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47.お守り

「さて、どんなお守りにするか考えた?」


良い品質の魔石が手に入ったと言われ、マリアンナは夜にマルグリットの部屋に来ていた。


「それなんですが、ちょっと悩んでいます。

攻撃力は必要ないと思うので、守りのほうを補助するものがいいのですが…」


「そうねえ…」


ラノベ知識しかないけれど貴族にありがちな危機はなんだろう。

よくあるのは毒物にやられるとか、どこかのご令嬢に魅了をかけられて堕落していくみたいなやつだろうか。


「2つ付与できたりしますか?」


「付与魔法に適性があればいけるわね。マリーはどうか分からないけど。

付与した効果の強さは魔石の質によって強くなったり弱くなったりするけれど」


「手に入った魔石の質は良い方ですか?」


「うふふ、なかなかよ。見てみる?…ちょっとだけ足が出たけど、付き合いのある店だから値切ってきたわ」


実はちょっとどころではなかったので、足らなかった分はマルグリットが出した。

相手は王子なので、いつも身に着ける品として相応しいものが良いと判断したのだ。


マルグリットは木箱を持ってきて、マリアンナの前に差し出した。

蓋を開けると、赤い布に包まれている。


それをそっと開くと、ひし形の透明度の高い魔石が入っていた。

大きさは長いところで3センチもないくらいだろうか。


「わあ…綺麗ですね」


複雑にカットが入っていてキラキラと輝いている。


「これを貴族が持つに相応しい装飾品にしたりするのは大変だから、加工はディオに任せて石のまま渡してしまいましょう」


「分かりました」


そこまでするといくらかかるか考えるだけで恐ろしい。

好きな意匠もあるだろうし、任せてしまった方が良いような気がする。



「これを握って、何の効果を付けるか考えながら魔力を込めるのよ」


綺麗すぎてあまり触りたくないが仕方がない。

マリアンナは魔石を手に取った。

少し冷たい。


無事に効果がつけられるかどうか分からなくて、少し緊張していた。


「…効果がつけば万々歳、ですよね」


「ええ、そうよ。そんなに気負うことないわ」


マルグリットが気楽にやりなさい、と微笑んだ。


別に確かな効果が付かなくてもいいのだ。

自分の魔力さえ入っていれば。


「じゃあ…守ってもらえるようなものにしましょうか」


「結局、防御力を上げるような感じかしら」


「そうですね…」


マリアンナはじっと魔石に目をやって考える。


毒も魅了も防いで、兄さまを守ってもらえるように…。


「やってみます」


ぎゅっと魔石を握り込む。



(兄さまを害するあらゆるものから守ってね…あっ、兄さまは絶対男前になるだろうから特に魅惑には気を付けるようにしてくれると嬉しいわ)


普通のやり方とはかなり違っている気がするが、マリアンナは石に語りかけるように魔力を込めていった。


(兄さまのことをお願いします)



次の瞬間、マリアンナの気持ちに応えるように魔石が輝き、指の間から眩しい光が漏れた。


「ひゃっ!!」

「なに!?」


急激に体内の魔力を吸い取られるような感覚がして、眩暈と共に体がぐらりと揺れた。

テーブルを挟んで前に座っていたマルグリットが慌てて立ち上がったのが視界の端に入る。


力が入らなくて床に崩れ落ちそうなところを支えてもらった。


「う…」

「大変…!魔力切れ!?」


マルグリットはマリアンナを抱き上げ、ベッドに寝かせた。


「すぐ戻るわ」


マリアンナに言い残すと、マルグリットは音を立てないように部屋を出て行った。

そして言葉通りにすぐに戻ってきた。


「魔力回復薬よ。起きられる?」


マリアンナはマルグリットに背中を支えてもらうが、全く力が入らない。

瓶を口元にあてがってもらいやっと飲むことができた。

ほんの少し甘いので、マルグリットが作ったものだろう。


1本飲み切って、また寝かせてもらう。


少し休むと、体が少し熱を持ってきた。

腕を持ち上げようとして、手に魔石を握ったままだったことに気が付いた。


「…持ったままでした」


まだ起き上がれそうになかったので、そのままマルグリットに手を差し伸べる。


マルグリットが差し出した手の上で、握った手を開いた。


「わあ…」

「綺麗ね」


魔石はマリアンナの魔力の色であるピンクゴールドに染まっていて、明かりを反射して輝いていた。


「ごめんなさい、準備が足らなかったわ。まさか魔力切れを起こすなんて」

「いえ。私も予想外でした」


今までこれほど魔力を切らせたことなどなかったのだから仕方がない。


「少し回復してきた気がします」

「少しだけ?…中級だったんだけど。やっぱりマリーは容量が大きいのね」


起き上がれるくらいに回復して、マリアンナは体を起こした。


「ベッド、使わせてもらってありがとうございました」

「気にしないでいいのよ。今日はここで一緒に寝る?」


マルグリットの申し出はありがたいが、朝この部屋から出るところを見られるとまずい。


「いえ、もう動けるので大丈夫です」


マリアンナはゆっくりと立ち上がってみる。

まだ力は入らないが歩行に問題はなさそうだ。


「色々聞きたいけど、今日はもう休みましょう。

連続で飲むと体に悪いから、朝起きてからもう1本飲みなさい」



マリアンナは魔力回復薬を受け取って、部屋に戻った。



倒れこむようにベッドに横になったところから記憶がない。




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