28.王国留学 4
夕刻前にクノン第一王妃陛下は、私のところに来た。
「フィアレアラ皇女殿下。殿下のご希望通り昨日のことは箝口令を敷いておきましたが、既に広がってしまった後ですから、あまり効果はないと思いますわ。」
「そうですよね。お手数おかけして申し訳ありません。」
「いえ、お役に立てなくて申し訳ないですわ。
後、殿下の魔法の先生ですが、私の母上に変更いたしました。母上には、先程概ね全てお話しして協力していただけることになりました。私がかつてレリーリアラであったこと。フィオナ様の呪詛。フィアレアラ皇女殿下がフィオナ様とエリザベート様であることを。
短い時間で簡潔に説明いたしましたので、明日もしかしたら私の母上がもっと詳しく殿下に質問なさるかも知れませんが、ご了承ください。」
「はい。分かりました。」
「殿下の学習予定ですが、事前にご連絡している通りになります。何かご要望などありますしょうか?」
「いえ、特にありません。私には、フィオナの記憶がありますから、学習も、魔法も問題ありません。剣術は、帝国では、一週間に一回の嗜み程度でしたので、得意ではありません。なので、こちらも誰でも大丈夫です。」
「分かりました。では、王宮をご案内致しますね。フィオナ様ならば、ご存知とは思いますが、殿下は、昨日はじめて王宮にいらしたことになっていますので、ご了承ください。」
「はい。よろしくお願いいたします。」
第一王妃陛下に宮殿を案内してもらう。フィオナの時代から何も変わらない。懐かしいって思ってしまう。生まれ育った王宮に帰って来たと。唯一人の王位を継ぐ王孫王子で、その責任を感じながら毎日生活していたこの場所に。
守りたい、と思ってしまう。
この国を。
隣にいるかつての己の第一王妃のことも。
今のこの国の良くない状態も、自分の責任だと思ってしまう。
フィオナは、未だにこの国も彼女のことも愛している。
それから、
…死んだクセに、フィオナはまだこの国の国王のつもりでいる。
『許せない。ランセル。私達の子孫のクセに。絶対許さない。』
フィオナは、怒っている。フィオナが必死で守ってきたこの国を、王家を、王族を、ランセル一人が台無しにしようとしている。フィオナは複数の子孫を得るために男性として国王になった。第一王妃、第一王女には、苦労をかけた。己のワガママに付き合わせてしまった。申し訳なかったと思っている。だが、この国のために、彼女達は、フィオナに協力してくれた。
守ったと思っていた、祖国の未来も、子孫のことも。なのに、ランセル一人がそれをぶち壊す。己の王子を国王にするという自己顕示欲を満たすためだけに。国王になる資格のない己の王子に王位を継がせるために、祖先やフィオナが代々繋いできた家系をランセルが壊そうとしている。
早くどうにかしたい。フィオナは焦っている。
どうにもならないのに…。フィアレアラの私は冷静にそう思うのに、フィオナの焦りが私の焦りになる。
…分かったわよ。はいはい、魔力、鍛えるわよ。嫌ではないから。私も五星だ。誰よりも強い魔力を欲することは、当たり前の感情だから。
王宮案内の後は、一緒に夕食をいただく。会話は全くない。黙って食べて終わり。チラっとランセルを見るが普通。昨日の魔力勝負でもしかしたら私の魔力が分かったかも知れない。わざと垂れ流したのは失敗だったかも…。
夜、少しこの国の考えてみるが、睡魔が勝つ。午前中の幻影の二人のせいで私の魔力はもうあまりない。眠くて眠くてたまらない。考えるのはまた明日だと、私は、さっさと寝ることにした。




