21.第一王妃 クノン 3
翌日の闇の曜日の午前中、フィアレアラ皇女殿下に会いに行く。今日は殿下と少しお話して、王宮をご案内することになっている。
殿下は、昨日のパーティーの件を気にしていた。そして、出来れば魔力勝負のことを広めないで欲しいと。私は、殿下に理由を尋ねた。殿下は目立ちたくないからだと言った。そして、その理由も。
前世の記憶から帝国の体質は知っている。そして、それは今も変わっていない。エリザベート様の頃にはそんなことはなかったのだが、子孫の時代にはまた元に戻っているのかも知れない。
涙が出てきた。フィアレアラ皇女殿下の性格はフィオナ様と全く違う。あの時代、セシル様の母親のセフィーア陛下がどんな幼少時代を過ごしていたのかを聞いた時のことを思い出した。フィアレアラ皇女殿下の父親は、殿下の魔力が周りにバレないように必死で殿下を守っていたらしいのだ。
私は、殿下に出来るだけ昨日の魔力勝負のことを広めないようにすると約束したが、たくさんの人たちが見ていたので難しいとは言った。
「そうですよね。誰にも負けないくらい強くなるまで大人しくするつもりでしたのに。ところで、第一王妃陛下は何故私の留学を希望なされたのですか?」
私にそう尋ねる殿下に、我が国の王族王女様だった「レアラ・レリ・アール・ヤ・マティス皇女殿下」の子孫がどうなったかが気になったからだと答える。そして、フィアレアラ皇女殿下は昔我が国にとても強い魔力の王女殿下がいたことを知っているかと聞く。
「知っています。私のルーツですから。私の祖先の『レアラ・レリ・アール・ヤ・マティス皇女様』は、その王女殿下の双子の兄の孫ですから。私、自分が『レアラ・レリ・アール・ヤ・マティス皇女様』の子孫だと証明する物を持ってます。」
もしかして、二刀対の短刀かと聞く。殿下はそうだと答えた。見せて欲しいというと、殿下は見せてくれた。
再び涙が溢れ出す。この短刀は間違いなくフィオナ様が孫娘のレアラに渡した短刀だ。そして、もう1刀は、エリザベート様がフィオナ様が渡した短刀と対になるように依頼して作り、レアラに渡した短刀だった。
「フィオナ様。フィオナ様。お会いしたい。フィオナ様。」
私は、無意識に彼女の名前を呼び泣いていた。
「第一王妃陛下?大丈夫ですか?失礼しますね。」
フィアレアラ皇女殿下は私を抱きしめ、優しい魔力で私を癒してくれた。懐かしいフィオナ様と同じ魔力で。
「ありがとうございます。フィオナ様。もう大丈夫ですわ。」
「えっ?」
「あっ、申し訳ありません。フィアレアラ皇女殿下。昔の話をしていたので思わず。間違えてしまいましたわ。」
「第一王妃陛下?」
「はい。」
「私がフィオナ・マ・アールをもっと詳しく知っていると言ったら信じますか?」
「はい。」
もしかして、フィアレアラ皇女殿下は、既にフィオナ様だった頃の記憶を取り戻しているのだろうか?期待してしまう。
「第一王妃陛下は…誰なのですか?」
「私ですか?私は、この国の第一王妃ですわ。今も昔も。」
「…もしかして、フィオナの第一王妃?レリーリアラ・マ・アール?」
「はい。」
『レリーリアラ?』
突然現れたフィオナ様の幻影。フィオナ様。私のフィオナ様だ。
「フィオナ様。ああ、やっぱりフィアレアラ皇女殿下はフィオナ様でしたわ。私の思ったとおり。」
『【レリーリアラちゃんなの?】』
幻影のエリザベート様だ。フィアレアラ皇女殿下は、フィオナ様とエリザベート様の両方の記憶を受け継いでいる。
「【エリザベート様。お久しぶりです。はい。レリーリアラです。】」
「フィオナの第一王妃だったのね…。
だから、私の留学を希望したってことですか?第一王妃陛下の本当の目的は何でしょうか?私にどうして欲しいのですか?
