24.防御の魔法2
「今日はここまでにしておくつもりだったんだが、どうする?調節までやるか?」
「早く外に行ってみたい。頼む」
ディオの即答により続けることになった。
「防御力の調節は、危ないと思ったときにそれに合わせて防御の強度を上げるように意識するんだ。
軽い衝撃に対して全力で守ると疲れるし、逆に刃物で襲われるような危機的状況で弱い守りだと意味が無い」
マリアンナとディオは頷く。
「例えば柔らかいボールがぶつかるくらいなら、今の薄さのまま強度を少し上げる。
刃物で刺されるくらいなら、厚くして強度も上げる」
ちょっとお待ちください。
意識して強度を上げているということは今までエドガーさんに不意打ち成功してたと思ってたのは気のせいだったのか!!
というか、咄嗟の際に見極めてそんな器用なことできるのは、余程魔力の扱いに慣れないと無理ではないですかね!!?
やっぱここは自動防御魔法でしょう。
オートマティックプロテクトー…うん、長い。
自動防御、どのように条件付けすると良いだろうか。
『自分に衝撃を受けたら傷つかないように守って欲しい』かな?
「エドガーさん、ちょっと攻撃してもらえますか?」
「いや、ちょっと散歩に行きませんか?くらいの感じで怖いこと言わないでくれる!?」
「あはは」
「笑い事じゃないよ!」
「いえ、本当にできるかどうか試したかっただけです。ボールをぶつけるくらいの…
ボールはないですかね、じゃあ火の玉でも出してもらって」
「逆に危ないから!」
問答の末水の玉をぶつけてもらうことになった。
「じゃあ軽くやるからね」
「はい、いつでもどうぞ!」
こぶし大の水球が、弧を描いて優しく飛んできた。
びしゃっ!とマリアンナの頭に当たる寸前で弾けたが、水分でびしょびしょになってしまった。
「痛くはなかったですが濡れました…」
「魔力の層は出来てたのにおかしいな?」
衝撃からは守ってもらえるようにしてたけど、濡れないようにはしてなかったからですかね?
『水分は通さない、服も守る』も追加する。
マリアンナは一旦体を乾かして、もう一度やってくれるようにエドガーにお願いした。
「いくぞ」
「お願いします」
今度は痛くも無かったし、濡れもしなかった。
「できました!」
「マリオは本当に恐ろしいヤツだな…」
「これは規格外だと思って気にしないほうが良いですよ、ディオ」
ディオががっくりと肩を落としている。
「いえ、エドガーさんみたいに器用にできそうにないので自動で発動するようにしただけです!
兄さまも出来ます!」
マリアンナは慌ててディオに駆け寄った。
「自動で?」
「はい、薬の蓋を開けたら自動で保存魔法が解除されるのと一緒です。
今のは前もって『自分に衝撃を受けたら傷つかないように守って欲しい』『水分は通さない、服も守る』と念じました。
水球が飛んできたときには何も意識していません」
「へえ、なるほどな」
「…私もやってみていいか?」
「もちろんです!」
ディオがエドガーに頼んで水球を投げてもらい、無事に発動した。
本当に自動でできるのか念を入れて、背を向けた状態で、だ。
「当たったのは分かったが、痛くもかゆくもなかった!」
「すごいです、兄さま!」
「いや、すごいのはマリオだ。本当に、すごい。私も負けてられないな」
私のは年の功なだけだよー!
「2人とも、その自動魔法だけど、他の人に教えないように」
「えっ、どうしてですか?」
「うん、ちょっとやってみたけど条件付けだけで結構魔力を消費する。
2人は全然平気みたいだけど、同じ年頃の子がやったら魔力切れどころか足らなくて卒倒するかもしれない」
「ひえ」
絶対に教えませーん!!
「分かった。絶対に教えない」
「はい!」
顔が強張ったディオとマリアンナに、エドガーはにやりと笑った。
「それに、教えたやつが敵になったら困るだろ?」
こわっ、貴族こわっ!
「え、エドガーさんは敵にならないでくださいね…?」
「マリオがディオの敵にならない限りは大丈夫だよ」
「一生味方です!!」
笑ってるけどその笑顔が冗談じゃなく怖いです、エドガーさん!!




