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14.お風呂

マルグリットの家にはバスタブがあった。

マリアンナの家くらいの平民の中流層が使用するような家には元からついていない。

基本は浄化で済ませ、後は桶に水を汲んで体を拭くくらいしかしない。


「貴族だと、お風呂の支度も使用人がするし、やろうと思えば魔力が多いから魔法で水を張って温めることも自分でできるのよ。

この家は一人で使うから置いてないけど、マッサージ用の台があったりもするわね」


優雅ですね!


「おふろ、はいりたいです!」


日頃お風呂ないんだなーって気になっていたのですよ!


「もちろんいいけど…一人だと危ないかしら」


そういえば3歳になったばかりでした。

溺れたりとか気になりますかね?


「だいじょうぶ、おみずすくなくします」


「私と一緒に入るか?」


マリアンナとマルグリットの話が耳に入ったらしいディオが会話に加わった。


いえっ!あなたと一緒は一番まずいので!


「えっと…マリオは…一人で入ってみたいの、よね?」


マルグリットの無言の圧を感じる。


「はい!ちょうせん、します」


「そうか、マリオは偉いな」


あっさりとディオが引き下がり、マリアンナはほっと息をついた。



「それじゃあマリオ、せっかくだからお湯を張るのもやってみる?」

「はい!」


マルグリットの提案に、マリアンナはすかさず答える。


魔法!魔法のお勉強ですね!?


浴室に移動すると、なぜかエドガーとディオも一緒に来た。

お風呂入れるだけなんですけど…ちょっとした興味らしい。


「はい、ではここに半分くらいお水を出せるかしら」

「はい」


マリアンナはバスタブに両手をかざした。


えっと…前世のうちの家は給湯器がついてたので、温度設定してボタンをぴっと押すだけでお湯がたまってたんだよね。


39度に設定して、お湯を出す…普通だと溜まるまで時間がかかるから魔力を多めに流して…


「ああっ!」


どばっと一気にお湯がでて、浴槽から溢れんばかりになった。


「しっぱい…」


しまったー。そういえば溜めるお湯の量も最初に決められたのに!

次はやってみよう…何リットルくらいだったかなあ。


「ちょっと、これ…!」

「ああ」

「これは…っ」


「おおすぎました。すみません」


「「「違う!」」」


えっ、どうしたのですか。


「どうやってお湯を出したの?」


マルグリットが代表して聞いた。


「どうって…どう、でしょう?」


マリアンナは首を傾げた。

考えなくても脳内で温度設定しているのでお湯がでるのだ。



「…見たでしょ?やっぱりこの子、変わっているわ…」

「そうですね」「そうだな」


「ど、どうかしたのですか?」


何やら3人の反応がおかしくて、マリアンナは冷や汗をかいた。



「普通水をだしてから、火魔法の応用で温めるの。いきなり温かいお湯をだすなんて初めて見たわ」


「えっ!」


そうなんですか!?まずい…変わってるって言われてるし…!

どうしよう!


「ごめんなさい、へんなことして…」


マリアンナはしょんぼりと眉を下げた。


「いえ!いいのよ!変だけど良い意味よ!」

「そう、むしろすごい才能だ!」

「ああ、ずっと観察していたいな」


ちょっと兄さま、それおかしいです。



「マリオは、発想力が優れているのかもしれないな。

本当にすごいことなのだから、謝る必要はない。むしろ教えを請いたいくらいだ」


ディオがマリアンナを元気づけるように、その頭を撫でた。



「さあ、今日はマリオがたっぷりお湯を張ってくれたから、私と一緒に入りましょうか」


マルグリットがマリアンナを誘った。




***




「ここにある石鹸なんかは好きに使ってもらっていいわ。

これが髪を洗った後につけるオイルで、こっちが体用」


マルグリットが浴室に置いてある入れ物を指して順に説明する。


「わー、ありがとうございます」


お肌のお手入れはしたいですよねー!


「こういうのも自分で調合して作ってるのよ」


マルグリット様すごいです。


「せんせい、おはだすべすべできれいです」


「あらっ!マリーったら。貴方のこの瑞々しい肌にはさすがに劣るけど、いくつになっても美しさは保ちたいわよね!」


ですよね!


一通り体を洗ってから、2人で浴槽に入る。

マリアンナは体を支えてもらった。



「はー、丁度いい湯加減ね!」


そうでしょう、そうでしょう。



「そうだ、もう一緒に暮らすんだから、マリーちゃんの時もマリーって呼んでもいいかしら」

「はい、もちろん」


「男の子の格好するのは大変でしょう?無理言ってごめんなさいね」

「いいえ、ズボンがらくです」


むしろ動きやすいし最高ですよ!


「そういえば、マリーは目の色を変えるとき全く意識せず自然にできるようになってるわよね?」

「はい、なにもかんがえません」


何しろ目を開けたら勝手に変わるようになってますからね。


「エドガーがいるからちょっとハラハラしてたんだけど、全く気がついていないようだったからたいしたものよ」

「エドガーさん?」

「あの子、誰に似たのやら魔力の解析…その人の魔力を見極めるのが得意なの。

だから目の色や髪の色を魔法で変えてるのも分かるし、例えば姿を変えて見せるような幻惑魔法を使っても分かるらしいわ。魔力の動きが見えるのね」

「それはすごいですね」


付き人みたいなものかと思ってたらとんでもない人だった。


「でもあなたの目のように、魔力を使っていることを全く意識せずやっているようなのは分からないみたいね。

それなりに意識を集中しないといけないらしいし、本人も四六時中見ているわけではないでしょうしね」


それは良かったです。


「あなたの目については言ってないけど、女の子だっていうことは逆に助けになることもあるでしょうからエドガーには伝えてあるわ。だから自分で無理だって時は遠慮なくエドガーを利用しなさいね」

「はい、そうします」


「それからディオはどうだった?うまくやれそう?」

「はい、兄さまやさしいです」


マルグリットは嬉しそうに微笑んだ。


「あの子は…色々あったんだけど…あなたは何も意識せず、そのままのあなたで接して欲しいわ」

「はい」



一体どんな家庭で育ったんだろう。

マリアンナはぎゅっと胸が締め付けられた。




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