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42.契約

マリアンナはギルドカードを手に、にまにまと笑ってしまう。

カードには名前の下に


506.01.25 初級傷薬取扱免許取得


と追加で印字されていた。


「マリーの手際が良かったからかしら。思ったより早く終わったわね」


もう帰りの馬車の中だ。


「約束の時間より少し早くなったけど、リンデル商会に納品に行ってもいいかしら。

ついでに『アイリス』の契約のことも話してきましょう」


「えっ、約束してたんですか?」


マルグリットの早すぎる行動に、マリアンナはぞくりと鳥肌が立った。


「ええ、会長ったら午前中はずっと空けておいてくれるらしいわよ」

「おじいさま…」


ギルドは店が立ち並ぶ一画にあるので、商会にはすぐに着いた。

店の正面からではなく、納品用の扉から中に入る。


「おはようございます」


マルグリットが声をかけると、即座に男性の声がした。


「おはようございます、マルグリット様!

お待ちしていました。さあ上へどうぞ」


「あら、会長自ら出迎えてくださるなんて…」


おじいさま…


リンデル商会会長、マリアンナの祖父だ。

にこにこと満面の笑みを浮かべてマルグリットを出迎えたが、その目はマリアンナに向けられている。

今は普段のマリアンナと容貌が違っているが、祖父母にも説明してもらっているので問題ない。

逆に取引をするなら見た目が違っていた方が良いようだった。



2人は会長の執務室に通された。

手前にソファーとテーブル、奥に執務机がある。

取り扱っている商品がいくつか並べられていた。



テーブルを挟んでマルグリットとマリアンナ、向かいに会長が腰掛けた。

使用人の女性が紅茶を出してくれたが、マリアンナの前にはオレンジ色の飲み物が置かれた。

以前遊びに来た時にマリアンナが美味しいと言ったジュースに違いない。



「私が納品している薬の一部…初級傷薬を今後は弟子のアイリスに担当してもらうつもりです。

こちらが免許になりますが、担当を変更してもよろしいですか?」


マルグリットがマリアンナにギルドカードを出すように指示する。


「おお…この歳で免許取得とは…!なんと素晴らしい才能をお持ちのお弟子さんですね!

もちろん担当の変更に異義はありません。どうかよろしくお願いします、アイリスさん」


とんだ茶番ですね!

マリアンナは心の中で突っ込んだが、表情には出さない。


「よろしくお願いします」


マリアンナはにっこりと笑った。



「では今後、初級傷薬の代金はアイリスのほうに入金をお願いします」

「えっ」


マルグリットの思いがけない話に、マリアンナは声を上げた。


「承知しました。ギルドカードの番号を控えさせていただきますね。

今後ともよろしくお願いいたします」




***



「先生!代金は私にって、どういうことですか?」

「そうそう、お金を下ろしたい時は一緒に行くから言ってね」


免許をもらった時に説明があったのだが、自分の登録番号がそのまま口座番号になっているらしい。

ギルドで入金したり下ろしたりできるのだ。


「いえ、そうではなく!私は作るだけで材料とか全部先生が準備してくれるのに、代金をいただくわけには」

「あら、材料費なんて大したことないわよ。瓶だって回収して再利用するんだし、薬草は近くに生えてるのよ。

それに初級傷薬の代金なんて微々たるものだし、お小遣いだと思ってとっておきなさい」


そう言われるとそうかもしれないが。


「来月からの納品分はお願いね。マリーは長期間の保存魔法が使えるから、毎日少しずつ作ってもいいわ。

今までは作っても消費できないから大量には作れなかったけど、これからは経験になるからどんどん作りましょうね。

私の労力も減るし、とっても助かるわ」


『たくさん作って経験を積む』それがマルグリットがマリアンナの免許取得を急いだ理由かもしれないと思い至った。



「はい…ありがとうございます。頑張ります」


お金については使わずに貯めておいて、いつかお礼をしよう。







マルグリットの家に馬車が到着する。

中に入るとディオが食堂のほうから出てきた。


「兄さま!合格できました!」

「そうか!おめでとう!」


ディオがマリアンナをぎゅっと抱きしめる。


マリアンナは証拠のギルドカードを見せようとして、女性名で登録したことを思い出した。



あああー!どうしよう!



ヒヤッとしたが、ディオがカードを見せろということはなくほっとする。

ギルド登録したことなどないだろうから、仕組みも知らないのかもしれない。


「実はな、マリオ…お祝いにと思って昼食を作ろうと思ったんだが…途中で料理人に追い出されてしまって…」

「ディオが皮むきした芋がマッシュポテトになったぞ」


「えっ!兄さまが皮むきしたんですか!?」


薬草を刻むことも上達しなくて、ずっとマリアンナが手伝っていたのだ。


「結局何もできなくて…悪かった」


「いえ!嬉しいです。マッシュポテト、一緒に食べましょう!」



何かしてくれようとした気持ちが嬉しい。




マリアンナはディオの手を引いて食堂に向かった。





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