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16.マリアンナ 3(クラウディオ視点)

もう一人の平民の話を聞いて、絶対にそれはマリオではないと確信した。

ならば目の前の少女がマリオなのではないか。


念のため幼い頃からの話を聞く。

私を助けたせいで記憶まで失っていたなんて。

その状態であの日々を過ごしていたのか?


そしてマルグリットの家で生活していた頃のことを思い出させるように話を繋いだ。



これまで私の前では絶対に解れなかったその表情が、昔を思い出してほにゃりと崩れる。


マリオ…!

大好きだったマリオの笑顔だ。


面影が重なって、この少女がマリオ以外に有り得ないと思った。


マリオと呼べば、不安そうに『兄さま』と返ってきた。


信じられない。

これは現実なんだろうか。


幸せな夢を見ているだけなのでは?



確かめるように、マリアンナを己の胸に抱き寄せる。

抱き締めても消えない。

確かな現実だった。


「黙っていてごめんなさい」

『女性だと』黙っていてごめんなさい、その言葉を聞いた瞬間、自分の腕の中のマリアンナが柔らかいことに突然気が付いた。

小さくて、柔らかい女性の体。


慌ててその身を離す。


急激に意識してしまい顔が熱くなった。



「殿下」と呼ばれて急激にその熱が冷める。

分厚い壁を間に置かれたように感じて苛ついた。


次にそのように壁を置いたらお仕置きしよう。




「えっ、どうして?」


マリアンナがシロに向いて何か聞いている。


「どうしてそんな大事なことを…!」

「そうでした。私のせいです」


シロの言葉が聞こえないのがもどかしい。


「シロは何と?」

「あ…『なんだ、やっぱり王子と知り合いだったんだな』と。

『お互いの魔力の匂いがぷんぷんしているのに知らないわけがないと思っていた』そうです。

身に着けていた魔石から魔力を感じていたんですね…」

「なぜシロはそれを言わなかったんだろうか」

「…私が他で見聞きしたことは絶対に話さないように厳命したので…」

「…そうか」


マリアンナはがっくりと項垂れた。


マリアンナには悪いがシロが伝えていれば確実に私が勝負に負けていただろう。

伝えなかったシロは良い仕事をした。



「そういえば、マリオ…マリアンナはそれが本来の姿なのか?」


今のマリアンナは茶色の髪に茶色い瞳だ。


「あ…『マリアンナ』の生まれつきはこうなんです。

シロの祝福のせいで髪の色が変わってしまって…


今は魔法で変えていて、本当はこっちですね」


マリアンナの髪が見覚えのある美しい白銀に変わる。

なんだ。ここにも答えがあったのか。


「目は…こちらが慣れているでしょうか」


ゆっくりと瞬きをしたマリアンナの瞳が、綺麗な薄青になっていた。


「眼鏡は勝負対策の変装用なのか?」


私との勝負に勝つために用意したのかと問いかければ、違いますと返事があった。


「えーと、これは…身の安全のためというか…」


そう言いながら眼鏡を外して、こちらに視線を向けたマリアンナに息をのんだ。

少女が女性に変わろうとしている時期の危うい色気に溢れているようで、とてつもなく美しかった。


髪は垢抜けないお下げのままだというのに。

うっかり惑わされそうだ。


「…私はこんな危ういものを5年も放置していたのか…」


どうして何も気にせず手放してしまえたのだろう。

…男だと思っていたからか。


黙っていてくれて良かった気がする。

こんな風に成長していると分かっていたら、どこにも出さずに閉じ込めていたかもしれない。



「眼鏡をかけて」


マリアンナが眼鏡をかけると、美しさがすっと抑えられて急にぼんやりしたイメージになった。

魔導具か。


「少し身の危険を感じることが多くなって、外では常に身に着けています」

「…どうか気を付けてくれ」


そういえばマリオは無防備で警戒心の欠片もなかった。


今まで無事だったということは、こうして自衛もできるようになったのか。


きっとマルグリットや、悔しいがエドガーの助けがあったのだろう。




…エドガーめ…


一人でマリアンナが美しく成長するのを見ていたと思うと、無性に腹が立った。





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