ってか、フィオナもエリザベートも私の許可なく勝手に私の魔力使って出て来ないでよ。…まあ、気持ちは分かるからいいけれど。」
「フィアレアラ皇女殿下。殿下は、私のフィオナ様と全然違いますね。私にそのようにおっしゃるところが。フィオナ様もエリザベート様と違いましたが、フィアレアラ皇女殿下も同じですね。フィオナ様やエリザベート様の記憶があってもフィアレアラ皇女殿下はフィアレアラ皇女殿下なのですね。」
「私の前世と前々世があの二人なんてイヤなくらいよ。」
『『【失礼な子孫ね、フィアレアラ。いいじゃない。あなたは私達よ。】』』
「はい、はい。そうですね~。でも私が本体よ。あなた達が勝手なことばかりするならば、協力しないわよ。存在消すわよ。」
『『【…。悪かったわよ。フィアレアラ。】』』
「ふふっ。さっきまでフィオナ様とは全然違うって思いましたが、やっぱりなんとなくはフィオナ様ですわね。フィオナ様とエリザベート様もいつもそんな感じでお話しになられてました。
ところで幻影を二体もなんて魔力は大丈夫なのですか?」
「問題ありません。一、二時間くらいですが。」
「ならば、三人で聞いていただけますか?私がかつて『レリーリアラ・マ・アール』であった頃の記憶を思い出した頃のことも含めて。少しだけ大人の話になりますがご了承ください。」
私は、三人に今までのことを全てお話しした。
………………
『だいたい私達が思っていた通りね。あなたがレリーリアラだったことは計算外だけど。ランセル許さないわ。私のレリーリアラになんてことを。』
「もうあなたの妃じゃないわよ。フィオナ。」
『私のレリーリアラよ。私達の子孫のクセに許せないわ。ランセルはこの国をどうするつもりなのかしら?滅ぼすつもりならば私がやってやるわ。我が子孫を私がこの手で滅ぼしてあげるわ。』
『【…どこかで聞いたことのある台詞ね、フィオナ。私、昔、あなたの祖父に同じようなことを言った気がするわ。】』
「あのね~。フィオナもエリザベートも第一王妃陛下も、勘違いしてもらったら困るのだけど、私、何の権限もない留学中の皇族の皇女なのよ。来年度から初等学校二年生の子供よ。魔力だってまだ子供魔力なの。大人には勝てないわ。」
「えっ?そうなのですか?フィオナ様?」
『フィアレアラはね、目立たないように生きてきたから私やエリザベートよりも魔力が少ないのよ。そのうち同じくらいにはなるとは思うのだけど分からないわ。毎日空々になるまで魔力を使っていたエリザベートや父上の呪詛のせいで強制的に毎日魔力を使わされていた私みたいに増えるかどうか怪しいのよ。私達が八歳の頃よりも全然ダメなのよ。』
「悪かったわね。幻影消すわよ。協力しないわよ。」
「ふふっ。やっぱりフィオナ様と同一人物ですわね、フィアレアラ皇女殿下。殿下は私の孫の『レアラ』の子孫なのですわよね?」
「だからそう言っています。」
「殿下は『レアラ』の名前の由来を知ってますか?」
「知りません。フィオナの記憶の開放は12歳くらいまでですから。」
「12歳ですか?全部ではないのですね。ならば、レアラのことは分からないで当たり前ですわね。
私達の息子の第二王子ヴィアランが私が侍女をやっていた時の偽名を自分の娘につけたのですわ。『レリーリアラ』→『レ・・・アラ』→『レアラ』ですわ。」
「それがどうしたのですか?」
「殿下が『レアラ』ならば、私の孫ですわ。殿下は私に協力していただけると思っています。私の『レアラ』なのですから。」
「…。」
「ふふっ。可愛い。抱いていいですか?フィアレアラ皇女殿下。私の『レアラ』が帰ってきたと思ってもいいですか?私のフィオナ様が戻ってきたと思っていいですか?愛してますわ。『レアラ』『フィオナ様』。あの頃と同じで。」
驚くフィアレアラ皇女殿下をさっさと幻影ごと抱きしめる。愛してる。愛してる。愛してる。彼女に私の気持ちを伝える。
「分かった。分かりましたから。フィオナの妃。私のご先祖様。ご先祖様にご協力いたしますから、離してください。それにもう私魔力が限界なのです。幻影は消しますが、落ち着いてください。もう幻影二体作って二時間以上経ちます。魔力切れになりそうですから。」
『そうね。フィアレアラのショボい子供魔力ならばそろそろ限界ね。私達は消えるわ。またね。レリーリアラ。』
幻影フィオナ様とエリザベート様は消えてしまった。




