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17.覚醒?

ブン、ブン、と剣を振るディオを少し遠目に見ながら、マリアンナはベンチに座ってグラスを片手に水を満たす練習をしていた。

最初にこの練習を始めてから10日ほど経って、マリアンナはかなり思い通りに魔力の調節ができるようになっていた。


ディオは毎朝早朝から体の鍛錬をしていて、負けじとマリアンナも早起きしてエドガーの目の届く範囲で魔法の練習をしていたのだ。

最近はディオの運動後にその水を差し入れするのが日課だ。


これ、冷たかったら気持ちいいかな?


前にマルグリットにクッキー生地を冷やしてもらったことがあるので水を冷やすこともできるはず。


冷やす…

水を入れたグラスを持って集中していると、周りに水滴がついてきた。

お、いいかも?と思った途端、一気に水が凍ってしまった。


わあああ!どうしよう!

グラスが割れそうだ、と焦ったマリアンナは咄嗟に左手の平の上に水の球体をだして右手に持っていたグラスをそこに浸けた。


流水解凍…みたいなことできないかな…


水をぐるぐる回し、しばらく待ってグラスを取り出すと、中の氷が溶けて無くなっていた。

あー良かった…


ふと、左手に乗ったままの水が気になった。

入れ物に入れなくても零れず維持できている。


マリアンナは一度魔力の放出を抑えて水を消し、今度は直径3センチほどの水球を出した。


これを凍らせれば…

ピシっと音を立てて水が氷になった。


できた!


氷をグラスに移す。それをさらに3個ほど作り、そこに水を注いだ。


「こおりみず!」



やった!と顔をあげれば、ディオとエドガーがじっとマリアンナに注目していた。


「あ!兄さま!おわりましたか?これどうぞ」


マリアンナはディオに駆け寄って、グラスを差し出した。


「「……」」


ディオはそれを一口こくり、と飲むとすぐにごくごくと音を立てて飲み干した。

カラン、と残った氷が鳴る。


「冷たくてうまい」


「よかったです!」


「マリオは…魔力の調節ができるようになったら覚醒したんじゃないのか?」

「最近はマリオが何かやっても『マリオだからな』で納得してしまうんだが」

「わかります」

「末恐ろしいな」

「そのうち何かとんでもないことをやりそうで…」

「ああ、目が離せない」



あの、どういう意味でしょうか。



「マリオ、私にも貰えるか」

「あ、はい。もちろんです」


出来上がった興奮のまま持ってきてしまったが、マリアンナはいつも水を2つ準備していた。

マリアンナは後ろを振り返り、もう一つそこに置かれたままのグラスを取りに行った。


少し考えこんで、グラスに手をかざす。

するとパラパラと細かい氷がグラスに落ちた。


おお、できたー!

まず水を出すよりそのまま氷のほうが効率いいと思ったんだよね!


そこに溢れないように水を入れて、エドガーに渡した。


「はい、できました」


「即座に改良する応用力…」

「本当に3歳なのか?」

「そういえばまだ3歳なんだった…」

「実は20歳くらいのやつが幼児に化けてるんじゃ…」



「もう!はやくのんで!」



何かする度このような会話になるので、最近は開き直ってきたマリアンナだった。




***



「マリオは、朝から魔法の練習して、この後もやるだろ?夜も風呂を入れたり色々手伝ってるじゃないか。

見たところこれまで一度も魔力切れを起こしていないようだけど、辛いのを黙ってたりはしないよな?」


休憩しようと3人でベンチに腰掛けると、エドガーが疑問の声を上げた。


「はい、もんだいないです」


「平民にも、時々魔力が多い者が生まれて学園に入学する者もいるらしいが、マリオはその中でも規格外ではないか?」

「こんなに小さくて、あれだけ魔法を使っても平気ということは貴族の中でもかなり魔力が多いかもしれない」

「そうなのですか?」


マリアンナは平民にしては魔力が多い方なのだと分かっていたが、貴族を入れてもそうだとは思っていなかった。


「それに加えてこの扱いに慣れる速さ…母上が保護しようと思ったのも頷ける」

「ほご、ですか?」

「ああ、今マリオに言っても意味がわかるかどうか分からないけど、このまま成長すればあらゆるところから狙われそうだ」


マリアンナは首を傾げた。


「その魔力を狙った貴族に囲われて子を…いや、何でもない。子どもに言うことではなかった」


ひえ。つまり魔力の大きい子を産ませるための道具にされちゃうみたいなことですかね?

平民だから、貴族が出てくれば逆らえない。


「だが、マリオは男なのだから、婿にと望まれることもあるのではないか?悪い事ばかりでもない」


その『マリオ』が実は女ということはディオだけが知らない。

そもそもマリアンナは子を産むわけにはいかないのだが、目をつけられてしまったら相手にはそんなことは関係のない話だ。


「めんどうなので、めだたないようにします」


このまま魔法がそこそこの平民として埋もれて生きていけるなら良いが、それはそれで商人の娘として結婚を望まれそうな立場だ。

魔法がそれなりに使える平民として学園に通い、成人後は魔術師として仕事に就いて一人で生活していくのが目標なのだ。


平和な生活を守るには、このまま勉強を続けて魔力を完璧にコントロールできるようにならなければ。

決してうっかり大きい魔法を暴発させたりすることのないように。



マリアンナは改めて心に誓った。



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