44.話し合い 1
クン:「失礼致します。
母上、急ぎの用で私をお呼びとお聞きしました。まだ魔法の授業の時間中ではないのですか?
えっ?フィアレアラ皇女殿下、何故パンイチなのですか?
えっ?男の子?」
クハ:「クノン第一王妃陛下。見て下さい。フィアレアラ皇女殿下が父上だと男児になるらしいですわ。」
クン:「えっ?本当ですか?って本当ですわね?えっ?どういうことなのですか?」
クハ:「つまり…」
………
フ:『レリーリアラ、クレア。出来れば、男児用の服の方が欲しいな。エリザベートならばフィアレアラの体は女児のままだけど、ぼくがフィアレアラの体を借りている時は男になってしまうから。』
クン:「はい。フェリオ様。すぐに男児用の服を用意させますわ。後で採寸した方がいいですわね。フェリオ様とフィオナ様の子供の頃は、『男児』と『女児』の時とでは全然体型が違いましたわ。フィアレアラ皇女殿下はパッと見、少し違う程度、意識しないと分からないくらいだとは思いますが。」
フ:『ぼくは幼少の頃から男として育ったからね。体も男らしくしっかり鍛えていたよ。フィアレアラはずっと女児だから男になったらふにゃふにゃな体だ。男のクセに全く筋力がない。』
クハ:「私も意識しないと分からないくらいだと思いますわ。まだ八歳なので当たり前ですが、声もほとんど同じ子供声、体型もツルペタ幼児体型。下半身見ないと分からないくらいですわ。まぁ、父上に代わった瞬間に女児用パンツの横からポロリでしたけど。」
フ:『…。
だから明日にしたらって言ったんだよ。ぼくだって娘の前でポロリなんて最悪だよ。』
クハ:「たいしたことありませんけどね。八歳の子供の父上の下半身なんて。」
フ:『当たり前だよね?違う方がヤバいよ。
ところで、ぼくはフェリオだけど本体はフィアレアラだよ。ぼくはフィアレアラの体を自由に出来ない。レリーリアラとクレアの期待には応えられないよ。』
クハ:「まだ何も言ってませんわ。」
フ:『ぼくらも考えたからね。ぼくがクレアの息子の隠し子王子になるとか、クレアの孫王女の配偶者になるとかね。だけど、フィアレアラが拒否してる。当たり前だけど、彼女は普通の女の子だから、男の姿で生活するなんて無理だよ。
ぼくは、フェリオとして生きることを決めた時からフィオナの姿は最小限にした。理由は、レリーリアラならば知っていると思うけれど、男性として子孫を遺すためだ。』
クハ:「父上がほとんど父上だった理由って、もしかしてそうする必要があったからなのですか?」
フ:『そうだよ。男性としての生殖能力を維持するためだ。ぼくは、子供がたくさん欲しかった。だから、フェリオとして、男性として生きることにした。フィオナとして王位を継ぐのが本来の正しいことだけれど、次世代以降の将来を考えれば、女性のフィオナでは厳しい。
フィアレアラが男性として子孫を遺すためには、思春期頃からずっとぼくに自分の体を任せて男性の姿のままでいる必要がある。そして、そうしたとしてもぼくの時みたいに男性として子孫を遺すことが出来るかどうかはわからない。フィアレアラは、ぼくと違って呪詛なんてかけられていないからね。』
クハ:「つまり、異母妹エリザベートの時みたいにうちの王国にフィアレアラ皇女殿下の子を望むことは不可能なのですね。」
フ:『そうだね。だから、今、エリザベートと一緒に君の孫王女を鍛えているんだよ。こうなってしまったのはぼくの責任だから。全員ぼくの子孫だからぼくがどうにかしたいと思うけれど、フィアレアラの人生はフィアレアラのものだ。フィアレアラの体はぼくの体ではない。』
クハ:「分かりましたわ。父上。」
フ:『ごめんね。クレア。レリーリアラ。
ぼくもね、色々考えて今の法にしたんだよ。ぼくの第一王子のレオンが旧帝国皇族家系五星でなかったから法を変えたのではない。レオンの誕生を機にしたことはそうなんだけど、そうしないと不都合なことが多いことは分かるよね。
今までの直系五星王子優先ならば、第一王子のレオンが国王だ。そして、王家の子孫を旧帝国皇族家系五星に戻すためには、アリアとクレアの子孫を利用しなければいけなくなる。
