館の幽霊
もんもーん。
形を得て目を覚ます。
近くに浮かぶ白い者達。
知識のない自身。
話すこともわからずただ心に従う。
側で眠る少女を残し、神秘の地を出る。
何故か白い者達は、それを拒もうとしてくるが興味はない。
その行動を無視し進むとついてきたが気にすることなく森を彷徨う。
……辿り着いたそこは、草木生い茂る館だったもの。
窓は割れ、所々壁は崩れ、荒れ果てている。
片方の扉は朽ち落ち、空きっぱなしの玄関から侵入すると突如突風がふきこみ館は姿を変えた。
明るい広間、風になびくカーテン、輝くシャンデリア。
割れた窓も崩れた壁も開放的な玄関も全てが全盛期の姿でそこにあった。
そして目の前には大きな絵が一枚。
ついてきた白い者達は、館を前にしてから騒がしかったが、この状況の変化でより騒ぎ出したが気にしない。
何かに呼ばれている気がして館の中を彷徨う。
大きな館の廊下を迷わず進むと招かれた一室。
戸が勝手に開いたが、疑問を感じる事なく入れば、淡く桃色にまとめられた子供部屋が迎えてくれた。
その中にあるレースを纏ったゆりかご。
今の自分には小さいが、吸い込まれるように横になれば強い睡魔に襲われた。
夢を見た。
楽しそうな二人とそれを見守る人達。
笑顔の絶えない館には更に吉報が舞い込む。
お腹が膨らむ女性と見守る人々。
庭の散歩、付き添う階段それから……出産。
これ以上ない幸せに包まれた館を最後に目を覚ます。
少し成長した体にゆりかごはより狭く感じ抜け出す。
見たものが何かとか、それらを理解したわけではないが、夢を辿るように館をまわる。
眠っては夢を見て辿る。夢はいつも同じところで終わりそれ以降もそれ以前も見ることはない。
繰り返すうちに夢は見なくなった。
更に長い時間を過ごすことで夢の内容も、自分がなぜここにいるのかも分からなくなり、どことなく疲労する体は、深い眠りについた。
久しぶりに夢を見た。
見た事のない一室には沢山の本。それから……。
「お嬢様、おはようございます。今日はこちらを学びましょう」
「お嬢様素晴らしいです! こちらはこうやって使うんですよ? ……そうです!完璧ですね」
「―――、髪を解かしてあげるわ、さぁ座って。あなたの髪は本当に綺麗ね」
「あぁ……、愛しい我が―――、いつまでも健やかに」
長い長い夢は人間として生きるための知識、世界の理、親愛なる魔女様の事を学んだ。
「あなたたちは……、誰?」
いつも同じ質問をするが、その度に首を振る彼ら。
どこか寂しそうな顔に胸が痛む。
時々、どうしても聞き取れない言葉があった。何を言っているのか気になったが、なんとなくそれは分ってしまった。
ただ、それを知るのは今ではない。
懐かしい気配に永い眠りから目を覚ます。
目の前には複数の存在。
「魔女?」
以下本編ネタバレ置き場から
戦乱の中、生まれて間もない娘を守る為、とある一家は魔女に願います。
消えたと思われた初代魔女は実は生きていて、ひっそりと世界を見守っていました。
両親やメイド達は、娘を守るために怪我を負う中必死で頼みました。
魔女はその願いを聞き入れ娘を受け取りますが、条件を出します。
自分はこの子を生かすことができても面倒をみることはできない。
いつか目覚め、時がくるまであなたたちがそばにいること。
死にゆく彼らは疑問に思いましたが、それでも生きられるならと承諾します。
魔女の力で体から抜け出した彼らは可愛らしいオバケとなって浮遊し、魔女についていきます。
魔女は、とある地下の神秘的な場所で、娘を寝かせると透明な膜で包みます。
この中では何も食べなくても生きることができ、長い時間をかけて成長していく加護がかけられていました。
その後、娘の魂だけ取り出し、リムという仮の名を与え家族に渡します。
まだ赤ん坊のリムは光の玉のような姿しか持てず、家族はそのめんどうをみることになります。
オバケ達は話すことはできませんが、意思を通じ合わせることができ、今後守りながらすごします。
長い時間をかけ形を得たリムは、大切なモノを探しに外に出てしまいます。
彼らもついていきたどり着いたのは以前住んでいた館の跡地でした。
幼い彼女には、記憶にないながらも心が求めたのか、その地で家族の帰りを待ち続けます。
近くにいることにも気付かずに……。
無意識に魔女の力の一部を使い、館の記憶を取り出し、修復しますが、本来の彼女の力ではないため、見せかけだけの館を取り戻します。
そこからまた長い時間を過ごすうちに、淡い記憶はより薄れ、自分がなぜここにいるのか分からずに住み着くこととなります。
体から離れてしまったのが原因か、霊体の成長は止まり深い眠りにつきました。
後となりますが、リチア達が訪れることによって、魔女の力にあてられ目を覚まします。
彼女はその場を離れませんが、旅の終盤、神殿の地下で彼女の本体を見つけます。
すぐには起こせませんが、更に後で本体は目覚め魂は元の体に戻ります。
ゆっくりと成長した体は、美しく長い髪を持った二十歳過ぎ位の美女となっていました。
霊体の時も起きた後もですが、赤ん坊から長い時間が始まったこと。
深い眠りについたこともあり、常に眠そうにしています。
目覚めた娘に安心した両親達は、最後に人の姿へと戻り最愛の娘に別れを告げ、大地へと還ります。
リアルさんがお困りなのでもうよいのです。
とりあえず何かのこせればよいのですよ。
国語力ないのつらい。