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15.新生活のはじまり


「では今日から新しい生活のはじまりとして、一日の予定を立てましょう」

「はい、せんせい!」


朝食後の食堂で、朝のミーティングが始まった。

エドガーとディオも一緒だ。


2人は早朝から走りこみをしたり鍛錬していたらしい。

将来何をするにしても体作りはしておいたらいいということみたいだ。貴族って大変。



「基本的にこちらの家は生活するだけで、鍛錬や魔法の訓練、薬を作ったりの作業、授業は全て扉の向こうの秘密の場所で行います」


あちらの秘密の場所、楽しみすぎます!

マリアンナは昨日は許可のみでまだ立ち入れてなかった。


「マリオはこっちでは一人になってもいいけど、あちらでは誰かと一緒にいるか居場所を私かエドガーに伝えるように」

「はい」


「午前中は魔法の訓練、最初は主に魔力の調節についてやりましょう。

体を休めてから午睡後は座学にしましょうか」

「はい!」


わーい、本格的なお勉強らしくなってきました!


「午前中の魔法の訓練についてはエドガー、お願いね」

「えっ、私ですか?」


エドガーは知らされていなかったようで、急な指名に驚いたようだ。


「ええ、ディオも一緒にやるといいでしょう。そうすると、どうせ貴方がついてるんだから。

少しくらい働かないと、肩身がせまいでしょう」


ふふふ、とマルグリットが黒い笑みをみせた。


「はい、協力させていただきマス」

「よろしい」


エドガーさん、いくつになっても母親には頭が上がらない感じですかね。

ですよね。





「では向こうの家を案内するわね」


うきうきわくわくです。



秘密の家のほうは、一言で言うとすごかった。

扉を出ると向こうも2階で、2階には図書室、マルグリットの執務室、休憩できる簡易ベッドのある部屋がある。

一階に降りるとトイレや小さめのキッチン、マルグリットが薬を作っている広めの薬室があった。見たことのない器具がたくさんあって、危険なものもあるのでそこは絶対に一人で立ち入らないようにと言われた。

怖いので絶対入りません。


一番すごかったのが外だ。

玄関扉を開けると、すぐ側に湖があり、山と木々に囲まれている。

家の周辺は開けていて、芝生が生えた土地が広がっていた。


「ここはどこですか!?」


予想外の光景に、マリアンナは思わず大声を上げてしまった。


「ふふふ、昔の仕事の報酬でこの辺一帯の土地をいただいたの。

ここは魔獣はいないけど、迷うといけないから森には入らないようにね。

魔法の練習や鍛錬はここでいくらでもやってちょうだい」


確かにこれだけの広さがあればいくらでも練習できるに違いない。


「あの扉も報酬のうちですか?この一帯も外から入れないようになっていますね。

母上はなかなか良いものを手に入れたようで…有意義に使わせていただきましょうね、ディオ」


ディオは複雑そうに苦笑した。



「それじゃあ私は薬室に篭るから、あとは頼んだわエドガー」


マルグリットはそう言い残してさっさと家に戻っていった。





***



「マリオは魔力の調節がしたいみたいだけれど、どんなことがしてみたいかな?」

「えーっと、コップ1杯の水を出したいです」

「よし、じゃあコップを借りてこよう」


エドガーは一度家に戻り、グラスを2つ持って出てきた。


「まずはディオ、やってみて」


エドガーがディオにグラスを1つ渡す。

受け取るとすぐにグラスに丁度よい量の水が入った。


「わあ、すごいです兄さま!」

「このくらい大した事ない」


「では次はマリオ」


マリアンナはもう一つのグラスを受け取った。


「ちょっとはなれますね」


念のため、マリアンナは2人から距離をとった。

グラスを目の前に持ってきて念じる。


(このグラスに水を満たす…)


ザバッっと水が溢れ、マリアンナはずぶ濡れになってしまった。


「「……」」

「これでもましになったんですよ」


前は一部屋水浸しにしたからね!


ぶわっと風が吹き、マリアンナの服が乾いた。

エドガーが風を起こしてくれたようだ。


「じゃあマリオはひたすら練習しよう」

「はい」


「気分が悪くなったり、目眩がしたり、体におかしいことがあったらすぐ言うんだぞ。

魔力切れを起こすと辛いからな」


ディオが心配そうにマリアンナを覗き込んだ。


「はい、兄さま」



マリアンナが練習していると、ディオは次の練習を始めたようだ。

ちょっと集中力が切れてそちらを見ていると、エドガーが持ったグラスに水を満たそうとしている。


「離れていると狙うのが難しいな」

「ディオの年齢から考えると十分上手ですよ」


そういうエドガーの腕の辺りに水がかかったりしている。かなり零れているようだ。

マリアンナはその様子を見ていてふと気がついた。


「あれ、エドガーさんはぬれないですか?」


それなりに水を浴びているようだったのに全く濡れていない。

マリアンナは折角乾かしてもらったのにまたずぶ濡れだ。


「ああ、防御魔法で守っている」


自分だけ!


「何なら消すこともできるぞ」


エドガーがグラスに手をかざすと、中の水が消えてしまった。


「わあ!」

「エドガーは簡単にやっているが、他人の魔法に干渉するのは結構難しいんだぞ」

「エドガーさんすごいんですね」


見た目はそんなに凄そうじゃないのに!っていう印象は黙っておこう。


「不意打ちで攻撃されたりするとさすがに難しいけどね。

私の練習にもなるから、ここで練習中ならいつでも不意打ちしてきていいよ」


「えっ!いいんですか!?」


そんなこと言われたらやるしかないよね!


「ああ、もちろ…」


言い終わらないうちにエドガーの頭上から水をぶっかけてみた。

盥1杯分くらいのつもりが浴槽1杯分くらいになった。


バッシャン!


「「うわっ!?」」


「わ!兄さまごめんなさい!」


防御したままだったエドガーは無事で、ディオがずぶ濡れだ。

呆然としている。


「だ、だいじょうぶですか!兄さま!」

「殿…、ディオ!」


エドガーも慌てている。



「くっ…」


ディオが口元を押さえた。


「きもちわるい!?」


更に震え始めた。




「…はははっ…!あはははっ」



笑ってた…!



「エドガー、お前は防御禁止だ!一人だけ無事なのはずるいぞ!」

「ええっ!そんな!」



その後防御を解いたエドガーもディオにずぶ濡れにされ、3人でひとしきり笑った。




誤字報告ありがとうございます。

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