そうなれば、ぼくの前の世代がそうだったようにまた公爵家系五星がいなくなってしまう可能性がある。王家に旧帝国皇族家系五星を繋ぐために、公爵家系五星を旧帝国皇族家系五星に変えて、生まれた子が五星女性ならば全員王家王族に戻していたあの時代にね。
ランセルは、今、そうしようとしている。
ぼくが変えるまでの法ならば、クレアの孫王女もイーデアルに降嫁した妹王女の子が女の子ならば全員ランセルの第二王子の妃だ。旧帝国皇族家系とは違う王家の第二王子の子孫を旧帝国皇族家系五星に戻す必要が出てくるから。
だが、もし、第二王子の子供が男性側の家系になってしまったら…。クレア、君の孫王女の第一子が旧帝国皇族家系五星でなければ、我が王国の旧帝国皇族家系五星は、我が王国からいなくなってしまう。
ぼくはそれをなくそうと思ったんだけど、ダメだった。世代が進むと難しい。強い魔力を持つ王が賢王とも限らない。
帝国のこともだ。
帝国の皇族と我が国の王族は、エリザベートの時代から『幹』を同じとする同家系五星。どうしても妃の懐妊が被ってしまう。そして我が国の方が旧帝国皇族家系五星を失い易い。
ぼくはそれを回避するために五星王子だけでなく、王女も王族に残し、確実に旧帝国皇族家系五星の子を得られる環境にしたつもりだったんだ。なのに、ランセルは旧帝国皇族家系五星の異母妹王女を公爵家のよりによって五星の嫡男に降嫁させた。王家の王女の降嫁ならば、公爵家嫡男でないといけないからだろうが、これでは、子供が男性側の家系で生まれる確立が高くなり、次世代の旧帝国皇族家系五星を失ってしまう。
そして、まだ生まれていないけれど、そうなってしまった。』
クハ:「申し訳ありません、父上。それは、私が反対すべきでした。ですが、あの頃のクノハの私は、息子と娘のことで後ろめたさがあり、王族の私一人が反対したところでどうにもならない、そんな力も資格もないと諦めてしまっていました。
私が…、
私さえあの頃、クレアの記憶を取り戻していたならば、ランセル国王陛下には負けなかったのに、娘の見方になれたのにと、悔やまれてなりません。」
クン:「母上。それは私も同じですわ。私は、第一王妃なのに、ランセル国王陛下の独裁を止める力がなかったのです。レリーリアラならば…、例え、ランセル国王陛下が独裁しようとしたとしても、陛下以外の者たち、四大公爵家や、王宮、貴族、国民、全てを自分の見方につけてランセル国王陛下に反対したでしょうから。」
フ:『…。
それは…。
そう、かも?
ぼくもフィオナもレリーリアラには勝てないからね。
フィオナなんて、君に嫌われたと思ったら我を忘れて暴走したくらいだよ。』
クハ:「…同意致しますわ。クラリス母上も言っていました、レリーリアラ様は、『私の知らない世界を牛耳る第一王妃陛下』だと。帝国のセシル様でさえも『レリーリアラ様に勝てる妃なんていない』とおっしゃってましたわ。
アリア異母姉上もレリーリアラ様が一番でした。父上や、異母姉上の夫、息子よりも。何かあればいつも『母上、母上』とレリーリアラ様にご相談していました。父母上には反抗していましたし。」
クン:「…。
レリーリアラは、何もしてない…こと、ない、ですわね。当時は、雑用係だと思ってましたわ。王宮費用をカットするための。
同じ第一王妃なのに、今と全く違いますわね。私には、レリーリアラのような人望が全くないのですわ。今さらながらレリーリアラが羨ましく思います。
ですが、クノンの私もこの国の第一王妃です。クレアレイア王女様だった母上も私の側にいてくれます。私は、第一王妃として、今からでもこの国の未来のためにやれるだけのことはやってみるつもりですわ。
フェリオ様、母上。レリーリアラと違って未熟な私ですが、ご協力いただければ、と思います。」
クハ:「ええ。もちろん、私で出来ることがあるならば、私は、クノン第一王妃陛下の見方になりますわ。」
フ:『ぼくもだよ。フィアレアラも協力してくれるから。ぼくが君たちを守ってあげたいけれど、フィアレアラに頼らざるを得ないぼくを許して欲しい。』
クン:「ありがとうございます。フェリオ様、母上。」
フ:『ぼくは、そろそろフィアレアラに代わるね。フィアレアラがお腹空いたって文句言ってるし。』




