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23.第一王妃 クノン 5

午前中のフィアレアラ皇女殿下との話し合いは、思った以上に時間が経ってしまっていた。昼食後、午後一で自分の母親を私のところに呼び出した。


「第一王妃陛下?如何なさいましたか?何があったのですか?」


母は心配したような不安そうな顔で開口一番私にそう尋ねた。今まで私は母親を自分のところに呼び出したことが一度もなかった。母は何か大きな問題が発生したと思っているみたいだった。


「母上。母上を私のところにお呼びしたのは、母上にお願いがあるからなのです。私が我が国に留学をお願いして昨日きていただいたフィアレアラ皇女殿下の魔法の先生を母上にお願いしたいのです。」


「フィアレアラ皇女殿下の魔法の先生でしたら、ウェスターナル公爵の異母妹なのではないのですか?私では年齢的に少し難しいと思いますが…。」


「よいのです。今朝確認致しましたが、フィアレアラ皇女殿下はどんな魔法でも既に扱えるそうなので、魔法の先生なんて要らないらしいのです。ならば、私の信頼出来る母上が一番いいと思ったのです。」


「昨日のパーティーで凄まじい魔力の皇女殿下だとは思いました。私は若い頃よりも魔力が減っていますが、私の若い頃や息子の魔力とほとんど変わらないくらいあると思います。まだ八歳なのに。二歳年上のクララの二倍以上ありましたわ。」


母は、驚いた顔のままそう言っている。四星の私には、フィアレアラ皇女殿下の魔力量なんて分からないが、母には分かったらしい。あの時フィアレアラ皇女殿下はわざと回復魔法を垂れ流していた。国王陛下は近くにはいなかったが普通ではない殿下の魔力に気付かれたかも知れない。兄上にも。気をつけないといけない。


「まだまだ増えますわ。留学は二年間を予定していますが、兄上の1.5倍~2倍。成人年齢になれば3、4倍くらいになると思いますわ。」


「あなた、本気で言っているのですか?我が王国の王家系五星は、世界一の魔力量を誇る家系ですよ。とても信じられません。我が王国家系五星の魔力量の3、4倍もある五星なんているわけありません。」


母上がそう言うのは当たり前だ。母上は、我が王国の王族五星として、若い頃は王国国外外交代表五星だった。現在は、国外外交代表を兄上に譲られたが、我が王国の国外外交代表五星は、この世界の各王国の国外外交代表五星の中で常にランク一位で、代々会議議長を務めている。帝国の国外外交代表五星よりも上なのだ。そして、我が王国と帝国の五星は、同じ旧帝国皇族家系五星なのだが、それは公表されていない。秘されている。


「母上。母上は、何世代か前の王女で、とても強い魔力を持っていたフィオナ・マ・アール王女殿下をご存知ですか?」


「もちろんです。私の曾祖母様アクアリア国王陛下は、その王女殿下の双子の兄の曾孫ですから。その王女殿下はとても長生きしました。双子の兄と同様に。とても仲のいい双子のご兄妹で同じ日にご兄妹揃ってお亡くなりになられたと聞いています。」


「…それは知らなかったですわ。でも、そうなったかも知れませんわね。フェリオ国王陛下とフィオナ王女殿下は本当は双子ではなく同一人物ですから。」


「…あなた、何故、そのような事を?」


「母上がそうおっしゃるのは、母上はそのことをご存知だと判断致しますわ。王家直系ではフェリオ国王陛下の子孫のどの世代まで本当のことが伝えられているのかは分かりませんが、私は直系ではなく王族の母上が知っていたことに驚いているくらいですわ。」


「私は、誰にも言ったことがありません。亡きお祖父様から誰にも言ってはならないと教えてもらったことなのです。私は、息子と娘に言う必要ないと思っていました。」


「アクアリアの第二王子でしたね。曾祖父様は。そうですか、曾祖父様は聞いていたのですね。母上もですか。ならば、話は早いですわ。

母上。母上は、双子の兄フェリオ国王陛下の第一妃だった女性を知っていますか?」


「残念ながら名前までは知りません。第一王女、後に国王になられたアリアレイア陛下の母親としか。」


「そう、ですか。四星第一王妃なんて、その程度ですよね。その第一王妃の名前は、レリーリアラ・マ・アール。父親は、イーデアル公爵家おそらく初の四星当主カルロス・マ・イーデアル。フィオナ・マ・アール王女殿下の母親マリアンヌ王妃陛下の異母弟です。なので、フィオナ王女殿下と、レリーリアラはいとこ同士になります。」


「…。」


「何故フェリオ・マ・アール国王陛下とフィオナ・マ・アール王女殿下が同一人物なのか。それは、『呪詛』だから。国王フェリオ・マ・アール陛下は、生まれてすぐ父親のエドガー国王陛下に『呪詛』をかけられ男児の姿に変えられたフィオナ・マ・アール王女殿下。当時の法は男性にしか王位継承権がありませんでした。

