ヒトを集める人形の魔人
久しぶりに追加。
心が病んでる? 気のせいですって! ……タブン。
小説好きな人は読みにくいかもです。
もう頑張るの無理でした。
おやすみなさい。私のタイセツな……。
小さい頃から、他人とはどこか違うと感じていた。
望まぬ容姿、出来の悪い脳、負の感情。
落ちても、落ちても変わらない不幸。
堕ちるには十分だった。
責められるのに慣れた日々。
「あなたのせいなんだから謝りなさい」
一方的な決めつけで人のせいにする先生。
「どうして人任せにするの? 自分でやりなよ」
裏で動き、怒る理由を作る先輩。
「あなたの方がブスだから嫌」
人と比べ、見下す少女。
「どうして普通に産んだのに人と同じことができないの」
「化け物」
「あなたなんか産まなければよかった」
フツウでない事に不満な母。
それでも、もう疲れた。
迷う心。
大切だと思いながら、守らなければと思いながら擦り切れていく感情。
何が正しいのか、何をしたらいいのか、思考停止。
唯一の癒しは部屋にある人形。
私の大切な話し相手。
悲しい時も苦し時も側にいてくれて、聞いてくれて、見守ってくれる。
「みんなあなたと同じならいいのに」
静かな部屋にポツリと響く。
今日も全ての出来事を忘れるように眠り夢を見る。
目を開ければ、大切な彼女がいた。
いつもと同じ部屋のようでありどこか違く、歪んでいる。
そう……、これは夢だ。
夢は楽しい。この世界だけは私の自由。
ただ、一つだけ現実に存在しない物があった。
彼女はそれに座ってこちらを見ている。一冊の分厚い本だ。
抱き上げ、その本を片手でめくる。見慣れない文字の羅列。沢山の空白ページ。
――あなたにあげる。
彼女に話しかけられた。ここは夢だからそれくらいで驚きはしない。
「ありがとう。でも私には読めないし、ほとんど何も書いてないわ」
――大丈夫。よく見てあなたなら読めるはず。
言われた通りに目を通すと、それは先程と違って不思議と読めた。
少し驚いて、夢だという事を思い出す。
――あなたがわたしを受け入れるなら、それを読み上げて。わたしは、あなたと一つになりたいわ。
少し思案し、受け入れる。
これは夢であって夢ではない。今ここで起きることは現実にも影響を及ぼす。
そう思うと、胸が高鳴るのを感じこれから起こるであろう変化に期待し読み上げる。
「小さな世界の小さな私。私はあなた」
――あなたはわたし。
「私とあなたを縫い付ける」
――わたしとあなたを縫い付ける。
彼女と共に読み上げると本が光だし、針と糸を紡ぐ。
大きな針と文字の糸。
私の体に彼女を縫い付ける。
痛みはなく、どこか心地よささえ感じる。
「一針縫えば、不老の体」
――二針縫えば、神秘の瞳。
「三針縫えば、無情の心」
――三針縫えば無情の心。
「あなたと私は一つになる」
――あなたとわたしは一つになる。
本は一際輝きだし、全てを包み込む。
目の前の眩しさに目を細めるが、耐え切れずに瞑る。
瞬間見えた彼女の笑みに喜びを感じながら意識を落とし、現実へと引き戻された。
先程とは違う眩しい光に目を覚ます。朝だ。
手を見ても変わった気がせず夢かと落胆する。
顔を洗いに洗面所へと向かう。
途中ですれ違ったのは母。可哀そうであり、憎くもあり、私のタイセツなモノ。
「あなた誰!?」
私を見るなり驚く母。朝から機嫌が悪いのかと少々身構えるがどこか様子がおかしい。
不思議に思いそつなく過ごすために首を傾げ返事をする。
「ママどうかしたの?」
青ざめる母を後に洗面所へと向かう。
備え付けの鏡に自身を映せばすぐに理由が分かった。
白い肌に金色の長い髪。深い海のような青い瞳。
「私のお人形さんだ」
夢ではなかった。
やはりこれは現実だ。嬉しさに心は踊り母の元へと戻る。
「ママ見て私可愛いでしょ?」
目の前でくるくると回り、かつて見せたことのない笑顔を向ける。
反応をみようと立ち止まり振り返れば、より青ざめた母の顔。
「化け物。……本当に化け物じゃない! なんでフツウの子供じゃないの!! なんで…ナンデ……」
――あぁ……、やっぱりダメなのか。わたしを受け入れてはくれないのね。
落胆で最後の心は消えた。
もう迷う必要はない。
本の1ページ目を開き、針と糸を紡ぐ。
「ママ、もう苦しまなくていいよ。わたしと同じお人形さんにしてあげるね」
心臓を針で一突。文字の糸が全身に絡みつき姿を変える。
悲鳴もなかった。
目の前にあるのは、どこか母に似た愛らしい人形。
「一番大事にしてあげるね。ダイスキなママ」
それからはわたしを作り出すのに役に立った人たちに会いに行った。
「こんにちは。わたしのお人形さん」
次のページを開いて針で一突。
わたしに怯えにげた人にも一突。
なんて可愛いお人形さんたち。もう何も寂しくはないわ。
気が付いたら町には誰もいなくなっていた。
一番大きな家を選び、ふかふかの椅子に深く腰掛ける。
私の後ろには、沢山の人間が並んでいる。
おはよう。わたしの大切な人間さん。
ここまで読んでくれてありがとう。