神様の呼吸
春が行方を晦まして
気づけば知らない蝶が舞う
初夏と虱と青嵐と
ゆくみを帯びた晴天の
真昼の月が
ぽっこり浮かぶのと
子どもが
ちょっとおどかすような顔して
野良猫に近寄りつつ
またわたしに笑いかけて
人差し指たてれば
世界がきみをすきになるの
きみは魔法使い
その魔法にかかれば
生きてしまいたくなるから
きみはわたしのひかり
そしてわたしはきみのために
きみは きっと
わたしじゃないだれかのために
いつか愛をつかう
手段としてというか
暮らしとして
まさに時を待って
これからの季節はさんざめきながら
あふれだす思いを受けとめてくれるの
信じられなくても
世界がきみを愛すのが
いつか感じられる
信じられなくても
神様の呼吸が
いつかやさしく吹きかかる
おさなさが
春とともにどこかへ
行方晦ますのを待っていると
なんとなく
さみしい