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40.ギルド登録

「そのままで行くのはちょっと目立ちすぎじゃないか?

もっと地味に…眼鏡をかけて、ローブのフードも被って…そうだ、口元も隠せば」


「余計に目立ちます」


正式に弟子入りが決定したその足で、マルグリットはギルドに初級傷薬免許取得試験の予約に行ったらしく、マリアンナの両親に契約書を持ってきた時には既に試験日程が決まっていた。


今日はその試験日。


マリアンナはディオに変装させられようとしていた。


「ディオったら、こんなに過保護だったかしら」

「試験を受けに行くだけなのに…」


マルグリットとエドガーは呆れ顔だ。


「マリオはこんなに可愛いんだぞ!連れ去られたらどうする!」


ディオは真顔で反論する。


「あのですね、兄さま。私は平民で、いつも普通に生活しているんですよ」


さすがにまだ一人で出歩くことはないが、連れ去られるような身の危険を感じたことはない。


「そう、だったな…うん。

…こんな小さな子も安心して暮らせるんだな、王都は」


ディオはマリアンナの頭を撫でるが、その目はどこか遠くを見ているようだった。


「兄さま?」


「ああ、いや。何でもない。

…試験、頑張るんだぞ。マリオなら大丈夫だ」


ディオは今度はしっかりとマリオの目を見てその頭を撫でた。

その後しっかりとフードを被せる。


「フードくらいは被っていけ…いや、やはり眼鏡も必要だな…」


どこから持ってきたのか、マリアンナは眼鏡をかけさせられた。顔の大きさに比べて少し大きく、ずれてしまう。


「変装用の眼鏡だ。度は入っていないから大丈夫だろう。

…これはこれで可愛いな…どうしたらいいんだ」


「家からギルドまでずっと馬車なんだけど…まあいいわ。

ディオ、私がついてるから大丈夫よ。

そろそろ行きましょう、マリオ」


「はい!」





***




商業ギルドは王都の西側、店が立ち並ぶ区画の一番奥にあった。

石造りの歴史ある建物だ。


門には衛兵がいて、入っていく人や馬車を確認していた。


馬車から降ろしてもらったマリアンナは、緊張の面持ちでマルグリットの後に続いた。

階段を上って、重厚な両開きの扉を開く。


中は広いホールのようになっていて、長椅子が並んでいた。

長椅子の前に部門に分かれて受付が設けられているようだった。


見回すと、『木工』『鍛冶』『彫金』『調理』などの看板が見える。

朝早い時間だからかそれほど人は多くない。


「こっちよ」


マルグリットに促されて、マリアンナはそちらに向かった。

向かう先に『薬』の表示を見つけて、マリアンナの胸がどきどきと鳴りはじめる。


受付には若い女性が座っていて、マルグリットに気が付くとにこりと笑った。


「おはようございます、マルグリット様。

本日はギルド登録と試験ですね」


「ええ、早速お願いできるかしら。この子なんだけど」


マルグリットは隣のマリアンナを前に行くように促した。


「はい、ではこちらにおかけください」


女性は予約の際にマルグリットに聞いていたのか、マリアンナが前に出ても不審な顔はしなかった。


「ではこの登録用紙にお名前を書いてくださいね。

記入は代理でも構いませんが、署名は自筆でお願いします」


渡された用紙を見ると、内容はそれほど難しくないがマリアンナが書けるところは一つだけだった。


『登録名』の欄に”アイリス”と記入する。


事前に決めてきたマリアンナの登録名だ。


少し身構えていたのに年齢を書く必要はないようだ。


「先生、あとはお願いしていいですか?」


マリアンナはマルグリットにペンを渡す。



残りは『連絡先』と『後見人』『後見人登録番号』だったからだ。

弟子なので連絡先はマルグリット宅になる。



「ではこの内容で登録させていただきます。

アイリス様のギルドカードが出来上がるまで、少し説明させていただきますね」


受付の女性は登録用紙を奥のトレイに置くと前を向いた。

女性の後ろでは別の人が用紙を回収していく。


「まずはこのようなカードを発行いたします」


女性が厚紙でできた病院の診察券くらいの大きさの白いカードをマリアンナに見せた。


「本物には、これにお名前と番号が入ります。

最初はこのような簡易のカードになりますが、初級の傷薬、体力回復薬、魔力回復薬の3つの免許を取得されますと魔導具のカードに更新させていただきます。

魔導具のカードは読み取りの魔導具で免許取得状況が確認できますが、簡易カードのほうは取得免許をお名前の下に印字させていただくことになります」


ちなみに魔導具のカードはこのようになります、と女性が提示したカードは金属のドックタグのようだった。

青色で、穴が開いていて鎖を通せるようになっている。


「学園を卒業して資格証明書を持ってくると銀色になって、さらに上級の薬が作れるようになると黒になるのよ」


マルグリットが首から下げていたカードを服の下から出した。


黒いカードに銀の文字で登録番号とその下に『マルグリット』と印字されている。

かっこいい。



「お待たせしました。こちらがアイリス様のカードになります」


後ろから呼ばれた女性が、カードを持って帰ってきた。



渡されたカードを見てみると



5060125001

アイリス



と印字されていた。



ただ登録証をもらっただけなのに、マリアンナは少し大人になった気分になった。





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