第一章第三話
スマホを取り出すと、デジャヴを検索する凛。横に来て覗き込む雪村。
「デジャヴ、既視感の事。既視感は、実際は一度も体験した事がないのに、既にどこかで体験した事の様に感じる現象。……だって。」
同じ所を検索した雪村が続く。
「既視感とは逆に、見慣れてるはずの物が未知の物に感じられる事を未視感と言う……か。俺の場合はこのどっちでもない。やっぱ予知夢なのか?それとも正夢か?」
「今調べてる。……夢で見た通りの事が現実になるのは『正夢』、そうでないのが『予知夢』だってさ。」
続いて雪村も同じ所を読んでいる。
「うーん……。予知夢は、未来の何かを暗示するメッセージが夢に出る……か。どっちにしても科学的証明には至ってないらしい……。凛は俺の夢、どっちだと思う?」
「雪村のノートを100%信じるとしたら、予知夢じゃあないよね。」
「じゃあ正夢って事かぁ……。ってマジでっ⁉︎」
「だからそのノートの内容を信じるならって話じゃん。今から1番近い日付はどれなの?……何なら確かめちゃう?」
凛のこの一言で、雪村のノート3冊が切り刻まれて、時間毎に別のノートに切り貼りされていく事になるのだった。
「別に赤いバッテンのやつは貼らなくてもいいんじゃね?」
「ばーか。過去に起こった事は証拠に取っとかなきゃ。」
「なるほど、過去のは証拠にか……。中学の頃から書いてたから、結構有るなぁ。」
「ちゃんと年月日、時間毎に並べる。じゃないと、これから来るのか過ぎた事なのか分かんないからね。」
「全部が年まで分からないから、順に並べるってのはむずかしくない?つか、何で凛が俺の夢にハマってんの?」
夕方近くなって、雪村の腹の虫が鳴いている。
「ねぇ、凛。晩ご飯、一緒に食べよ。」
「良いけど、買い出しが雪村で、作るのが私でしょ?ったくしょうがないわねー。」
凛はそう言って立ち上がると、冷蔵庫を開けた。
「これで何を作ればいいってかっ。先週と変わらんっ。」
「バイトの給料入ったばっかだから、リクエストに答えちゃうぜ〜〜〜。」
「小麦粉、玉ねぎ、紅生姜……。先週と変わってない(汗)。じゃあ卵とタコ買ってきて!で、たこ焼きにしよー。」
「せ、先週もやった様な……。」
「文句言わない!雪村は、さっさと買ってきてね。私はその間に準備しとくからさー。」
「へーい。」
先週もたこ焼きをやって過ごしたが、その食材の余りも残っていたので、結局またたこ焼きになるのだった。
実は凛の両親は関西出身で、たこ焼き器やホットプレート等、粉もん系調理の電化製品には事欠かず、雪村の部屋に持ち込んだたこ焼き器も凛であった。