スッピンデレラも楽じゃないっ!
かーやーです!
初めて短編を書いてみました。是非読んでください!
お願いします!
「桃子〜今日ちょっと違う仕事あるから、シンデレラ変わってくれない?」
「えっ!無理ですよ〜…」
「途中からだから大丈夫大丈夫!お願いねー」
私にそんな事を言ってきたのは、私よりも3つ先輩で美人の美月先輩。私と同じ、《絵本俳優》をしている。
ここは絵本の中の世界。人間界にいるみんなが読んでいる絵本を、私達が作っている。しかもみんなが絵本を読んでいる時に、リアルタイムで。つまり絵本俳優は常に生放送で演じなきゃいけない。
この世界にはシンデレラのお城も、ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家も、実際に存在しているの。シンデレラの王子様だって、本当にいる。
今日大人気絵本作家の美月先輩に頼まれたのは、あの有名な《シンデレラ》。これに選ばれた俳優は、容姿端麗で性格もいい人だって証明されたって事なの。
つまり、代役といえどもシンデレラを任された事はとっても光栄なんだけど…
問題は、私がイチッミリも可愛くないって事!
一重の重ーいまぶたに、大きい鼻、スタイルだって良くないし、ニキビだって沢山ある!今まで演じた役は、3匹の子豚やヘンゼルとグレーテルの魔女くらいしかないん
そしてもう一つ問題が…
私が途中からシンデレラを演じなければならない事!
美月先輩の話によると、シンデレラは昨日のお昼に途中まで図書館で読み聞かせをしていて、今日のお昼に途中からまた読み聞かせをするらしい。
これがどう言うことかと言うと…
シンデレラの顔が急に変わるってこと!つまり作画崩壊!
つまり読者の方々から苦情が来るわけで…そうなると給料が減るし、仕事も少なくなる。そして私のあるのかないのか分からないプライドも傷つく。
そして、お金が無くなり馬小屋にて孤独死…なんて事もあるかもしれないの!あぁシンデレラによって孤独死する女。シェイクスピア以上の悲劇だよ!
なんて自分の心の中で嘆いたところで、今日私がシンデレラを演じなければいけない事は変わらないんだけどね。
あぁ、今からでも読み聞かせが中止になるか、隕石がここに落ちてくればいいのに…
『せんせー早く読んでよー。』
『由奈ちゃんちょっと待ってね。隼人くんが来てないから。』
イヤフォンの中から、子供と先生の声がきこえてくる。私は今シンデレラのドレスを着て、かぼちゃの馬車に乗りながら、読み聞かせが始まるのを待っていた。
私が付けているこのイヤフォンは、読み聞かせをしている周りの反応が全て聞こえるようになっている。
今は隼人くんとやらを待っているらしい。
隼人くん〜出来るだけゆっくり来てね〜。出来るもんなら来なくたって良いのよー。もう緊張する〜。
『あっ!隼人くん来た!』
おい隼人!
話した事も見たこともない隼人くんに怒りを覚えながらも、監督が指でカウントをし始めた。
3、2、1!
『ガタゴトガタゴト、シンデレラは馬車に乗って舞踏会に向かいます。ガタゴトガタゴト。』
先生の声がイヤフォンから聞こえてくると、私は演技を始める。すると、すかさず子供達のツッコミがイヤフォンから聞こえてきた。
『ねぇ、昨日のシンデレラとお顔が違うよー。昨日はもっと可愛かった。』
『由奈ちゃん、多分今日のシンデレラはお化粧してないんだよ。僕のママもお化粧しないと全然違うもん!』
『そっか。じゃあ今日はスッピンデレラだね!』
『スッピンデレラ!スッピンデレラ!』
みんな〜元気〜?お姉さんはすんごく怒ってるから元気じゃないよ〜。みんなも大人になったらきっと分かるよ〜。顔面偏差値ってやつをさぁぁぁぁぁ!
とは言えず…
「あっ!あれがお城よ!王子様がいるのね!」
さっき大慌てで確認したセリフを、高い声で叫んだ。
『きっと今日はスッピンデレラだから、王子様も振り向いてくれないよ。』
『そーそー。』
今にもイヤフォンを投げ捨てたかったけど、先生のナレーションが聞こえなくなるので、それは出来ない。
馬車を降りてお城の中に入ると、ドレスを着た女性とタキシードを着た男性達が、クラシックに合わせて踊っていた。
「王子様はどこかしら?」
重ーいドレスを引っ張りながら王子様を探しているフリをする。もちろん王子様がどこにいるのかは、あらかじめ知っていた。
『きっと王子様はスッピンデレラと踊りたくないから、隠れてんだよ。』
『うん、王子様はもっと可愛くてスタイルがいい人と結婚したいはず!』
ブスでスタイルが悪いスッピンデレラで悪かったわね!
