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狂信者

作者: 安岡 憙弘

狂信者

                               安岡 憙弘よしひろ

                Nさんへ

第一幕

後継者

ドーン ドーン ドーン ドーン  音小さく

舞台 左そでより白い衣に包まれた教祖でてくる


 教祖舞台中央へ棒に赤いふさのついた杖をもってる

    周りに信者5,6名あつまってくる

 

 教祖杖をかかえて

N教「よいか、おまえたちは何度言ってもわたしのいっているたった1つの事すらわからないのだな。」

信者A「そのようなことはございません。」

 N教「それでは私の言わんとしていることをひと言で申してみよ。一体どういうことになったのか。」

信者B「教祖様、どうかおねがいでございますからこれ以上娘をこの教団に関わらせるのはおやめください。」「どうしてもとおっしゃるのなら父親としても覚悟というものがございます。」「妻も娘の事は人一倍気をつかっております。」

教「この教団ではいまだに信仰というものは全くと言っていいほど足りてはおらぬ。何故ここになるまで放っておいたのじゃ。昔からついて来た者とて失敗ばかりしておる。腹だたしいと言ったらありはしない。娘を出せ。あの娘ならば真の信者となれよう。わたしの目に狂いはないわ。そら、差し出すのじゃ。」


 娘M泣きながら右そでより走りでてくる

 娘M周りの信者に取りおさえられる

 舞台中央にひきすえられた娘

 教祖が娘に尋問じんもんをする

教「娘、名は何と言うのか。」

信者B「リンダでございます。教祖様。」

「ではリンダ、お前の着ているその麻の粗末な服。それはだれがつくってお前に与えたものか。」

娘「しくしく・・・それは・・・母がつくってくださったのですが母は神様のおくり物ともうしておりました。」

教「ふむ。よろしい。お前の母の話は良いからお前の事を話しなさい。」

  

娘泣き崩れる父信者Bそっといたわる

教「これ、甘やかしてはいかん。父親はひっこんでおれ。」

B「これではかわいそうでございます。教祖様。なにとぞおゆるしを。」

教「そうか、ではひとまず退がるよい。しかし1つだけ娘に宿題がある。それができぬ時は娘はこの教団の大事な人間となってもらう。よいな。」


B「どのような宿題でございますか。

N「なに、簡単なことじゃ。金のなる木をもってまいれ。それだけのこと。むずかしくなかろう。」

一同「金のなる木だって?」

        教祖右へ2、3人と退場

信者C「かわいそうなものだな金のなる木などとは。きっとおゆるしになる気はないのであろう。」   

娘、B抱きあって右へ退場


 第二幕

トマトジュース

講堂こうどうに多くの人集まっている

  そこへ赤い衣着たN登場

     演壇に立つ

    しばらくシーン


Nコップの水をのみほす

N「エヘン」

 「みなさんこんにちわ。遠いところからよくおいでくださった。天のお恵みあっての事だろう。長年、私は団体のために走りつづけ、少し疲れてきた。そこで代わりになるものを探そうとししている。エヘン。私も若くない。どなたか志願されるものはないか。」

「そうか、やはりなかろう。ではここで私の最後の秘術を皆にさずける。その名はトマトジュースじゃ。ただの飲み物の名ではないぞ。カッと赤い閃光がきらめくから付けた名前じゃ。この術をうけた者はみな生命力が10%増えると言われておる。今から集中状態に入る。5分ほどまて。」


 しばらくめい想 やがて

   赤い閃光

  信者の一人がギャッと声を挙げる

N「どうじゃ、これでお前たちの命は長くなったのだ。その証拠に体があつくなったのがわかるであろう。わたしはこれで失礼するぞ。」

「よいか決して疑いをもってはならんぞ。」

N退場

 

 聴衆さわぎはじめる

聴A「おい、お前生命力が伸びた感じがするか?なんか目がよく見えるぜ。」

 B「オレは若返った気がする。さすが教祖様だ。彼女とよりを戻せるかも。」

 C「持病の胃痛を感じない。もしや・・・」


信者の代表数人集まる

代A「これは教祖のなした最後の奇蹟と認定しよう。あのお方以外にこんなことはできまい。」

 B「しかしなぜ命などというものが増えるのでしょうか。不可解でなりません。」

 C「キリストの言葉にも奇蹟はささいなものとあるでしょう。追求すべきものではないのですよ。」


その時会議にかの娘転がりこんでくる。

娘「まああわてないでください。まず最初にこれをご覧くださいませ。」

  