フィオナ王女殿下は、本当に双子でした。但し、五星の双子ではありませんでした。MRの違う異性の双子。フィオナ王女殿下は五星ですが、双子の片方男児の方は四星でした。MRの違う双子は無事に生まれてくることがほとんどありません。一星と二星のような低いMRの双子でも1%以下。助かるのはMRの高い二星の片方のみ。そして母親は100%死亡します。150年以上前からの常識です。三星以上ならば無事に生まれた事例すらなくあるのは全員死亡した事例のみ。なのでもし授かったら、双子の胎児の命は諦めて母親の命を優先すべきなのです。」


「ええ。そうね。知っています。」


「フィオナ王女殿下の母親のマリアンヌ王妃陛下は産むことを選びました。もちろん周囲の反対にあいました。ですが、四星女性にとって五星の子供を得る最初で最後のチャンスなのです。マリアンヌ王妃陛下はどうしても子供を諦めることなんて出来ませんでした。


……。」


私は、母上に全てを話した。


「あなたは本当にご先祖様のレリーリアラ王太后陛下だと思います。私もそれほど詳しく知りませんでした。そうして、フィアレアラ皇女殿下は、あのフィオナ・マ・アール王女殿下なのですね。さらに、エリザベス王太后陛下だったとは…。

第二王子はナンダン王族家系五星の先祖返りなのですか?

…そう言われたら納得です。トーキタよりかは強いとは思いましたが、旧マ・アールやワントゥンよりも下だと思っていましたので。


分かりました。

皇女殿下の魔法の先生ならば私にお任せください。私も王家系五星です。ワントゥン公爵家系五星にはまだまだ負けませんし、皇女殿下に興味もあります。」


「ありがとうございます。母上。すぐそのように手配致します。皇女殿下は誰にも負けない力を得るまで大人しくする予定らしいですわ。昨日のパーティーでのサザリーナンダの令嬢とのトラブルを内密にして欲しいと言ってました。殿下のご希望通り箝口令を敷くつもりです。効果はあまりないと思いますが。」


「貴族の間で既に広がっていると思いますよ。みんな見ていましたので。」


「とりあえず、ですわ。フィオナ様が目立たず生きられる訳ありませんので。記憶を取り戻されていたのです。まだ国王陛下と兄上よりも魔力量は下らしいのですが、負けないと言っていました。フィアレアラ皇女殿下にはエリザベート様とフィオナ様がついていますし、フィアレアラ皇女殿下の魔力はフィオナ様の魔力と同じ『質』でした。」


「極上の『質』の回復魔法でしたわ。」


「フィオナ様ならば何でも出来ました。母上もフィオナ様にお会い出来ますわ。幻影ですが。でも『本物』ですわ。エリザベート様も。フィオナ様がフェリオ様との二重生活が出来ていたのもエリザベート様が助けてくれていたからなのです。フィオナ様は幻影でも本体でも時々片方の意識をエリザベート様に任されていましたから。」


「とても信じられない話ですが、信じますわ。」


「はい。母上。会えば分かります。幻影のフィオナ様もエリザベート様も20歳前後くらいの頃のお姿ですわ。お二人とも超美人ですわよ。私はもちろんフィオナ様ですが。」


「レリーリアラ王太后陛下は、フェリオ国王陛下の本当のお姿がフィオナ王女殿下だと知った上で妃になったのですか?」


「もちろんそうですわ。フィオナ様の妃は五人とも知っていました。エリアノーラ様以外元々全員フィオナ様の恋人でしたから。」


「五人?恋人?」


「はい。私は、ああ、レリーリアラの方ですね、初等学校二年生の頃からフィオナ様と付き合っていました。フェリオ様のプロポーズや婚約の話は全て断ってましたわ。同一人物と知ってましたがフィオナ様の方が好きでしたので。

フェリオ様の婚約者になったのは、フィオナ様がフェリオ様のお姿で王位を継ぐと言ったからですわ。フィオナ様のお姿では私を妃に出来ないと。で、仕方なくフェリオ様の婚約者になり、第一王妃になりました。

五人とは、帝国の第49代皇帝セシル・ヤ・マティス陛下ですわ。第50代皇帝エリザベート・F・ヤ・マティス陛下の母親の。エリザベート様は、先祖返りの強い魔力を持つ大皇帝と言われてますが、本当は先祖返りではありません。フィオナ様の娘だから、ですわ。」


「まさか、そんなことって?どういうことなのですか?」


「そのうち説明しますわ。母上。とても長い話になりますので。私からでもいいですし、エリザベート様かフィオナ様に聞いていただいてもいいかと思いますわ。申し訳ありませんが、私は、今からたくさんやることがありますので、これにて失礼致します。母上は、兄上と姪のクララに昨日のパーティーでのトラブルのことを話すことは控えるように言っておいてください。皇女殿下は目立ちたくないらしいので。

それと、先ほどのお話しは、内密にお願いいたします。兄上にも。まだ誰にも言わないで下さい。」


私は、自分の母親を見方にし、明日からの魔法の授業と今後に備えた。

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