32.ダンスの練習
誤字報告ありがとうごさいます。
ダンスの練習は、次の週マリアンナが実家から帰ってきてから始まった。
場所はほとんど使っていなかった裏の家の仮眠室だ。
マリアンナが帰っている間にベッドなど邪魔なものがなくなり広く感じた。
まずは姿勢から、とマリアンナとディオが向かい合う。
こっちの手はここ、この手はここ、もう少し近寄って背筋を伸ばして、とマルグリットに矯正されてなんとか姿勢が整った。
「基本のステップはさっき教えたとおりだから、1、2、3の手拍子に合わせて動いてみて」
マルグリットの手拍子に合わせて、2人で足を運ぶ。
マリアンナは1、2、3、としっかり足元を見ながら動いていたのに、足運びを間違えてしまってディオのつま先を踏みつけてしまった。
「わあ!ごめんなさい、兄さま!」
大慌てで足を引っ込める。
「大丈夫だ。防御しているからいくら踏んでもかまわない」
マリアンナが顔を上げると、至近距離でディオがくすくすと笑っていた。
「…ちょっとこの距離は心臓に悪いです」
マリアンナの顔が熱くなる。
「なぜだ?もっと近寄ることもあるのに」
ディオはそう言うなり、マリアンナの背中に手を回してぎゅっと抱きしめた。
「兄さま…私だからいいものの、こうやって女性を誑かしてはいけませんよ!」
「マリオは難しい言葉を知っているな」
「ちゃんと聞いてください」
「大丈夫だ。マリオだからこんなことができるに決まっている」
言外に『他の子にはしない』と聞こえて、マリアンナはきゅっと胸が痛くなる。
この兄さま…!将来とんでもない女誑しになるのでは…!
末恐ろしい!
「はいはい、2人とも!ダンスでその距離は、もっと大人になってからよ!」
パンパン!とマルグリットが手を叩いた。
マリアンナとディオはさっと姿勢を正す。
「マリオは肩の力を抜いて、足元を見ないようにしましょうね。
ディオは練習していたからステップは大丈夫だけど、マリオをリードしてあげられるくらいになるように頑張りましょう」
「兄さまの足を踏んでしまいそうで、つい見てしまいますね…」
「防御しているから怖がらなくていい。むしろ踏むつもりで来てもかまわない」
ディオの思い切った発言に、マリアンナは噴き出してしまった。
それ以降は肩の力が抜けて、マリアンナも基本のステップはそれなりにできた。
「はー、なんだか体が変です」
練習後、休憩を兼ねてお茶にしようと食堂に集まったところで、マリアンナは肩をぐるぐると回した。
「ふふ、変なところに力が入っていたものね」
「マリオでもできないことがあるんだな。少し安心した」
ディオがほっと息をつく。
「兄さま、私をなんだと思ってるんですか」
「まあ確かに、調節は苦手だったけど魔力の扱いはすぐできたし、ナイフもすぐ使えるしねえ」
「実は私もダンスくらいさっと出来るんじゃないかと思っていた」
エドガーも加わり、3人でうんうんと頷いている。
「魔力の扱いはたまたまで、ナイフは家で使ったことがあっただけです!」
「それはそうと、今日やってみて気が付いたんだけどあれはダメね。
男の子2人で踊っているようにしか見えないんだもの!」
「…何か問題が?」
「問題だらけよ!本番はヒラヒラのドレスを着た子を相手に踊るのよ?
ズボンの子相手とでは勝手が違うじゃない」
マルグリットが何を言い出すのか、嫌な予感がしてマリアンナは冷や汗が出た。
「マリオ、次回は女装しましょう」
なぜかディオがゲホゲホと咽込んだ。
ダンスについては超適当です。
は?と思ってもスルーしていただけると助かります。




