クノン王女様は、実は影で私を守ってくれていたのだ。だから母上とフラインダー叔父上はクノン王女様に感謝していた。なのに私はそれを気に入らないと思っていた。
どうすればいいのか分からなくて、溢れ出す涙が止まらない。私は、私達三兄妹が不名誉な父親を持つ子供たちにならないように守られていることを全く知らないで横暴な王女でいた。それどころか自分は父王を退位させられ、王家の王女から王族王女に格下げさせられてしまった可哀想な王女だと、父王の代わりに国王になったクノハ前国王陛下を恨んでいた。あの下剋上女にヤラれたと。
でも違った。本来ならば、私は、王家の王女から国家の謀反人の娘として平民となっても仕方ない立場だった。いや、その前に、父王の手によって殺められていた。それをクノハ前国王陛下、クノン王女様達が守って下さっていたのだ。
「クノンはあなたに甘いのよ。あなたは、ソウルの異母妹だからとね。だけど、私は違うわよ。国家を守るためにも王家王族の品位を汚す行いをする者を許すことが出来ない。」
クノハ前国王陛下は、正しい。王家王族はその国の『顔』だ。国の命運が、国民の生命がかかっているのだから王家王族は己の行いに責任を持たなくてはならない。
……………………
臨時上層会議が開かれた。当事者の私と被害者の帝国のロクデカン公爵家の令嬢、私の友人たちに、そのきょうだい、私が命令した医療コースの女子生徒たちが会議に呼ばれた。
魔力で書かれた報告書に偽りなんてあるはずがないのに真実かどうか確認される。そして、判決がくだされる。
「ソウル異母兄上…。」
判決前、会議室に入ってきたのは、ウェスターナルの五星嫡子メリッサと婚姻し、ウェスターナル公爵領にいるはずの異母長兄ソウルだった。
私は、1ヶ月間の謹慎のち、学校に通えることになった。高等学校を卒業後は、新王族法に従い、王族王女として国境警備の任を課される。つまり、私は、王族王女のままたった1ヶ月の謹慎処分で済んだということなのだ。そして、国境警備の公爵領として、ソウル異母兄上の公爵領ウェスターナルが選ばれた。
異母長兄ソウルは、私の代わりに私の愚行のお詫びをするために王都に来てくれたのだ。皆に頭を下げるために。
厳しい処分を覚悟していた私にこんなに優しい処分で済んだ驚きと嬉しさに異母兄ソウルとクノン王女様の顔が涙で霞んでよく見えない。
「カルア王女様、私の母上が怒りに任せて王女様にとってはとても悲しい記憶を開放してしまいました。さぞお辛い思いをしたことでしょう。母上に代わりお詫び申し上げます。」
「いえ、悪いのは私です。私は本来ならば王女であることさえも憚られる身であるにも関わらず、何も知らず己の立場を恨み、愚行を犯していました。申し訳ありません。今までの愚行を深く反省し、今後は二度と母上を悲しませる行いは致しません。皆様の御厚情に感謝いたします。」
母上は、会議の間中泣いていた。フラインダーの叔父上なんて席に座ることなく入口で土下座していた。会議室に入る時、会議室前の廊下で母上の両親、つまり私の母方祖父母である前フラインダー侯爵と第一夫人が座り込み謝罪をしていたのも目にした。私は、母上の一族の名誉を穢したのだ。
私の取り巻き令嬢達も、そのきょうだい達も一週間の謹慎処分で済んだ。帝国のロクデカン公爵家の令嬢は、謹慎処分もしなくていいと言ってくれていたが、それでは国際問題になってはいけないとの我が王国の申し出を受け入れてくれた形だ。寛容な処分に感謝しかない。
私は、もう二度と異母兄上達や母上、親族に迷惑のかからないように身を引き締め今後は正しい行いをすると心に誓ったのだった。




