509.【番外編】腹立たしいことばかり 3
新年度が始まる前に国民発表があった。
今年、高等学校を卒業するザカラン王子様は、成人前の全ての国民男子に課される兵役義務に例外なく一年間就く。国王に即位するのは再来年。そして、ザカラン王子様の側妃予定婚約者の帝国公爵令嬢は、我が王国の高等学校医療コースに三年間留学する。つまり、学年は一年生だ。
私の予想通りね。根回しは出来ている。医療コースに進学するのは嫡男ではない男子生徒が多い。女子生徒ならばヨーデキール家系列の優秀な者か、分家子爵家以下の優秀な者。つまり、ヨーデキール家系列以外は、男子生徒も女子生徒も生活のために医師として働くことを前提とした下位分家貴族系列の者たちなのだ。その者たちが王女である私の命令に背くはずがない。帝国女は、孤立し、虐めに堪えきれず、帝国に逃げ帰ることまちがいなしよ。ふふっ。
…………………
新しい年になって、3ヶ月半が過ぎた。後1ヶ月で一学期が終わるというのに、留学中の帝国女は楽しく高等学校に通っているらしい。
どういうこと?
あの帝国女を虐めて学校で孤立させるように根回ししたはずなのに?イライラして、取り巻き令嬢たちを問い詰める。すると、どうやら高等学校三年生で生徒会長をしているウェスターナル公爵家の四星長男サダドック・マ・ウェスターナルがあの帝国女を守っているらしいことが分かった。
ウェスターナル公爵家…。サダドック・マ・ウェスターナルの母親ウェスターナル公爵メアリーは、あの帝国女の後見人だ。そして、私の一番上の異母兄ソウルは、彼の姉ウェスターナル公爵家五星嫡子メリッサ・マ・ウェスターナルと昨年初めに結婚したばかり。
面倒な者が私の前に立ちはだかる。だが…。
「サダドックは、医療コースでもなければ、学年も違うわ。私は医療コースの一年生に言っているのよ。あの帝国女を孤立させろとね。三年生のサダドックでは止めれないから強行させなさい。」
そう言って取り巻き令嬢たちに発破をかける。が、一筋縄ではいかなかった。同じ学年の高等学校一年生には、イットー侯爵家の四星次男がいるのだ。彼の異母兄、イットー侯爵家の四星嫡男は、ザカラン王子様の側近候補だ。異母兄にあの帝国女を守るように命令されていては格下の者が帝国女に手を出すのは難しい。しかも、イットーの次男と同級生の真面目な異母次兄ハウルまでもが一緒にいるのだからいくら同じ学年の同じコースとはいえ帝国女を孤立させるのは厳しい。
腹立つ〜。
それでもなんとか孤立させようと三歳年上の医療コースの女子生徒数人を呼び出し、命令した。あの帝国女を無視しろ、と。
だが…。
医療コースの少ない女子生徒は目立つので、何か問題があればすぐに目に入ってしまう。そして、誰の差し金か問い詰められては私が犯人だとすぐにバレてしまうと言われてしまった。
これはよくない。
私の立場が危うくなってしまう。しばらく手出しするのは止めにして様子を見よう。だが、出来る限り私の命令通りあの帝国女を孤立させろと命令したところ、数日後、前国王クノハ陛下に呼び出された。
「ねぇ、カルア王女。あなた、何故私に呼び出されたか理由が分かるかしら?」
ヤバい。これは私が帝国女を虐めようとしていたことがバレたのだ。だが、認めることは出来ない。
「いえ。全く分かりません。私が何かいたしましたか?」
「へぇ~、しらばっくれるつもりなのね?ならば、この報告書に書かれていることは事実無根なのかしら?」
バサッっと投げ付けられた報告書を見る。そこには、私が取り巻き令嬢たちや数日前に呼び出し命令した内容が全て書かれていた。取り巻き令嬢たちか呼び出した令嬢の誰かが私を裏切ったのだ。
「知りません。私は、友人たちにこのようなことは命令してません。」
しらを切るしかない。後で私を裏切った取り巻き令嬢たちや呼び出した令嬢達に罰を与えなくてはいけない。
「あらまぁ、あなたは報告書が読めないのかしら?あなたの友人たちは、『魔法』で自白させられているのよ。嘘なんて言えるはずがないのよ。なんなら自分自身が『自白魔法』にかけられてみたらいいわ。」
恐ろしい魔力が私を支配した。私は、全てを自白させられ、その事実が魔力で記録される。私は罪人になってしまう。悔しい。元々は、元王族だったこの女が私の父上を退位させたからではないか。悔しくて、悔しくて、支配されながらも前国王クノハを睨みつける。例え魔力で支配されたとしてもこの女に情けをかけられるくらいならば死んだ方がマシだ。死んで王族王女殺しの罪をこの下剋上女に被せたい。そう思っていたことまでもが全て自白させられてしまった。