    緑の本をとりだす

娘「『金のなる木』と書いてございます。そこでこの本を一読しましたところ、ある事実に出くわしたのでございます。」

一同「それは一体?」

娘「それはでございますね、植物というものはおよそお金などとは程遠い暮らしをしています。キリストも植物にお金はいらないのに何故人間は必要とするのかお怒りになっているぐらいで。」

E「何が言いたい、娘。」

リンダ「わたくしにもわかりませんが生きるということは楽しむこと、そしてお金をかせぐことでございますね。そうすれば、金のなる木というのは植物のことではなく、われら人間のことではないでしょうか。人間こそがお金のなる木なのです。」

A「それはへ理屈というものだろう。人間が木だなどと、教祖様がご承知くださるはずはない。」


リンダの父かけこんでくる。

「リンダ、大変だ。来てくれ、教祖様が・・・


第三幕

心の中の


教祖の部屋

 教祖N倒れている

代表A、リンダ父かけよる 教祖様!


教祖うす目をひらく

N「おお、お前たちか。」

A「いかがなさいました、教祖様。」

N「なに、たいしたことではない。

  女じゃ。この年で女に手を出してしまい、まんまとだまされてしまったんじゃよ。」

 「宗教の教祖が人を好きになるなどと・・・

  どうか笑うてくれ。」

 「そこに金庫があるじゃろう。開けてみてくれ。番号は0915じゃ。」

Aあける

「何でございますか。この紙きれは?」 

N「金はすべてもっていかれてしもうた。

  そこにある紙にはある暗号がかいてある。

  口シ☆☼水

漢字のクチ、片かなのシ、星印、太陽の絵、それから漢字で水と書いてあろう、

これは祖父から伝わる暗号なのじゃ。私にもまだ解けん。だれか、わかる者はいるか?


一同しばらく考えこむ  

教祖しばらくだまりこんだあと

クチをひらく

N「・・・これは女の名かもしれん。ひょっとしてじゃが 恥ずかしいことに、祖父にも又大切な女がいたと聞いておる。ひょとしてこの女の名が、わが教団の行き詰った現状を打ちくだいてくれる気がするのだ。」

父「女が・・・」

N「うむ。ところで、リンダ、金のなる木は見つかったか。」

リ「金のなる木はございません。しかし、かねのなる木は、私達のなかにすべて植えられているのでございます。金が直接にころがりでてくるわけではございません。けど金というものは、自分を大切に生きる人間にはおのずとさずかるものでございましょう。人間は自分の中の木を大切にしていないから富を得られないのです。木にはたくさんの大切なものが詰まっています。優しさ、思慮深さ、愛、計画性、忍耐力、これらのものがあってこそ金の実は転がり出てくるのでございます。金のなる木とは、まさに1人1人がもっているのでございます。」


N起き上がってリンダの肩に手をおく

N「うぬ、お主は今まさに宗教の本質を突いたようじゃ。わたしには若い者の考える事についていくのは大変じゃ。だからこれからの時代、お前が教祖をやってくれてはとそうおもったのじゃよ。


第四幕

 ダンス


山のふもとの平地

      信者一同集まっている

      20人ほど舞台

     教祖あでやかな衣装で

           登場←金色つかう


教祖 みなを手で制す

「この先わが伝統ある教団はどうなってゆくのかそれは神のみがお知りである。われわれは神のおかげでここまでこれた真理に目覚めることもできた。神は不滅だそれはおぼえておきなさい。やがて真実がすべてをうまく配ちなさる。男も、女も、この国では自由で神から愛されている。わたしはもう多くはのぞまない。やがて炎が悪を焼き尽くし善が栄える。教団とは手と手をとり合うことだ。だれがみても幸せにに見えるものこそ本物であるのだから。踊ろう みなのもの。おおごえをあげてさわぐがよい。楽しめ。」

N「みなのもの、ブランデーでも飲まんか。」


   手に各自グラスをもつ

N「若い人間たちに!」

同のみほす 

N「リンダに無理一を言うのはやめておこう。だれもそんな事をしても喜ばんから。」

長1人で踊りはじめる

    クルクル

父「教祖様、あの暗号はどういう意味だったので。」

N対面対面して

N「わからぬ、女の名というのはたしかだ。つまりこういうことではないか。信仰の本質とは女。女の神秘に魂の救済がある。

人をすきになってみるのじゃ。だれでも幸福になる。もっと女を知りたくなる。知れば知るほど豊かになる。女がうまく生きる世の中は平和な世の中じゃ。わしももう1度恋愛してみようかのう。」


20人幸福のダンスをする

   10分ほどつづく



    終幕 



   


                 



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