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2.異世界転生ってやつみたいです



幸月あやめ 30歳

地元で就職して実家暮らし。趣味はゲームと読書(主にラノベ)

過去、高校時代に恋人はできるものの卒業と同時にお別れ。

それから結婚もせず独り身だった。


改めて考えると何とも言えない人生だけど、高校卒業後上京した弟は滅多に帰ってこなくなってしまったし、田舎でのんびり両親の面倒を見て生きていくつもりだったのに。


いつものように自転車で出勤したはずが、気がついたら熱で苦しんでいた。


目が覚めたら2歳児とは…




目が覚めたばかりということと、2歳児に難しいことを説明しても意味がないと思われたのだろう。


私の名前が『マリアンナ』であり、今回倒れた熱は『魔力が暴走したから』ということだけお母さんが話してくれた。


私が『母さま』で、こっちが『父さま』よ、と美女とイケメンをそれぞれ指差しながら教えてくれる。


おお『父さま』と『母さま』って呼んでたんだね。了解了解。


それにしても魔力ですか!!

もうそれだけで異世界ではないですか!

伊達に過去転生やら転移やら、異世界もののラノベを読みまくった私ではない。

大好きだったゲーム…RPGで魔法とか使ってたのが実際できるのだろうか。


目が覚めてからの混乱、不安を興奮が上回ってきた。




「まほう、見たい」


魔法、という言葉が思い浮かぶ!

見せて、母さま!


「まあ、ふふ。元気になってきて良かったわ」


ベッドに横になりながらも興奮する私に、美女の笑顔が突き刺さる。

うーん、このお母さん若くて綺麗。


「平民は魔力が少ないから、たいした魔法は使えないのよ」


そう言いながら、私の額に手をかざしてきた。


「浄化」


ふわっと何かが抜けていったような感じがしたと思ったら、汗で濡れていた体と服がすっきりする。



うわあああああああ!それ一番使いたいやつです!

素敵です!!


しかし折角綺麗になったのにお布団が不快!

よいしょ、と気合を入れて寝返りを打つ。


「おふとんもー」



すると、ごめんね今日は私はもう無理みたい、と謝られて抱っこされると、父さまが代わりに綺麗にしてくれた。


どうやら寝たり食事を取ったりで魔力は回復するようだけれど、母さまはこの3日私が心配で碌に休めなかったらしい。


ごめんね。



体がすっきりすると、先ほどスープをいただいたためか出したくなってきた。

人間だもの、仕方がないですよね。


しかし2歳児、どうしたらいいのでしょうか。

もしかして連れて行ってもらわなければならないのでしょうか。


恥ずかし過ぎます。中身30歳の私が邪魔をします。



「と、トイレ!」


我慢ができなくなって恥を忍んで母さまに伝えると、何と父さまに抱っこされました。

いやいやいや、せめて母さまでしょ!

待って父さま!


いやあああああ


部屋からでて、廊下を面してすぐのトイレまで到着すると、洋式トイレと同じ形の便器がある。

おお、一緒だ。と思っていると、その横に立たされてワンピース型寝巻きの下に手を入れてきた。父さまが。


待って!やめてーーーーー!!!

イケメンが!イケメンが脱がしにきた!!


「じぶん!じぶん!!」


父さまの手をがっしりと握って自分ですると抗議する。



「ダメだよ、支えてないと落ちたらいけないし、後で体の浄化もしないといけないでしょう?」



死亡確定です。


泣きたい。



色々と大切なものを失いました。

このイケメンは父さまで、あの美女は母さまです。


そうです何も恥ずかしがることはないのです。親子なのです。






一番最初に何が何でも浄化の魔法を覚えようと心に決めました。






「さあ、今日はもう寝なさい。母さまと一緒でもいいよ。父さまはもう少し仕事をしてから寝るからね。おやすみ」


そう言って、イケメンが部屋に抱っこで連れて行ってくれる。






「おやしゅみなさい、とうさま」


トイレに行って騒いでいる間に着替えたらしい母さまに渡されながら、答えた。


うん、舌がまわらない。



「さあ、今日は母さまの隣においで」


母さまの隣に寝かせられて、ぎゅっと抱きしめられた。


柔らかくて気持ちいい。


「おやすみ、マリー」


「おやしゅみ、母さま」



暖かい体温を感じながらうとうとする。

子どもだからだろうか、熱で体力を消耗していたからだろうか、すごく眠い。



母さまに包まれながら、『あやめ』のお父さんとお母さんを思い出す。

2人とも中肉中背の純日本人って感じだった。

いい人いないの?とかそろそろ真面目に婚活したら?とか、プレッシャーがすごくて嫌だなあ、と思ってた。



私の最期は全然記憶に無いけれど、お父さんとお母さんより先に死んだのは確かだ。


ごめん。


先に逝ってしまってごめんね。



親不孝ものだ。




大事に育ててもらったのに。


何気ない日常の一コマや、一緒に旅行に行ったことなんかが走馬灯のように頭に浮かぶ。

最近は全く連絡を取り合うこともなくなっていたけれど、どうか弟が両親を慰めていてくれますように。




じんわりと浮かんだ涙が、そのまま母さまの服に吸われていった。







誤字報告ありがとうございます。

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