32.王族クノハ 2
娘の話は、本当でした。殿下には、前世と前々世の記憶があるだけでなく、前世と前々世のご本人が殿下の中に存在するのです。
「娘が殿下は幻影魔法で殿下の前世と前々世のお姿をお造りになれると言っていましたが、本当ですか?」
「私も出来ますが、あの二人が私の魔力を勝手に使って出てくるのです。私の中で煩く出せ出せって言って。ウザいので普段は深層に閉じ込めることにしています。」
「私は、殿下の前世と前々世の幻影にお会い出来ますか?」
「はい。そう言われると思ってましたので。幻影魔法はご存知の通り魔力をたくさん使います。限界ギリギリまで薄くても大丈夫でしょうか?」
「それは大丈夫なのですが、殿下は、幻影の魔力量を調整出来るのですか?」
「私も出来ますが、あの二人が勝手に調整します。自分達の姿を造れる程度の私の魔力を使って。普通の幻影魔法で使う魔力の0.6倍くらいです。二体なので1.2倍くらい使われてしまいますが。二時間以上出て来られたら、私の魔力が持ちません。魔力を空々にするわけにはいかないので問題ないのは一時間くらいです。
エリザベート、フィオナ。」
『【はい、は~い。ちょっと、もっと早く私達を出しなさい、フィアレアラ。】』
『そうよ。私達ずっとあなたに早く出せって言ってたのに無視するなんて、失礼な子孫だわ。フィアレアラって。』
「あなた達が煩いからよ。」
『【まぁ、いいわ。はじめまして。私の子孫。私は、エリザベート・F・ア・メディアスタ、この国ではエリザベス・マ・アールですわ。あなた、旧帝国語は、話せるわよね?私には旧帝国語で話しなさい。旧マ・アール語でも大丈夫よ。子孫ならば私に対して敬意を払うべきだわ。もちろん現代共用語も理解ならば出来るけどね。】』
うわっ。本当に二人とも本物のようです。殿下とは別人。娘の言うとおり二人とも超美人でおまけにデカい。私もデカいのですが、私と同じくらいの身長です。
「【はい。エリザベス王太后陛下。私は、四代前の国王アクアリア陛下の曾孫クノハ・レリ・アールと申します。旧帝国語は、世界共用語ですので話せますが、旧マ・アール語は、話すことも理解することも出来ません。申し訳ありません。】」
『フィオナ・マ・アールよ。あなた、私の曾孫アクアリアの曾孫なの?第二王子の孫なのかしら?アクアリアの曾孫のくせにもしかして魔力量を調整出来ないの?誰に魔法を習ったの?アクアリアは出来たはずなのに。』
「【魔力量を調整する技術があるのですか?アクアリア国王陛下は、魔法の技術が凄かったとはお聞きしていますが、誰もその技術を学んでいません。アクアリア国王陛下の第一王子の大伯父上様や第二王子の私の祖父に魔法を教えていたのは、陛下の王配である曾祖父様だったと聞いています。アクアリア曾祖母様は、国王陛下であられましたので、退位してからも孫や曾孫に魔法を教えることはありませんでした。私が直孫王女であれば教えていただけたかも知れませんが、直孫は王子でしたので。】」
『ああ、まぁ、そうなるわね。アクアリアに魔法を教えていたのは、クレアレイアだったからアクアリアはたいていの魔法ならば扱えたのだけど、残念ね。まぁ魔法の先生が『同性』って決まっている時点でアウトかしら。ってことは、あなたの孫王女もダメね。う~ん。帝国にヤラれちゃうわよ。帝国の皇家はきちんとその技術を伝えているから。困ったわ~。どうしょうかしら。』
「【申し訳ありません。『クレアレイア』様とはどなたなのですか?】」
『私の第二王女よ。結婚後は、王族に残ったわ。クレアの孫息子がアクアリアの王配よ。』
「【曾祖父様が王族五星だったのは知っていましたが、曾祖父様のお祖母様のお名前までは知りませんでした。】」
私の知らない昔の話。娘の話やフィアレアラ皇女殿下の幻影のこのお方を疑っていたわけではありませんが、常識ではありえないことです。心のどこかに信じられない疑念がありましたが、間違いなくこのお方が私のご先祖様のフィオナ・マ・アール王女殿下だと、実感してきました。
『クレアは、魔力量も魔法の技術も帝国のエリザベートよりも上だったから、まさかこんな近い将来に逆転してしまうなんて思わなかったわ。来る時には一気に来ちゃうわね。はぁ~。自分が蒔いた種だけど、どうしょうかしら。絶望的に思うわ。あなたの孫王女も10歳ならば、もう、無理だから。」
「【10歳だとダメなのですか?】」
『魔力量を調整する技術はね、だいたい七歳~十歳までの初等学校の三年間が基本なのよ。七歳までの幼児の頃に基本を学び、十歳くらいまでに魔法量を調整出来るようになって、十歳以上からはその技術を発展させるのよ。』
「【孫はまだ九歳ですが、アウトですか?来週末には十歳になりますが、予定日ならば一つ下の学年でした。あの子は出産予定日よりも二週間以上早く産まれてしまい、ギリギリ上の学年になってしまいましたので。】」
『そうだったわ。ギリイケるかも?その孫王女、今すぐここに連れて来なさい。』
「【はい。では、侍女に呼びに行かせます。】」
「…すみません。私の態度のデカい幻影二体が先生に命令なんてして。」
『『【はぁ?何言ってるの?フィアレアラ。子孫ならば私達の言う通りにするなんて当然じゃない。】』』
「「…。」」
確かに態度はデカいのですが、普通と言えば普通です。世界一強い魔力を持っていたお方なのです。そんなお方が腰が低いわけありませんから。
……………………
「失礼します。私をお呼びと聞いて参りました。」
孫がきました。孫は、何事なのか分からない様子ですが、説明する時間はありません。
「【エリザベス王太后陛下、フィオナ王女殿下、孫のクララです。】クララ、ご挨拶しなさい。」
「はい。お祖母様。【エリザベス王太后陛下、フィオナ王女殿下、クララ・レリ・アールと申します。】」
『【時間がないから、何の説明もなくいくわよ。クララ、普通の結界でいいから、五重に張りなさい。】』
「【えっ?五重ですか?出来ません。三重で精一杯です。】」
突然、めちゃくちゃなことを言うエリザベス王太后陛下。孫はまだ九歳なのです。出来るはずがありません。私でもギリギリです。
『私達が教えてあげるわ。フィアレアラ、とりあえず、あなた手本を見せなさい。』
「いいけど、あなた達に魔力使っているからあまりやりたくないわ。」
『【薄いのでいいのよ。魔力なんてほとんど使わない程度の。】』
「はい。はい。分かったわよ。エリザベート。」
フィアレアラ皇女殿下は、そう言うと、一重、二重、三重…とどんどん結界を重ねて張っています。まさか?信じられません。10、11、12、13…まだストップがかかりません。いったいどうなっているのか私には理解出来ないことでした。




