7.お勉強します
結論をいうと、髪の色も変えることが出来た。
毛染めのイメージ!
すごい、私。
ただ、髪の色を変えると目の色が元に戻った。
そして目の色を変えると髪の色が元に戻る。
うん、そこまですごくなかった。
たくさん使って練習すれば、そのうち両方できるようになるということで、基本的には目の色のほうを常に変えておくことにする。
髪の色についてはまだ髪も短いし、出歩くときは帽子を被ることにした。
外出する前に、目の色を変える魔法がどのくらいの時間もつか確認してからのほうが良いということで、次にマルグリット様が来てくれる3日後まで検証することにして、確認できたら外出許可が出ることになった。
他の魔法については、一度マルグリット様が一緒の時に使ってみてから使用許可を出してくれることになり、それまでは自分で勝手に試さないこと、と厳命された。
ちょっと悔しいが仕方がない。暴走経験があるから怖いしね。
聞き分けが良いので大丈夫ですよ、そんなに心配しなくても。
しかしそれなら3日後まで待てない問題が一つ。
「じょーか!じょーかだけ、つかいたい」
トイレの時に父さま登場は辛い。
『浄化』と発音できないから無理かと思っていたけれど、別に声に出さなくても使えるなら問題ない。
汚れを落とす…浄化!
さっと手の平で体の汚れを掃うようにすると、体もすっきりとしたけれど、立っていた床まで磨かれた気がする。
うーむ。
「あらら…上手…だけど、魔力が大きいから調節が難しいのね。浄化は危なくないから使ってもいいけど、目の色が戻っているから気をつけてね」
どうも色を維持しながら他の魔法を使うことが出来ないらしい。
不器用なのかもしれない。
慣れで解決しますように。
仕方がないので目の検証ができるまでは浄化は諦めることにした。
***
その日は昼前から、お昼寝前まで目の色を維持できた。
ほんの数時間だ。その後は起きてから夜寝る前まで維持。
次の日は朝変えて、お昼寝前まで維持、起きてから夜寝る前まで維持。
時間がまちまちでよく分からないな、と思っていたけど、よくよく考えると寝ようとすると解けている気がする。
なので今度はお昼寝をせずに耐えることにしてみた。
いつものお昼寝タイムでも問題なく維持出来ている。その後夕方に眠気の限界が来て、母さまに見てもらったら金に戻っていた。
やはり睡眠をきっかけに魔法が解けているようだ。
コンタクトレンズを入れたまま寝ると目に良くない、という意識が原因な気がしてならない。
魔法だから関係ないよ!大丈夫だよ!と思い込んだら長期間いけるかもしれないけれど、とりあえずは寝起きに気をつけようと思う。
次にマルグリット様が来てくれてから検証結果を伝え、無事に外出許可をいただいた。
そして今回から他の簡単な魔法の練習を始めることになった。
どうも私は魔力の微調整が苦手らしく、コップ1杯程度の水を出そうとして部屋を水浸しにしたり、微風を起こそうとして暴風を巻き起こす。
髪がぼさぼさになってしまった。部屋は乾いたけど。
火は危ないので、もう少し調節できるようになるまで禁止になった。
マルグリット様が来ない日は、想像力に繋がるので色々経験させてあげて下さいというお宿題をいただき、母さまと公園に行ったりおじいさま、おばあさまに会いに行ったり、リンデル商会のお店を見せてもらったりした。
おじいさまとおばあさまには目の事は秘密で、髪のことだけ知らせた。
とても熱が高かったから、と同情してくれてすごく優しかった。
お店のほうも案内してくれたけど、子どもには危ないからとさーっと抱っこで見てまわっただけだった。
うちは主に生活に便利な魔道具や各種回復薬なども扱っているみたい。
マルグリット様は薬を作っているらしく、うちとも契約しているようだ。
それで私が倒れたとき、丁度店に来ていたらしい。
それにしても2歳児、動くのが結構大変。
すぐ疲れてしまう。
午前中外出して午後お昼寝、起きてから本を読んでもらったり母さまが家事をしているのを横目に家で遊んだり魔法の自主練習して1日が終わる。
魔法については、主に目の色を変えて維持したまま他の魔法を使う練習だ。
一人で使っていい魔法は浄化のみなので、母さまに見てもらいながら浄化するたび目を確認する。
色を変える、浄化、確認、色を変える、浄化、確認という簡単な作業だ。
10日もすれば何となく感覚が掴めてきて、魔法を使っても目の色が戻る回数が減ってきた。
そのうちただ浄化も勿体無いので、家中まわって部屋の浄化を日課にすれば綺麗になったと父さまと母さまに大変褒められた。
浄化一つとってみても、調節は難しい。
一部屋一気に浄化するのはさっと出来ても、皿一枚綺麗にしようと思うとなかなか難しいのだ。
こういうのはとにかく反復練習がものをいう。
息をするように使えるようになりたい。
他には文字の勉強をはじめることにした。
母さまが読んでくれる本は、夜は寝ないと魔物に連れて行かれるとかいった子ども向けのものだ。
子どもだから当然だけれども。
本は高価なのかどうか分からないけど、母さまが読んでくれるのは薄い本2冊だけ。
しかも触らせてもらえない。
仕方がないので勉強したいアピールとして、自分の名前を書きたい、母さまの、父さまのも教えて、と興味全開にしてみる。
生活に困っていない家庭のようなので、子どもが意欲を見せると親は食いついてくれるはず、という目論見だったのだがうまくいったようだ。
はじめに習う文字一覧を母さまが書いてくれた。
日本語の50音のように一文字で音を持つタイプの字のようで、本気を出せばすぐに覚えられると思う。
母さまが物を数えたりしているのを聞いている限り十進法ぽいので、数字を覚えれば計算も出来そうだ。
子どもの頃は神童だけど、大人になったら埋もれてしまうタイプに成長してしまいそうなので、難しくて分からないふりをしながら勉強したいと思う。
魔法に関しては、毎日浄化で掃除のお手伝いをしている効果か、2ヶ月もすれば目の色を保ったまま問題なく魔法が使えるようになった。
調節に関してはまだうまくいかないけど、部屋を水浸しにするようなことはなくなった。
この2ヶ月様子を見た結果、魔力が暴走することも無さそうだし、調節はまだまだだがうまく扱えている。
これからも練習していくぞ、と意気込んでいたのに。
あまりに早く習得したものだから忘れていたけど、そもそも目の色の問題解決のためだったわよね、とマルグリット様からお話があって、一旦家庭教師は終わることになってしまった。