愛を貫く薔薇の魔人
本編から抜き取り。
おじーちゃんが語ってたからそのまま。
愛してる。
私の彼は人当たりが良く、皆に好かれている自慢の恋人だった。
そんな私と彼にはこんな話があるの。
これは小さな村の仲睦まじかった二人の愛憎劇である。
とある村に一組の若い恋人がいた。
男は人当たりが良く皆に好かれ頼られていたが、女の方は嫉妬深く男に近づく者が許せなかった……。
どれくらいかたったころ男に誰一人近づかなくなったらしい。
男が疑問に思いとある女人に話を聞いてみると、恋人の女が男の見ぬとこで近づくものに手を上げていたそうだ。
話を終え男は家に帰って恋人について悩んだ。自分の目で見ていないのに信じるのはどうか……と。
しかしそこでふと不安に思った今日話した女人は無事なのか、不安になり慌てて女人の家に行くとそこには恋人が立っていた。
手には血が乾いて黒くなった薔薇を持って。
男をみると嬉しそうに駆け寄り『やったわ! あなたにまとわりつく邪魔な虫を退治したの。見てこの薔薇、とてもキレイでしょ?』男は狂ってると思った。
その場で女に別れを告げ傷ついた女人を介抱したそうだ。
驚くことに嫉妬深い女は何も言わず村からいなくなり村には平穏が訪れた。
傷ついた女人は男を慕っていたらしく介抱してるうちに二人は自然と惹かれ合い恋人となった……が幸せは長く続かなかった。
『憎い憎い憎い……彼に近づくもの全てが憎い』女は諦めたわけではない。
『そうだ…邪魔なら消せばいいんだ…そうだミンナコロシテシマエバイイ』憎しみは日に日に増しその日は訪れる。
恋人となった二人が楽しそうに歩いていると目の前にボロボロになった女が現れた。『アナタはワタシのモノなのになぜ他のオンナといるの? アァ……綺麗な花だからゴミ虫が纏わりつくのね……。ワタシがトリノゾイテアゲルワ!!』女が突然叫びだすと憎悪が女を纏い黒き薔薇の魔人と化していた。
騒ぎに気付いた村人が駆け付けたが女の視界に入ると次々に殺されていった……鋭いトゲで心臓を貫かれ……。
最後に残った女人の方は見るも無残だったそうだ……男の前で全身を貫かれ絶命。
男の方は生きたまま、女が愛おしそうに抱きどこかへ連れて行った。
…なんて噂話が流れてるの。
おかしいわ。だって彼も私を愛しているもの。
でも、確かに全員殺してあげたわ。
私の物に手をだして苦しむことなく死ねるなんて運がいい。
流石にあの女は許せなかったけど。
彼? 彼は今反省中なの…綺麗でしょ?
そう語る彼女の側には、氷の棺で、あの時と変わることない姿のまま永遠とも思える時を眠り続けている男がいた。
愛してる。
愛してる。
永遠に。
氷と永遠は別の子の力。
綺麗な花には棘があった。




