第二章第四話
雪村の部屋に戻って、ベッドにもたれて考えている凛。
(今日の2つの夢の内、1つは起こらなかった事になるけど、どうしてかな?どっちも年まで書き留めてあるのに……)
ノートを開いて、にらめっこ状態の凛。
(年まで書かれてるんだから、どっちも信憑性は有ったはず。……なのに何で?同じ日のAM7:00とAM9:30……。)
コンビニで買い物して戻って来た雪村。
凛の表情に感想を述べる。
「どしたの?凛。そんなおっかない顔して。途中何か有った?」
「違う。ノート見て考えてた。」
「やっぱりさ、俺の思ってた通り、飛び越したから片方は起こらなかったんじゃないかなぁ……。」
「この赤いバッテンの間のヤツと同じなのかな?……年の記入が無いけど、月日は同じ。時間がずれて、片方の夢が飛び越した。今日みたいに。」
「俺はそうとしか思えないんだけど、凛はどう思う?」
凛はしばらくノートを見て考えていた。
結果がどうあれ、起こるであろう出来事が、詳細に掴めているだけでも凄い事だ。
「雪村、同じ日にちの夢。これって別々に見てるんでしょ?」
「うん、そう。凛とノートをまとめるまでは気にしてなかったんだ。でも、日にちまで同じ夢は少ないよね。残りは単独のばっかで。」
「そだね、ほとんどが年まで記入されてる。年が無いのはー……数えたら少ないよ。」
「年が書かれて無いって言うけど、年を分からせる様な話の流れの夢も有るんだ。それはそれで現実に起こってるよ、凛。」
「今日の2つの夢は、7時と9時半。9時半の出来事が前日に起こってしまい、それによって7時のは飛ばされたって事でいいのかな。雪村はそう感じてるんでしょ?」
「そうだと思うよ。今日はそれで決着が付く。あとはこの先新たに見た夢が同じ年月日のだったりするかもだし。年が分からなくても起こるものは起こる。」
約6年の中で書き留められた夢はノート3冊。730の夢が書かれていた。
雪村は、3日に1度は夢を見てはノートに書いていた事になる。
最初に凛とノートまとめをしてからも、3回追加(?)の夢が有った。その都度年月日を照らし合わせて、並び替えている。
「来月7月末までは何も無い。それまで落ち着いてて良いって事かな雪村?」
「うん。次のは、2035年7月29日。台風通過と、小貝川氾濫。時間が書いてない……。」
「時間は、29日近くになれば分かってくるんじゃない?」
「そうだね。もう夏休みに入ってるし、時間有るから、ニュースを見てれば分かるだろうね。」
「雪村の夢って現実的過ぎない?何で地元の川が氾濫する夢なんか見るかなぁ……。」
「仕方ないよ。見たんだから。それは地元も何も関係無いよ。そもそも身近な夢のが多いと思う。」
「確かに雪村の言う通り。赤いバッテンの夢を読んでれば地元中心なのが良く分かるって。」
「凛は大学進学するんでしょ?俺は進学する余裕は無いから就職だけど、夏休み、受験勉強はいいの?」
「私、大学は行かないと思う。姉さんを見てると行っても無駄な気がして……。将来有望なハイスペック男子探しに、大学行ってる様な姉みたいにはなりたくない。」
「言っとくけど、俺はハイスペック男子にはなれない。凛と一緒にいて楽しいけど、俺の将来は当てにならないよ。」
「はいはい。それは分かってる。雪村みたいに側で見守ってくれてるってのが1番居心地が良くて、それで付き合ってるんだし。よく同棲してるの?とか聞かれるけど、それも無い。」
「居心地ねー。俺と居て居心地が良いなら、それは凛の勝手だし、俺もバイトで居ない時有ったりしてすれ違うけど、それはそれでTVドラマみたいで良いなとか思ったりして……。」
「えー、夢ノートの話が、2人で告り合いっこしてるみたいになってきてるんだけどー。」
「ごめんごめん。俺が大学進学の話したから。……さて、朝ご飯、サンドイッチとおにぎり、どっちにする?」
「だから食材って言ったじゃん。料理すれば安く済むのに。」
「広いキッチンなら良いけど、朝っぱらから料理ってのはどうなの?大変じゃん?」
「私に気を使ってくれてるのか、それとも気まぐれなのか……。しょっちゅう作らされてるのは私ですがー……何か問題ありましたかー?」
「凛らしい意見。そこが好きなんだけどね。ありがとう。」
あ、2人、距離が近くなったと思ったら……Kiss……。
まぁ、この2人の距離感では当たり前っちゃー当たり前なのだが。それに、もう1度や2度ではなくなっている。