510.【番外編】腹立たしいことばかり 4
「ふーん。なるほど…、ね。流石、あのランセルの娘といったところかしら?私の孫王子のソウルが父親に似なくて本当によかったわ。
私ね、ランセルの妃たちも子どもたちも私の娘のクノンと孫のソウル同様に被害者だと思っているのよ。だからあなたとあなたの母親、ハウルとハウルの母親の面倒を見ることにしたのだけど、飼い犬に手を噛まれた気分よ。ちょうどいい機会だから何故あなたの父親のランセルが退位したのかあなたの記憶を返してあげるわ。知り合いが記憶を管理しているから少し待ちなさい。」
クノハ前国王陛下は、そう言うと消えてしまった。どういうこと?私は記憶を消されている?私には、父王が退位した時の記憶があるというのか?父王が退位したのは私が幼い幼女だった頃だ。その頃の記憶があろうがなかろうがどうでもいいのにと思っていたら、突然、頭の中に幼い頃の記憶が蘇ってきた。
異母次兄ハウルの七歳のお誕生日パーティーの記憶だった。
幼い私ではなにがなにやら分からない記憶なのだが、中等学校一年生になった今ならば父王が犯した罪がよく分かった。
父王は、なんと異母長兄ソウルに異母次兄ハウルを殺すように暗示をかけているではないか。そして、その罪をクノン王女様の家族になすりつけようと企んでいた。
計画は失敗に終わり、父王はその場にいたパーティー出席者を攻撃している。父王は、ハウル異母兄上の喉元に短剣を突きつけ、ハウル異母兄上の母親の首を絞めている。そして私と私の母上にも父の側に来るように命令し、母上に私を殺すように命令していたのだった。
あまりの記憶に目の前が真っ暗になった。父王がハウル異母兄上のお誕生日パーティーの時にこんな事件を起こしていたなんて私は全く聞かされていなかった。記憶はどんどん進んで行く。私は、サザリーナンダの五星令嬢リマリーエに守られていた。そして、留学中だったあの帝国の皇女殿下までが我が王国の者たちを父王の攻撃から守っていたことを知ったのだった。
「あなたの父親はね、退位させられて当然のことをしたのよ。あまりにも酷い事件だったから、あのパーティーに出席していたほとんどの者たちの記憶は消してあるわ。でもね、今さっき、あなたが思い出したようにいつでもあの記憶を戻すことは出来るのよ。そして、その事件の記憶は、伯爵家以上の上位貴族当主達や被害者の一部には開放されている。つまり、あなたの母親や叔父のフラインダー侯爵にも開放された記憶なのよ。
もしこの事実が公になれば、ランセルは国家の謀反人よ。国王と雖も極刑は免れない。そうなればあなた達三兄妹は謀反人の父親を持つことになってしまう。それは我が王国の未来のためにもよくないから、記録の開放は上位貴族当主までで留めているのよ。
これであなたが何故王女のままでいられるのか分かったかしら?あの事件の後ね、クノンはランセルと離婚することを望んだわ。でもね、離婚すればクノンは前第一王妃の肩書きを失い、国政に参加出来なくなってしまう。だから、離婚させてあげれなかった。ランセルの代わりに国王になった私にはクノンの力が必要だったからよ。
そしてね、ハウルの母親のタミル第二王妃も、あなたの母親のヒカリエ側妃も、ランセルは恐ろしい男だから側にいたくないと最初は離婚を望んだのよ。だけどね、ハウルとあなたの将来のために二人共離婚はしないことを選らんだわ。あの事件の記憶は一部の上位貴族にしか開放されていないから、もし離婚すれば、ハウルとあなたは離婚した不名誉な母親を持つことになると言ってね。
ソウルは高等学校を卒業した時に記憶を開放されているわ。でもまだ高等学校一年生のハウルには記憶を開放していない。そんな記憶なんてなくても、あなたの異母兄二人は品行方正で優秀な王子たちよ。でもあなたはどうなのかしら?あなたが侍女に対する態度がよくないことならば、私も聞いているわ。知らないかも知れないから教えてあげるけれど、あなたの侍女にはみんななりたくないって言っているのよ。でも、王女に侍女を付けないといけないからあなたの侍女には普通の侍女の約三倍の給金が支払われているのよ。誰がその余分な給金を払っていると思う?言っておくけれど、あなたの母親ではないわよ。」
まさか…?
クノン王女様だろうか?
クノン王女様が私のために自分のポケットマネーから私の侍女の給金を支払っている?
「さてと、これ以上余計なことは言わないでおくわ。今までのあなたの言動は全て記録されているのだけど、同時に私の言葉までもが全て記録され次の上層定例会議で協議されてしまうのよ。もちろん協議されるのは今後のあなたのことよ。どう処分されても文句言えないわよ。それほどのことをあなたはしてしまったのだから。未成年と雖も許されないわ。王族準成人年齢にあった処分となることを覚悟することね。」
ああ…。
知らなかったとはいえ、私は今までとんでもないことをしてきてしまっていた。母上の言葉を思い出す。私の態度の悪さは、私自身の評価と父上の評価を下げる、と。
ああ…。
それは、こういうことだったのだ…。




