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27.偽装マリアンナ

今、私は『良い子』を演じている。

良い子というと語弊があるかもしれない。


『良い3歳児』を演じている。


兄さまがあまりに子どもらしくないので気にもしていなかったけれど、私の成長は普通じゃない。

私の普通で生活していると、父さまと母さまが「ん?」って顔をするのだ。


まだ帰宅して2日目だというのに疲れ果てていた。


わざと子どもらしく話し、わざと分からないふりをし、出来ないふりをする。


あれええ?私父さまと母さまとどんな風に会話してたっけ?!

普段男の子と女の子の差が出ないように丁寧に話していたら忘れてしまった。


普通に話そうと思えば思うほど話せない事件が発生しています。



言葉が拙いと誤魔化す点では良かったかもしれないけれど。



悩みながら生活していたら、父さまと母さまとの心の距離が離れてしまった気がする。

うわーん、どうしようー!




「母さま、おへや、きれいにしてくるね」


おいおい、私、午前中にも綺麗にしたよ!

どれだけ浄化するつもりだよ!


「マリー、いいからちょっとこっちにおいで」


家事室で作業をしていたカミラが、マリアンナを呼んだ。


ポンポン、とカミラの隣の椅子に座るように促され、マリアンナは大人しく従った。



「あのねマリー、色々と無理しなくていいのよ?」

「母さま?」


カミラはマリーの頭をそっと撫でた。


「マリーは優しいから、あまり変わっていたら父さまと母さまが悲しくなると思ったのかしら?

マリーがお話がとっても上手になっていることも、自分でお薬を作ったり、魔法もすごく上手く扱って、毎日お勉強も頑張ってるのも分かってるから、普通にしてていいのよ?」


息が止まるかと思った。


「母さま、知ってるの?」


定期的に書いていたあの拙い手紙ではそこまで書かなかった。


「ええ、マルグリット様がほとんど毎日手紙を届けてくれてたの」

「ええ!?」


聞いてない!


「父さまと母さまはどんなマリーでも大好きなんだからね。時々は驚くけど、マリーはすごいなって思ってるのよ?」

「そっか…ごめんなさい、母さま。普通にする」

「うん、そのほうが父さまも母さまも嬉しい」


どこか不自然だったのに気づかれていたみたいだ。



「あ!母さま体の具合はどう?気持ち悪くなったり辛かったりしない?赤ちゃん元気かな?」


自分のことばかり気になって母さまが身重なのを忘れてたあー!!

もう自己嫌悪だー!


「うふふ、大丈夫よ。

あなたの時と違って、今回はかなり楽なの。体調もいいわ」

「そっかー、良かった。お腹触ってもいい?」


開き直ったら嘘のように言葉が出てくる。


「ええ、もちろん!」


マリアンナはカミラのお腹にそっと手をやった。


「赤ちゃん、無事に大きくなって元気に生まれてくるんだよ。

お姉ちゃんが可愛がってあげるからねー」


よしよし、とお腹を撫でる。

ほんの少しだけお腹が膨らんできている気がした。



「…ねえ母さま、2歳までの私ってどんなだった?」


「そうねえ、今とそんなに変わってないんじゃないかしら。

とっても聞き分けが良くて泣かないし、色んなものに興味を持ってたし…話しはじめるのは遅かったかしら。


ああ、あとは魔法を見せたらすっごく興奮していたわ」



…前世の記憶を思い出す前から私は私だったのかもしれない…





***



「父さま、母さまに重いもの持たせちゃダメだからね!?

私がいない間もちゃんと助けてあげてね?いっぱい手伝って優しくするんだよ!?」

「ははは、すごいなマリー!ほんとはそんなにお話できるようになってたんだね」

「ちゃんと聞いてください」

「はい、すみません」



みんなで笑って、やっと『家族』に戻れた気がした。





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