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23.防御の魔法1

「ディオ、ここでの生活も大分慣れたでしょう?そろそろ外に出てもいいんじゃないかと思うの」

「外か…!」


マルグリットの言葉を聞いて、ディオの顔に喜色が浮かんだ。


「ええ、もうすぐマリオが一時帰宅するし、出かけるならその時がいいかと思って」


今は午前の魔法の授業の時間だ。

いつもはエドガーに任せているマルグリットが珍しく出てきたためどうしたのかと思っていたところだった。


兄さまはあまり外に出たことないのかな?

私は母さまの買い物に付き合ったり、公園に行ったりしたことあるけど…


正直ここの毎日のほうが圧倒的に楽しかったりする。


帰った時に父さまと母さまに気づかれないようにしなきゃ…!




「で、そのために防御魔法を使えるようになってもらいます」


防御魔法!エドガーさんがいつもやってるやつですね!

おかげで不意打ちが成功しても全く効果が無い。悔しい。


ドライヤーをしている時に、えいっ!と後ろからやってしまおうと何度思ったか分からないけど、信用して体を預けてくれている人にやっちゃいけないよね。うん。



「ちょっと出かけるくらいでそこまで必要なのか?治安が悪いとは聞いてなかったが」

「いえ、さすがに王都は衛兵もいるし、エドガーが護衛につくから危ないことはないはずだけど、ディオ、貴方を預かっている身としては念には念を入れないと気がすまないの」

「…そうか」


うんうん、詳しくは聞いてないけど、兄さまは貴族のお坊ちゃまだもんね。

こんな美少年、無防備にうろうろしてたら攫われちゃいそう!


「認識阻害の魔法で、全然違う人に見せたりしないんですか?」


ふと、知識として聞いたばかりだった魔法の存在が浮かんだ。

言い方は悪いがもっと凡庸な、どこにでもいそうな平民の男の子みたいにすればいいのではないかと思ったのだ。


「いや…実はここへ来た時から、その魔法は使っている」

「ええっ!?」


思いがけないディオの発言に、マリアンナは大声を上げてしまった。


「元の生活に戻った時に、今の私と同じだと気づかれてはいけないんだ。

マリオ…騙すような真似をして、すまない」


今私が認識している兄さまは、本当の兄さまと違うように見えてるってことだよね?

貴族の子が市井で生活していると知られるわけにはいかないんだろう。

きっと弱味になったり醜聞になったりするんだよね。


んー、兄さまが帰ってしまったらもう分からなくなるのか…

胸が痛い。



マリアンナは色々言いたかったが、ディオの表情を見て何も言えなくなった。

心底辛そうだったのだ。



「…何でもっと平凡に見えるようにしなかったんですか!?」

「…は?」


この我侭は困らせるだけだから。

マリアンナは気持ちを飲み込んだ。


「いや、せっかく魔法をかけるならわざわざこんな美少年にしなくても…。

はっ!実は兄さま、本当はとてつもない不細工」

「そんなわけあるか!」


ふふ、空気変わったかな?


マリアンナが笑っていると、その頭を力強くごしごしと撫でられた。

顔を上げると、エドガーが今まで見たことがないほど優しい顔で笑っていた。


「この魔法は、同じ人だと認識できないだけで、全く違う顔にするわけじゃないからね」

「なるほど…ということは兄さまは元々美少年なんですね」


「いや、私よりマリオが余程美少年だぞ」

「はっ、そういえばそうでした!」

「自分で言うか」


笑いに包まれたところで、マルグリットから声がかかる。


「さ、それじゃあ練習しましょうか。マリオも覚えていて損はないから頑張ってできるようになりましょうね」

「はい!」


このままマルグリットが教えてくれるのかと思っていたら、納品があるからと出かけてしまった。

マルグリットはいつも忙しそうにしている。



「では防御魔法についてだが…全身を守る魔力の服を着る感じで、常に自分の周りに魔力を纏わせておくことができるように練習する」

「魔力を纏わせる、か」


ディオが自分の手の平を見ながらエドガーの言葉を繰り返した。


「ええ、まずはそれが出来るように。その後防御力の調節が出来るように練習する。

常に最大出力で防御していたら魔力がもたないからね」


ふむふむ、なるほど。

魔力を纏わせることができれば後は意外と簡単なのではないだろうか。

普段は魔力を纏うだけで、強い衝撃を受けたら自動で弾くように条件付ければ良さそうだ。

衝撃の度合いを設定するのが難しいかもしれないけど。



「では2人とも、やってみようか」


意識して、魔力を動かす。

マリアンナは体を魔力で包むようにイメージした。


「2人とも、厚すぎる。もっと薄く体にぴったり這わせて伸ばすような感じにするんだ」


「全身タイツか」


マリアンナが思わずその姿を想像した瞬間、ぴたっと体に魔力がフィットした感じがした。


「マリオ!すごいぞ、すごく綺麗に纏ってる!」


じっと睨むように見ていたエドガーが興奮していた。


「だが何故だ。顔だけ開いてるぞ」

「す、すみません…っ」


全身タイツを思い浮かべちゃったからね!

マリアンナは可笑しくて噴出しそうになるのを我慢しながら、顔も塞いだ。


「うん、いいな。マリオはしばらくそれを維持するように。ディオは…まだ無駄に魔力を出してるな」

「マリオ、さっき何と言った?タイツがどうとか」


聞かれてた!


「あ、えーと…靴下とか、手袋みたいな、体にぴったり合うように着るでしょう?

それを全身に伸ばしたんです。びよーんと」

「びよーん…」


そのまま想像したのだろう、ディオが変な顔になった。


「おお!2人ともいいぞ!こんなにすぐ出来ると思わなかった」


そうでしょう、そうでしょう。


「では、これからはそれを意識せず出来るようになるように、常に纏っておくように」



結構スパルタですよね!!




防御の魔法2を本日9時、3を12時に予約投稿しています。

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