『なんかスッピンデレラ、顔が怒ってるよ〜。』
それは君たちのせいだよぉ〜。
私が我を忘れて子供たちへの怒りをあらわにしていると、私の前に王子様が近寄ってきた。
おぉ、来た来た!待望の王子様!王子様役を演じるのは、有名なイケメン絵本俳優の優樹先輩!ずっと前から会ってみたかったんだよね。
「え?」
「は?」
私と王子様は、思わずそんな声を出してしまったのだ。なぜなら…
「なんで優樹先輩じゃないの?」
「なんで美月先輩じゃないんだ?」
そう、目の前にいたのはイケメンの優樹先輩じゃなくて、同期でのろまの蒼真だった!
『なんか王子様もイケメンじゃないよ〜。』
『お腹も出ておデブだし…』
子供達からのブーイングに初めて共感しながらも、小声で話し合う。
「なんでいるの?私は美月先輩の代役なんだけど…」
「僕も優樹先輩に、美月先輩と共演しないかって言われて…」
なるほど、つまりスッピンデレラとデブ王子ってわけだ。まぁこれなら、仲間ができていいかも…
「あぁシンデレラ、僕と踊っていただけませんか?」
「はい、喜んで!」
そう言って私たちは手を取って踊り出した。その間にも、イヤフォンからは子供達のブーイングは静まらず…
『何でデブ王子は、こんなスッピンデレラと踊りたくなるんだろ〜。それに、何でスッピンデレラもこんなデブ王子と踊るんだろ〜ね。』
『目にガラス玉でも入ってるんだよ!』
『あっそうか!それに、ダメなものどうし引かれるんだよ。』
あのねぇ君たちぃ、私はデブ王子を好きな訳ではないんだよ。じゃあ、何で一緒に踊ってるかって?それはね、大人になったらこういうこともしていかないと、社会において邪魔者になっちゃうからだよぉ。覚えておいてねぇ。
「お前、なんか顔が怖えーぞ。」
「あっ、ごめん。」
蒼真に指摘されて、我に返った。表情筋を限界まで上げて、取り繕う。こんなのが見られたら、減給間違いなしだ。気をつけないと…
そのまま時間は流れて行き、12時を知らせる鐘がボーンボーンと鳴った。
「私はもう帰らなければいけません、ごめんなさい。」
「待ってくれ、シンデレラ!」
走り出した私を走って追う王子様。ここでいかに階段に、さりげなくガラスの靴を落とせるかが勝負どころだ。頑張れ私!
1番理想の靴の落とし場所は、上から20段目の真ん中より右に5センチずれた所!
走りながら、少しずつ足を靴が脱げやすい角度にもっていく。
さぁ、今だ!靴を脱げ!
って、あれ?何で脱げないの?靴をわざと引きずって脱ごうとしても、靴は私の足にぴったりくっついている。
『スッピンデレラは、最初から可愛くないから別にみすぼらしくなっても、おんなじだよね。』
『うん。デブ王子もスッピンデレラを追いかけなくていいよ。』
う、うるさい!私は今靴を脱ぐのに必死なの!
私は階段に靴の角を引っ掛けて、靴を脱がそうとした。その時!
「バタン!」
体が前に傾くと、そのまま私の体は階段に打ち付けた!そして半分くらい残った階段を、私の体はコロコロと転がっていく。
だ、誰かぁ助けてぇ〜。私死んじゃうぅ〜。
『ハハハッ、スッピンデレラが転がってる!』
『ハハハッ、スッピンデレラって馬鹿だね!』
子供たちの声に反抗する気力もなく…私は階段の下にゴロンと寝そべったまま、動かないでいた。ふと前を見ると、呆れた様子の監督が口パクで《アドリブ》と言っている。この状態でどうアドリブをしろと言うのだ。
「シンデレラ、大丈夫ですか?」
「はい、ありがとうございます。」
「そんなおっちょこちょいなシンデレラが好きです。結婚してください。」
「はい!」
蒼真は私の返事を聞くと、私をお姫様抱っこしてお城へと階段を登り始めた。すかさず、それっぽいBGMが流れる。
『なんか今日のシンデレラは少しお話が違ったね〜。』
『スッピンデレラだからじゃない?』
『世の中やっぱり顔なんだよ。』
『そっか。』
子供達の最後のツッコミが入ったところで、読み聞かせが終わった。
「まぁたまにはいいんじゃない、スッピンデレラも。」
なんて監督が言ってきたけど、シンデレラと王子様が出会って1日で結婚を決めたり、子供達に世の中顔だと言う事を悟らせてしまった事以外は良いだろう。
まぁ一つ言えるとするならば…
スッピンデレラも楽じゃないっ!
最後まで読んでくださって、ありがとうございます!
もし良ければ、連載の方も読んでみて下さい!