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暗がりで出会った二人

「ちぇ~・・・あの兄ちゃん。どこにもいないや」


 自分に携帯ゲーム機を貸してくれた匂坂の事を探していた進藤翔は、見つからない彼の姿に不満げに唇を尖らせている。

 翔は彼の事を探し回って疲れてしまったのか、その場に座り込んでしまっていた。


「あれ?ここ、どこだろ?何か変な匂いするな・・・」


 何も考えずに匂坂の事を探していたためか、それとも少年特有の冒険心のためか、良く分からない場所に迷い込んでしまった翔は、きょろきょろと辺りを窺っている。

 そこは薄暗く、どこか埃っぽい空気と共に、何かツーんとした刺激臭が漂ってくる場所であった。


「ま、別にいっか。ちょっと休んでよっと」


 そこは地下からくみ上げた温泉を、お風呂として丁度いい温度へと温めるためのボイラー室だろう。

 ここを管理する従業員の管理意識が低いためか、燃料を扱い火気厳禁の筈のこの場にタバコの吸殻が幾つも落ちているのが見受けられ、果ては百円ライターまでもが転がっていた。

 それはこの場所が、いつ火事になってもおかしくないことを示している。

 しかしそんな事も気にも留めない翔は、疲れた足を伸ばすとゲーム機を取り出して、それで遊び始めてしまう。

 薄暗いこの部屋ではそれが放つ光は目立ち、漂う埃を浮かび上がらせるように煌々と輝いていた。


「・・・それ、なぁに?」


 その光に、導かれるように近づいてくる者もいる。

 それはこの寒さに、蛾や蝶の類ではないだろう。

 事実その声を掛けてきたのは、長い髪をなびかせる幼い少女であった。


「うわっ!?び、びっくりしたぁ・・・」


 突然現れた少女に、翔は驚きひっくり返りそうになってしまう。

 彼がそれを何とか耐えて見せたのは、その声を掛けてきた存在が同じ年頃の少女だったからだろうか。


「あ、お前さっきの・・・何だよ、どっから来たんだよ?」

「ねぇねぇ!そのピコピコって、何なの?」


 落ち着いてよく見れば、その少女は先ほど翔が見かけた少女であった。

 とりあえず彼女が得体の知れない存在ではないと知って落ち着いた翔は、どこか突き放すような態度で彼女に問い掛ける。

 しかし少女はそんな翔の言葉など耳に入らないという様子で、彼が手に持つ携帯ゲーム機にキラキラとした瞳を向けていた。


「何だよお前、知らないのかよ!これ、すっげぇ面白いんだぜ!!」

「そうなんだ!じゃあボクにも、あさひにもやらせて!ねぇねぇ、やらせてよ!!」


 翔が手に持つ携帯ゲーム機に興味津々といった様子の少女、あさひに翔は自慢げにそれを掲げて見せている。

 彼の言葉にそれが玩具の類だと理解したあさひは、それで遊びたいと翔の身体を揺すっては、全身でおねだりをしていた。


「え~・・・じゃあ、ちょっとだけだぞ?」

「やったー!!」


 自らの身体を揺すってはおねだりしてくるあさひに、翔はどこか渋った様子を見せていたが、結局その手に持っていたゲーム機を彼女へと差し出している。

 それは彼の背けた顔に浮かんでいる、ニヤついた表情を見れば理由も分かるだろう。

 頭へと取り付けたホッケーマスクを後頭部へと回しているあさひはまさしく、美少女といってもおかしくない容姿を見せていた。


「ねぇねぇ!これ、どうやればいいの?」

「ったく、仕方ないなぁ。ほら、ここをこうして・・・」


 喜び勇んでゲーム機を受け取ったあさひはしかし、それの動かし方が分からずに首を捻ってしまっている。

 そんな彼女の姿に、翔は面倒臭くて仕方がないというポーズを取りながら、その動かし方を説明していた。


「あ!動いた、動いたよ!!?」

「おい!画面から目を離すなって!!」


 翔の教えによってようやくそのゲームの動かし方を知ったあさひは、成功したそれに彼の方へと顔を向けては歓声を上げている。

 それはゲームのプレイ中、決してやってはならない行為だろう。

 事実、翔はそんな彼女の振る舞いを叱責して、ゲームに集中するように怒っていた。


「そ、そうだった!あれ?これは、どうすればいいの?」

「そこは、そいつを・・・」

「あ、そんな事出来るんだ・・・」


 翔の言葉に素直に反省の態度を見せるあさひは、すぐに次の障害にぶつかってその解法を彼へと尋ねている。

 その声に、翔は画面を指し示しながら、彼なりに分かりやすく説明していた。

 そんな二人のやり取りは、この薄暗いボイラー室に別の人間が訪れるまで、ずっと繰り返されていた。

 ここまでお読み下さり、ありがとうございます。

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